2015年8月23日開催の「第1回女子将棋YAMADAチャレンジ杯」本戦トーナメント、決勝は▲竹俣紅女流1級vs△渡部愛女流初段の顔合わせになりました。
横歩取りとなったこの対局を制したのはLPSA所属の渡部女流。
棋戦初優勝を飾りました。
なお棋譜は、日本将棋連盟モバイルで配信されています。
YAMADAチャレンジ杯
YAMADAチャレンジ杯は、日本将棋連盟が主催し、家電量販店のヤマダ電機が特別協賛する棋戦。
特徴は出場条件で、女流初段以下、かつ新しく女流棋士になった順から15名、および女性アマ棋士1名というフレッシュな棋戦です。
女流新棋戦 「第1回女子将棋YAMADAチャレンジ杯」 開催のお知らせ(日本将棋連盟)
予選で8名に絞られ、本戦トーナメントはこの日1日で決勝まで実施されました。
トーナメントの詳しい結果は以下参照。
決勝は横歩取りに
女流棋士は振り飛車党が多い中、決勝に残った二人は居飛車党。
戦型は横歩取りに。
振り駒で先手となった竹俣女流がまず仕掛ける。
後手の飛車に歩を取らせて端に呼んでおいて▲8二角。
この瞬間に後手も動く。桂馬を跳ねて交換し、金の頭を叩く△3七歩。
この歩を打つ時、渡部女流の手は震え、盤上の駒が大きく乱れました。決勝を含む本戦の持ち時間は10分、切れたら秒読み30秒という早指しの棋戦。
両者声をあげていたようで、棋譜コメントによると
歩をうまく打てず「すみません」と言いながら△3七歩と打った(54手目、渡部女流)
「あ、あーっ」と声を上げながら飛車を取った(61手目、竹俣女流)
と聞こえたようです。
的確な解説
本局の解説で、新婚の三浦弘行九段によれば、対局者の二人の印象は「あーそうですね、まあ、まず可愛いし。それも本当ですし。まあ、あとね、将棋も強い。本当に将棋強くなられました」、聞き手の本田小百合女流三段は「最近の若手の女流棋士は可愛らしいというか美人の方が増えてますからね。女流プロになるのに審査があるのかと思うぐらい。そんなのないですけどね。また実力もつけてますから」とのこと。
両者納得の解説。
後手は「苦し紛れに打った」という△8四角で金取りを守りつつ、敵玉を睨む。これが最後に効いてきました。
後手は天王山に玉を逃げ出し、自ら敵玉の頭を攻める形に。
竹俣女流も最後まで攻めをつなごうとしましたが、切らされ、94手目の△5七金で投了。
以下即詰みです。
三浦九段によれば、途中までお互いにチャンスがあって難しかったと。しかも、中盤は三浦九段と同じ読み筋で進行していた局面もあり、ハイレベルな戦いだったようです。
初代王者は渡部愛女流
本棋戦の初代王者となり、また本人にとっては棋戦初優勝となった渡部愛女流は「5五に玉を逃げ出せてわからなくなった」と振り返りました。勝ちを意識したのは投了のわずか2手目前の局面だったとのことです。
「渡部愛」というお名前、覚えておきましょう。二重の罠があって、ひとつは苗字を「わたべ」と読んでしまうこと。もうひとつは「愛」を「あい」と読んでしまうこと。正しくは「わたなべ まな」と読みます。この日の読み上げ係(記録係?)も「わたなべ あい」と読んでしまう場面がありました。
(申し訳ありません。記事を書いているうちに管理人も混乱してこのへんの説明が当初間違っていました。記事を投稿して3秒で気づき修正しました。お詫びします。コメント欄に経緯を説明し、お詫び文を掲載しています)
優勝する気で来た
一方、準優勝となった竹俣女流は終局後に「ちょっと・・・優勝する気で来たので・・・すごく悔しいです」と本当に悔しそうな表情。
しかしこの棋戦でも決勝までたどり着いており、先日昇級もしましたし、今期は好調が続いていることがわかります。
なにかきっかけを掴んだのかな、と思いました。
表彰式
朝からずっと緊張していたという渡部女流は、表彰式で「なんとか自分の将棋を指そうということだけを考えた。それが偶然いい結果になって素直に嬉しく思います。主催いただいた日本将棋連盟様、特別協賛いただいたヤマダ電機様、ご後援いただいた各社様、本当にありがとうございました」と述べました。いい挨拶。たぶん「主催の日本将棋連盟」は、普通は入らないと思いますが、渡部女流がLPSA所属ですので、入れたのだと思います。しっかりしております。
itumonさんの解説にはいつも納得させられます。
渡部さん強い!あと可愛い
— itumon (@itumon) 2015, 8月 23
LPSA代表理事の中倉宏美女流二段もツイート。
第1回女子将棋YAMADAチャレンジ杯、渡部愛初段優勝!!3局とも保護者のように、ドキドキしながら観戦していました。愛ちゃん、本当におめでとう。与えられたチャンスでしっかり結果を出して、素晴らしいです。 pic.twitter.com/Ccn5Wa7yYU
— 中倉宏美 (@HIromiPDG) 2015, 8月 23
渡部女流はまだ22歳。「保護者のように」という気持ちわかります。
渡部女流、おめでとうございました。
今回が初の開催となったYAMADAチャレンジ杯、なかなか見ることができない若手女優棋士の対局姿が見られて、しかも現地からニコニコ生放送で解説も行われ(ニコ生のコメントも解説者には見えていたようです)とても良かったです。
決勝は相居飛車で、ほかは振り飛車も多くて(放送された3局は、相振り飛車、対抗型、相居飛車)どんな戦型を指される方も楽しめたのではないかと思います。新規戦を創設してくれたヤマダ電機さん素晴らしい。
大判解説に登場した山口恵梨子女流初段によれば、ヤマダ電機には水筒も売っているそうです。何年かぶりかにヤマダ電機に行ってみようかなと。そんな気持ちにさせてくれる爽やかな棋戦でした。
コメント
【お詫び】
管理人です。
今回、渡部愛女流初段の記事を書くにあたり、何度も「わたなべまな」だ「わたなべまな」だと自分に言い聞かせていたにもかかわらず、書いていると頭のなかで混乱が生じて、さらに夜ご飯を食べる時間が迫っていたことから「早く書かないとなー」と焦り、結果、「わたべまな」と書いてリリースしてしまいました。投稿後すぐに間違いに気づきました。
すぐ修正したのですが、今度は「な」を足そうと思って「わたべな」と書いて再投稿してしまいました。
記事のURLも、watabeとなってしまっていますが、これはもう修正のしようがないので、このままでしておきます。早く次の渡部愛女流の記事を書いて挽回したいです。
全て言い訳です。次から気をつけます。申し訳ありませんでした。
どんまいです!
記事までしっかりわたべになっちゃってるのは痛恨ですね(;・∀・)
私なら一旦削除して新しい記事を書いてしまう所です><
わたなべまなさんの優勝おめでとうございます!
わたなべまなさんといえば、先日記録係でわたなべさんが記録を撮っていることが密かなざわつきを将棋クラスタで起こっていましたね。
LPSA所属のわたなべさんが記録係を取らせてもらえるってのは、
なかなかいい関係だと思えるし、いいことですね^^
コメントありがとうございます。
たまに、いや、よくあるんです。ただ、今回はあまりにひどくて本当に自分に失望というか、何回やっても角の利きを忘れるというか、そういう進歩のない、逆に退化する自分が情けなくなり、削除するとRSSとかfeedlyで読んでくれるひとに迷惑かかるなとか考えてまあ、こういう結果になったわけです。
え!記録係!それは知りませんでした。いま見ました。確かにこれは本当だ!すげー!仲良しいいこと!情報ありがとうございます。
たくさんわたなべさんと書いていただきありがとうございます。今日はもう間違えません。ただ、また寝て起きたらどうなっているかわからない自分が不安です。
コメントありがとうございます。
渡部女流初段の優勝、うれしいです。
所属の関係で、女流棋士資格の取得など人一倍苦労されたこともあったかと思いますが、そんなことを露ほども感じさせないほど爽やかに活躍なさっている印象があります。
北海道出身の同郷ということもあり、応援しています。
管理人様、記事ありがとうございます。
コメントありがとうございます。
所属ですね、ニコ生のコメントもそれに触れるものがあって、もしかしたら(対局前に)ご本人も見られたかなと思って少し心配になりました。が、見事に立派な結果を残しました。
北海道は思いつくだけで棋士が何人かいらっしゃって、これに渡部女流も加わり楽しみですね。まだお若いですし、この苦労がいつかご本人のためにもなるよう、祈っております。
コメントありがとうございます。