2015年3月28日の将棋電王戦FINAL第3局に出場するコンピュータソフト「やねうら王」の開発者である磯崎元洋さん(通称:やねうらお)が、その前日になって当日の実況用Twiterアカウントを開設しました。
しかし、すぐに実況の断念を表明。
その後に表明した、やねうら王の対局時間設定の変更も断念したことをツイートしています。
実況アカウントを開設、しかし・・・
やねうらおさんは、5年ほど寝かせておいたと思われるツイッターアカウントで、以下のようにツイート。
知ってるか?伊丹空港って、伊丹駅(福知山線)で降りたら駄目なんだぜ?
間違えて伊丹駅に着いちゃったからタクシーで移動中の私が偉そうに言うこっちゃないんだけど。
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
このアカウントのプロフィールには、
2015年電王戦、実況用アカウントです。中の人は、やねうら王の開発者やねうらおです
としており、このアカウントについて本人のブログでも
2015年電王戦、実況用twitterアカウント
であるとしています。
しかし、その後西尾明六段から以下の指摘が。
やねうらおさん明日の実況用アカウントを作ってるけど、一応持将棋の場合開発者の判断が必要なときがあるので外部とやり取りして大丈夫なのかな。第2回電王戦のときもそうだったけど。
— 西尾明 (@nishio1979) 2015, 3月 27
持将棋の開発者の判断とは電王戦の対局ルールの以下の部分です。
いずれかの対局者から持将棋が提案された場合、公式戦規定24点法を準用する。ここで、コンピュータ将棋に持将棋提案への諾否回答機能がない場合があり、その場合の対処は、コンピュータ操作者が諾否の解答をすることとする
つまり外部とのやりとりができるということは、持将棋の場合の助言を受けることが可能となり、つまりルールに抵触することになるということです。
やねうらおさんは、これを受けて以下のようにツイート。
明日は始まる前と休憩中にツイート出来ればツイートしよう、、ぐらいのつもりです。
持将棋って開発者判断要るんですね。なるほど。際どい局面ではスマホ触るのも控えないと。
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
しかし、最終的には以下のように断念するに至っています。
日本将棋連盟からドワンゴの担当者経由で、「明日、対局中のブログ等での実況はやめてくれないか」とのお願いがありました。
まあ、わからないではないので、承諾しました。対局前と対局終了後は問題ないそうです。
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
持ち時間の設定を変更しようとする
一方、やねうらおさんは、やねうら王の対局時間(持ち時間)の設定の変更もすると予告。
明日の思考エンジン設定等を立ち会いのもとに、確認してきました!
当然のことですが、思考エンジン設定は、一切変更不可です。
対局設定のうち、
対局時間設定 → 変更可。
ハッシュメモリ → 変更不可。
とのことでした。
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
その理由としては以下。
対局時間設定は、自由に変更していいそうなので、事前研究を外すため、5時間、秒読み60秒 から大幅に減らそうと思っています。(具体的なことは明日のお楽しみ)
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
これは、対戦相手である稲葉陽七段が、事前に貸し出されたやねうら王で本番と同じ「5時間、秒読み60秒」の持ち時間で練習対局(研究)していることを想定し、やねうら王をそれ以外の時間で稼働させることで練習対局とは異なる手を指させるという戦略。
当然、ソフトは持ち時間が長い方が多くの手を読むことになるので、いい手が指せる可能性が上がるのですが、その手を事前に研究されていては敵わないとみたのだと思います。
ですので、あえて持ち時間を減らして、ベストの手を指さなくても、研究を外すことを考えたのだと思います。
このあたりはやねうらおさんのブログでも言及されていますが、稲葉七段は「門を開けて飛車を捕獲する」方法を早々に見つけており、研究を外すことに勝機を見出したのだと思います。
しかし、以下のようにこれも断念。
持ち時間、大幅に減らすの、日本将棋連盟からドワンゴの担当者経由で「控えて欲しい」との連絡が。
ルール上はトラブル対応のためのバッファとして事前に減らしておくのは許されそうではあるのですが、そう簡単な話でもないようです。
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
(承前)
持ち時間設定を大幅に変更すると、指し手が変化して事前貸出での研究の成果が生きなくなる可能性があり、それだと「事前貸出ありで、それで人間側は勝てるのか?」という趣旨に反するとのこと。
その部分は(ドワンゴ)会長の意向でもあるそうなので、私としても承諾せざるを得ません。
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
そして、思考時間もランダムにすべきだったと述べています。
(承前)
こんなことなら電王戦版のやねうら王に関して、思考時間に関してもランダム性はいくらか入れるべきでした。
去年の電王戦ではトラブル対応のバッファとして持ち時間設定を減らしていたので(YSSも)、時間を減らすのはルール上許されているのかと思っていたのですが。
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
(承前)
電王トーナメントは単にトーナメントで強さを競うのに対して、電王戦は事前貸出に耐えないといけないので、開発の目的とする地点が違うんですよね。
先日のCODE VSでも予選と本選とで目的地点が違いすぎるのが、問題となりましたが、まあ、そういうことなんですね、
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
これに関してはやねうらおさんらしく以下の様なツイートも。
(承前)
明日の電王戦で、稲葉先生の研究発表会の如くなったとしても、それは私の判断ミスに起因するものです。どうか、稲葉先生を非難することのないようお願い申し上げます。
ただ、指し手のランダム性は大駒の半分ぐらいの代償を払わないと入れれないというのが私の実感です。
— やねうら王 (@yaneuraou) 2015, 3月 27
(「私の判断ミス」とは、思考時間のランダム性を入れなかったこと)
これについては、第1局のAperyの開発者、平岡拓也さんも以下のようにツイートしています。
思考時間に乱数入れるのは、自分も提出してすぐに、すべきだったと反省した気がする。
— 平岡 拓也 (@HiraokaTakuya) 2015, 3月 27
今回「FINAL」となっている電王戦が、今後も継続するとすれば、思考時間のランダム性はトレンドになる可能性もあります。
先崎学九段の電王戦FINAL観戦記「来年もこの形式でやろう」
なお前述のとおり、やねうらおさんは当日のTwitter実況は断念しており、これら以外の言いたいことは後日ブログなどでまとめるとしています。
将棋電王戦FINAL第3局は、3月28日午前9時半からニコニコ生放送で中継されます。