マイナビ出版さんのツイッターアカウントが興味深いことをツイートしてました。
編集部で意見が割れた問題。詰将棋で、最後図のような局面になったとき普通どちらを正解にするんでしょうか?あなたは▲2二龍派?▲2二歩成派? pic.twitter.com/7UNjVBbq4r
— マイナビ出版・将棋担当 (@mynavi_shogi) 2017年2月14日
詰将棋のルールでは、最後の1手に複数の手順があっても基本的には余詰とはみなされない(詰将棋として成立する)です。最終手の1手前の玉方の応手も複数あってもよかったと思います。
余談ですが、最終手まで厳密に一通りの手順しか無い詰将棋の本もあります。それは詰将棋作家の方の考え方なのかもしれません。初心者向けとかは一通りしかない方がわかりやすいですし。
上のツイートへの返信を見てみて下さい。いろいろ意見があることがわかります。意見が割れています。ツイッターをやってない方は、上記のツイートの時刻のところをクリックしてみてください。返信を閲覧することができます。
後述しますが、私はみんな圧倒的に、絶対に、あれ派だと思ったのですが。価値観を揺さぶられます。
マイナビ出版さんのツイッターでは、これ関するアンケートもしていますので、もしよろしれければ協力してみてください(2017年2月16日10時24分頃まで。この時刻を過ぎたら結果が表示される(されてる)と思います)。
反響が大きいのでアンケートしたいと思います。前のツイートの局面、あなたならどう詰ましますか?
— マイナビ出版・将棋担当 (@mynavi_shogi) 2017年2月15日
以下、私の考察を書きますが、あんまり先入観がない状態でアンケートに応えられたほうがよいかもしれません。
考察
アンケートの結果が出る前に、自分の意見を記しておきたくて書いておきます。結論から言うと私は▲2二歩成派です。理由は後で述べますが、安い駒で王手したいからです。また、あらかじめ書いておきますが、私は棋力の低いにわか将棋ファンです。
上記ツイートの返信の中に気になる意見がありました。強い駒で詰ますのが礼儀といった趣旨の意見です。これは私、知りませんでした。さすがにわかファン。マイナビ出版さんのツイートにあるように、どちらが「正解」かと言われると、そういう暗黙的な伝統も含めて▲2二龍なのかもしれません。
また、どっちのほうが美しい、かっこいいといった価値観や、裏返す行為が手間と感じるか良しとするかという価値観も存在するようです。
しかし、「どう詰ますか?」と聞かれると、私は完全な▲2二歩成派。
まったく共感は得られないかもしれないんですが、以下に理由を書きます。
まず、私は詰将棋をやる目的として2つ定義しています。一つは「詰み(つみ)のパターンを覚える」ということ、もう一つは「読み(よみ)のトレーニング」。
前者の「詰みのパターンを覚える」というのは、実戦でこういう配置が出てきたら詰みますよ、という形とか手順を、まあ覚えるというより「経験しておく」と言ったほうがいいかもしれません。
この「詰みのパターンを覚える」という行為は「読みのトレーニング」より、棋力が低い人(または短手数の詰将棋をする人)が目的とするものだと思います。実戦での詰みのパターンが想定されているのです。言い換えれば、より実戦で役立つ手順がいいのです。
そこで以下の問題。
詰将棋では赤い丸の部分だけが切り取られていますが、実際は9×9マスの盤があるわけです。
仮に、実戦で、赤丸の外に、何らかの駒が配置されていたとしたら?
6六に密かに伏兵が潜んでいる。
にわか将棋ファンかつ棋力もそこそこ低い私ですから、終盤の残り時間の無い中においては角の利きなんて3回に1回は見落とすわけです。
▲2二龍で詰ましたつもりになっていて、△同角とされて唖然とする。詰ませたつもりが角の利きを見落としていた。そんな経験がある人もいるのでは。龍を失って、詰みもない。
それよりも、▲2二歩成で詰ましたつもりになっていて、△同角とされた場合でも、まだ龍が残っているほうが希望がある。ははは、失ったのはただの歩だろ。そう思える可能性がある。
そんな事情があり、私は安い駒で王手する▲2二歩成を選ぶわけです。
つまり結論としては、実戦を想定して、取られてもダメージが少ない駒で王手する。はい。共感は得られないと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメント
成り忘れのリスクを考慮して▲2二龍、という主旨のコメントがあり、なるほどと思わされました。
玉方2八飛車などを見落としていた場合は、龍でいったほうが救われる、ということもありますね。
個人的には2二歩成ですが、どちらでも詰みだったとしても、指し将棋と大きな違和感を選んだほうよいという意識があり、歩成のほうが戦力が増すのでと金を作るほうが自然なため、というロジックですね。
しかし、できるだけ小駒から使う、というロジックも指し将棋の理にかなうものであり、管理人さんの考えもうなづけるものです。
もし切れ負け将棋に慣れていたら、2二龍かもですね。龍を滑らせるだけなので、指し手がより一瞬で済みます。
>指し将棋と大きな違和感を選んだほうよいという意識があり
すいません、ただしくは、
指し将棋と大きな違和感が無い手を選んだほうよいという意識があり
でした。
考察についてなるほどなと思う一方で、本当の初心者(初めて将棋を指す人)であれば、2二歩ならずとしても「反則負け」ではないけど、2二龍成(つまり、龍を裏返しておいてしまう)をやると、「反則負け」になってしまうので、本当の初心者には歩成の方が実践的かもしれないとか、いや、まあ、どうでもいいですけど。
皆様コメントありがとうございます。
勉強になったというか、いろいろ考え方が知れて面白いです。▲2二龍だと龍が窮屈な感じがするという意見もありました。
ほとんど無意識の行動ですが、あらためて考えてみると深いテーマでした。結果が出ていますが、▲2二歩成派が60%でした。
私はせっかくだから駒を成らさせてあげたいので22歩成です。だから23の駒がすでにと金なら22龍にするかもしれません。駒のポテンシャルを使ってあげたい。
あと、多分それまでの解図手順から作意をくんでみたくなります。例えば、問題の図までに龍が大活躍してきたなら龍で詰ましたいです。
あと、私は詰将棋を解く時と実戦では考え方をあえて変えてます。マイナビ編集部さんも、詰将棋で、と断っていますね。私は実戦なら、ちゃんと寄ることを読んだ上で22歩成ですね。終盤では龍が核で取られようが拠点の歩が取られようがどちらでもかなり痛いので。でも詰将棋では詰将棋ならではの楽しみ方をしようと思ってます。
面白い考察ですよね。
歩がそのままの方が綺麗だから2二龍
と金は見た目がいまいち
龍で止めを刺したいから龍派
一兵卒に獲られたら相手の将も気の毒だろう
名のある武将にとられたほうが救いがある
最終二手で、王手している攻め方の駒を取る手が複数あるときがあります。
△同玉か△同飛車か△同銀か、いずれでも次の一手で詰むという局面です。
詰将棋のマナー集で、そういうときの指針を読んだ覚えが無いのですが、
個人的には、玉を筆頭に選択肢の中で最も価値の高い駒を動かす事にしています。
このお題の場合は歩成にしています。
竜は成れませんが、歩は成れます。評価値として「歩+竜」と「成歩+竜」では後者が高くなるでしょうから、歩が成ります。
△2一玉に▲2二角成でも▲2二銀成でも詰み上がるという場合には、もちろん角成にしています。
この「評価値を高くする」という価値基準の背景には、角換わり等での「▲3三角不成」が許せないからです。
3分切れ負けのブリッツでも無い限り、やはりマナー違反の手でしょう。
なので、歩が成れる手を選ばずに竜だけ動かすのも、やはりマナー違反だと思えるのです。
評価値が特に変わらないのであれば、最終手では竜を筆頭に価値の高い駒を動かします。
お題の配置が「歩」でなくて「と金」だったとしたら▲2二竜を選びます。
最終二手にしても最終手にしても「価値の高い駒を動かす」というのは単に個人の好みです。
将棋の精神から言えば、龍で行くのが正しい。
将棋は相手玉を取るのじゃなく詰めるゲーム。
歩成の詰みは、攻城戦で言えば、敵将に降伏を
勧めに行くのに、足軽を行かせるようなもの。