2015年1月26日にニコニコ生放送で中継された第8回 朝日杯将棋オープン戦 本戦第3ブロックで、解説を担当された田村康介七段が、2014年レーティング上昇幅トップだったことについて、少しだけ話してくれた。
2014年レーティング上昇幅トップは田村康介七段
棋士の現時点の棋力と、その段位は比例しないため、別の棋力数値化方法として非公式のレーティングというものが存在する。レーティングはチェスの世界では一般的なやり方。将棋のプロ棋士については、その棋力を1000~2000程度の数値で表現されている。強い相手に勝てば数値が大幅に上昇する、などといった仕組みである。
これはこれで問題点もあるが、例えば羽生善治名人は1956、熊坂学五段は1472などといった数値で棋力を表現されると大変わかり易い。また、この数字から、仮に両者が対戦した時の勝率(敗率)も算出することができる(ただし相性などを度外視した参考値的なものであるが)。
このレーティング、対局が行われる度に変動しているのであるが、田村康介七段は2014年の頭から末までに102も上昇させた。上昇幅トップである。
ちなみに、同年の上昇幅2位は藤森哲也四段で上昇幅は77。3位が横山泰明六段で同74。田村七段の上昇ぶりがいかにすごいかがわかる。
王位戦・挑戦者決定リーグ入り
田村康介七段は、第56期王位戦挑戦者決定リーグに入った。羽生善治王位への挑戦をかけたリーグ戦は、2つのリーグ(紅組・白組)あわせてわずか12人しか入れないという難関である。
このニコニコ生放送中にも、視聴者からのメールで王位リーグでの意気込みを問う質問が寄せられたが、田村七段は特に気負うような感じではなく「適当で」などと答えていた。
9連勝中
そして、この時点で田村七段は9連勝中。直近13勝1敗というまさに絶好調。
この連勝のなかには、渡辺明二冠を破った対局(第56期王位戦・予選3回戦、2014年11月19日)も含まれている。
レーティング上昇の理由は・・・
この田村七段の好調ぶり、そしてレーティング上昇幅トップを受けて、ニコ生の視聴者からは田村七段に「何か(勉強のやり方や生活の)変化があったのか?」といった質問が寄せられた。
田村七段はその質問に対し、「(変化は)全く無いです」「生活は変わっていない」と回答。
そして「たまたまなんですけどね」などと強調した。
たまたま、でレーティング上昇幅トップになる・・・?そんなことがありえるのでしょうか。
渡辺明二冠に勝って、丁寧に指そうと思って
田村康介七段といえば、棋界一ともいわれる早指しで知られる。持ち時間が長い将棋でもとにかく早く指す。
ただ、そのせいで敗戦することもあったと思う。
「あの早指しさえなければ、もっと活躍できるのに」
と誰かが言っていた。誰が言っていたかは忘れてしまいました。申し訳ありません。
偶然の勝利
レーティングの上昇について「たまたま」だとした田村七段であるが、少しだけ心境の変化を語ってくれた。
前述の渡辺明二冠からの勝利。9連勝(継続中)のうちの2勝目だ。
この勝利について田村七段は
「渡辺さんに偶然勝って、それから丁寧に指そうと思って」
と話した。なるほど、渡辺明二冠との対局でなにか掴んだわけですね。
それで、「丁寧に指す」ことにしたと。これが現在の絶好調・レーティング上昇を支えているのではないでしょうか。
ちなみに、田村七段に敗れた渡辺明二冠は、別に不調というわけではなく、直近の成績は12勝1敗。
この1敗が田村七段に喫した1敗である。
気負ってない感じが満点
田村康介七段は現在の好調について
「勝つときもあれば、10連敗くらい(するときもある)しますよ」
と話していた。
この気負ってない感じが田村七段の良さですね。
しかも、早見えなので解説は頼もしいです。
密かに王位挑戦を期待しております。