2015年11月21日~23日に行われた第3回将棋電王トーナメントで優勝したコンピュータ将棋ソフト「Ponanza」の開発チームが、コンピュータ囲碁ソフト開発に着手するようです。
同大会の表彰式で、開発者の一人、山本一成さんから発言がありました。
Ponanzaは、統一ハードで行われる将棋電王トーナメントにおいて第1回、第3回で優勝。ハード制限のない世界コンピュータ将棋選手権でも、今年の第25回大会で初優勝を果たしています。
囲碁の世界もぶっ倒す
23日の第3回将棋電王トーナメントの表彰式で、優勝についてのコメントを求められた山本さんは、以下のように発言されました。
山本さん「やっと、Ponanzaに再び『電王』を名乗らせることができてすっごい嬉しいです。あと優勝したら言おうと思っていたんですけど、囲碁のプログラムも作って、囲碁の世界もぶっ倒そうと思っているんで。まあ両方ぶっ倒すつもりでいます。皆さんよろしくお願いします」
もう一人の開発者、下山晃さんからは、この囲碁プログラム開発に関する話はありませんでした。ただ、山本さんの発言を否定はしませんでした。
ただし、立会人の佐藤秀司七段が表彰式最後の挨拶でPonanzaチームについて「囲碁のほうも開発を進めているということで」と発言された時、山本さんは「まだ(プログラムを)一行も書いてないんですけど」と返していましたので、まだこれから開発、ということのようです。
なお「(全員)ぶっ倒す」は、今大会期間中などにも山本さんがよく使っていた言葉です。
コンピュータ囲碁の実力とは
コンピュータ将棋ソフトYSSの開発者である山下宏さんの2014年6月の資料によると、コンピュータ囲碁の実力は以下のようです。
アマチュアの県代表レベル
プロとは4子でいい勝負
将棋だと飛香落ち程度に相当
将棋に比べて10年遅れている感じ
詳しくは、山下さんのYSSと彩のページの「コンピュータ囲碁の仕組み 将棋との違い」を参照。パワーポイントファイルです。山下さんはコンピュータ囲碁ソフト「彩」も開発されています。
両方ぶっ倒す
前述の山本さんの言葉によれば、「両方ぶっ倒す」とのことなので、囲碁ソフトと並行して将棋ソフト開発も続けるものと思われます。
表彰式での発言ということで、すべて冗談の可能性もあるかと思いましたが、その後山本さん、共同開発者の下山さんともに発言を否定されなかったことから、冗談ではなさそうです。
あと、下山さんが囲碁ソフト開発に参加するのかは不明です。
何か情報がわかりましたら、またお伝えしてまいります。当サイトは将棋サイトなので、どこまで囲碁の話題をお伝えすればいいか、はかりかねてはいますが。
コメント
山本一成さんの言い回しには。僭越ながら、個人的には反対です。実際にPonanzaで。郷田王将ないし、山崎隆之八段に、2連勝してから係助詞の「も」は、付与するべきだと私は考えます。
コンピュータ将棋から囲碁に転向される開発者の方は多いですが、山本さんにはコンピュータ囲碁開発で得た知見を将棋にも生かすという展開を期待したいですね。囲碁で用いられているモンテカルロ法の将棋への応用は今のところ上手くいっていないようですが、将棋でもブレークスルーになるのではないかと期待された手法ですし、ponanzaを次の高みへと導くうえで囲碁参戦がプラスになるのではとワクワクしています。
長さん様:
コメントありがとうございます。
おそらく「も」は、「コンピュータ将棋ソフト」にかかっているのではないかと思います。または、これまでの電王戦での戦いも含めてかもしれませんが。でも、そう考えると仮に2連勝したら、何かまた別のことをおっしゃるかもしれませんね。
opechuman様:
コメントありがとうございます。
私は専門的なことはわかりませんが、読みと大局観(評価?)の重要性からいえば、将棋の方が読みが重視され、囲碁の方は大局観(評価?)が重視されるみたいな話があったと思います。また囲碁の方が複雑らしいということからして、これまでの将棋での手法とは別の手法も必要になりそうで、たしかにそうなると将棋にフィードバックされた時にどうなるか楽しみではありますね。今大会でも決勝では「お手軽に強くなる」ことを掲げたnozomiに1敗し、もう1局も逆転だったことを考えると、まだまだ伸びる余地があるということは言えそうです。
皆様コメントありがとうございます。
コンピューター将棋開発は、大会初参加して3年を超えるあたりから、モチベーションの維持が非常に難しくなるらしく、YSSや激指のように商品として成功した事が無いと、10年も続くのは珍しい。
囲碁をやってみるのは、マンネリから情熱が薄れるのを防ぐための作戦のようです。
コメントありがとうございます。
へー、それは知りませんでした。
Bonanzaの登場から10年ぐらい経過していますからね。飽きが来るというか、このあたりでもう少し劇的な変化がないと確かに年2回ぐらいしか実力を披露する場がないですし、トップにいますし、マンネリなのかもしれません。技巧の手法は革新というより細かい工夫の積み重ねのようですし。コメントありがとうございます。