元陸上選手で、現在はコメンテーターとしても活動されている為末大さんが、2015年5月5日に「素人さんとマニアと評論家」と題する長文連続ツイートをしています。
これを見て私(管理人)もドキッとしました。
素人さんとマニアと評論家
為末さんのツイートが長いので、時間がない方のために要約すると下記のようなことです。下に全文も掲載するので、そちらを読まれる方は読み飛ばしてください。
・マニアの世界では、素人がわかったようなことを言うと怒られる。先日ボクシングを観ていて、感想を口にしたら怒られた。
・しかし、スポーツの発展は素人が支えている。マニアだけでは市場規模が小さすぎる。
・囲碁の世界は、素人が言うことを受け入れてくれる先生がいる。素人からマニアまでがグラデーションになっている。
・多くのマニアの世界にはこれがない。マニアに叩かれた素人はその世界を去る。
・その世界の人口の拡大には、マニアマネジメントが大事だと思っている。マニアがにわかファンを追い出さないような空気を作る。
・人口減高齢化の現代、各ジャンルの素人さん獲得は死活問題。その点においてマニアの扱いが鍵になる。
全文
以下、為末大さんのツイートの全文です。上記の要約を飛ばした方、要約に満足されなかった方は読んでみてください。
久しぶりの長文【素人さんとマニアと評論家】について
— 為末 大 (@daijapan) 2015, 5月 4
マニアの世界において素人がわかったような事を口にするのは非常に問題がある行為で、幾度となく怒られた。そういう評論はよくよくその世界を知ってから、またはその世界に一定数の時間を費やしてからいうもので、知りもしない素人がわかった事を言うのではないと大体言われる。
— 為末 大 (@daijapan) 2015, 5月 4
つい先日のボクシングを見ていてうっかり私は感想を口にしてしまい、また怒られる羽目になった。なので素人さん同士で会話をしようと、周りの素人を探すと案外とにた程度の知識の人がいて、そういう人たちとの会話はとても弾んで楽しかった。
— 為末 大 (@daijapan) 2015, 5月 4
しかしながらwowowの加入者数とテニスの試合の推移を見てみても、ある一定以上の規模のスポーツの発展は基本的に素人が支えていると思う。マニアは一部の熱狂的な人々の事で、それでは市場規模が小さすぎる。一部の人が熱狂する世界で潤っているのは超金持ちの道楽の世界以外では見た事がない。
— 為末 大 (@daijapan) 2015, 5月 4
今囲碁の世界にはまりつつあるのだけれど、ああだこうだ素人が言うのを優しく教えてくれる先生がいて、素人からマニアまでがグラデーションのようになっているイメージがある。多くのマニアの世界はこれがなく、いきなり重鎮のマニアに叩かれ素人は辟易して去る。
— 為末 大 (@daijapan) 2015, 5月 4
昔陸上の拡大を考えていた時に、一番大事なのはマニアマネジメントだと思った。彼らがにわかファンを追い出してしまわないように、上手な空気をつくる。マニアの一部は昔はよかったというのが基本的な話し方だから、それを汲み取りながら一方でミーハーな世界との融合を上手にはかる。
— 為末 大 (@daijapan) 2015, 5月 4
陸上もにわか評論家が増えたけれど、それは人気が拡大しつつあるという事だろうと思う。マニアだけの濃い世界もなかなかに味わい深いけれど、人口減高齢化の現代において各ジャンル素人さん獲得は死活問題だろう。その点においてマニアをどう扱うかが鍵になるのではないか。
— 為末 大 (@daijapan) 2015, 5月 4
なぜ叩かれるか
私(管理人)はかつてスポーツ、とりわけサッカーの「マニア」だったのですが、確かに「素人が叩かれる」ような空気が・・・。いや、叩いているつもりはないんですね。でも、例えば素人の方は時に、断片的な情報だけで選手やチーム、戦術を良い悪いと言ったりするので、それを咎めるというか、そういうことはあったかも。
私自身は怒ったりはしませんが、気持ちはわかるというか。
サッカーだと4年に1度のワールドカップという、素人が急激に増える時期があり、たぶん「叩く」「怒る」に至る人は上記のようなことが一時期に頻繁にあったのではないかと推測します。
叩かれた?
私は今年1月にこの将棋専門サイトを始め、あわせてNEWS BY 管理人という記事を書き始めましたが、批判的な意見もいただくかなと思っていたのですが、これまでは概ね温かいコメントをいただいて、ホッとしています。
将棋の世界も、囲碁と同じく素人を受け入れてくれる雰囲気があるのかもしれません。
ただ将棋の中でも、「コンピュータ将棋」に関してはいくつか厳しいご意見をいただいたこともあり、神経質になりますね。これはこれで、「将棋」とはまた違った「マニアの世界」なのかも。個人的には、上記のサッカーの体験もあって、厳しい意見も貴重だと思っています。一方、優しいご意見も多くいただいています。
囲碁と将棋の指導対局
話を戻します。
為末大さんの「素人さんとマニアと評論家」の「囲碁の世界には素人に優しく教えてくれる先生がいる」に、大平武洋五段が将棋と囲碁の「指導対局」という観点でツイート。
プロの指導対局の感じは、将棋と囲碁でかなり違います。ざっくり言うと将棋の方が厳しい感じです。囲碁は1番良かった手を褒められ、将棋は1番悪い手を修正する様に言われる。全体的な印象ですが。 https://t.co/Y6amUB6dle
— 大平武洋 (@oohira243) 2015, 5月 5
なるほど。ちなみに私は自称「褒められて伸びるタイプ」です。続けて以下。
自分は囲碁の指導対局に感銘を受け、取り入れる様にしましたが、角落ちや飛車落ちくらいの方だと、意外と悪い部分を教えて欲しいという方が多い。性格もあるかもしれないですが、棋力が1番大きいのかも。
— 大平武洋 (@oohira243) 2015, 5月 5
将棋は「逆転のゲーム」といわれ、その逆転はミスから発生するから?ですかね。囲碁は、将棋より抽象的というか大局的というか、そんな印象もあります。
また、為末大さんの他のツイートもリツイートした上で、以下の様な見解も述べています。
怒り新党で、有吉さんとマツコさんが、ベストアルバムしか持っていない人もファンと気軽に言える感じにして欲しいと言っていたのを思い出しました。
— 大平武洋 (@oohira243) 2015, 5月 5
わかりやすい。私も、カラオケ行ったときにベストアルバムの曲しか歌えないということがありますが、それに近い話なのかも。「マニア」と「素人」の関係、いろんな世界で存在することがわかります。
ところで、大平五段は、将棋と別の世界や社会(アイドルとかメディアとか)との関わりのことをツイートされることが多く、注目しています。
参考にします
為末大さんのツイートに対して、別の方々からいろいろな返答が寄せられています。サッカー・Jリーグの事例とか、プロレスの事例とかの紹介も。
当サイトも私自身がまだ素人ということもあり、将棋初心者、観る将棋ファンの方にもわかりやすいサイトを、ということで運営していますが、あらためて今回のことを参考にして運営していこうと思った、という話でした。
また、長年の将棋ファン(マニア)の方も初心者(素人)の方にも、参考になる話かな、ということでご紹介させていただきました。
以上、ありがとうございました。
コメント
「知ったかぶりで一席ぶつ」ような素人は徹底的に叩かれるべき
叩かれようが追い出しに遭おうがやめない「しつこいファン」は
そういう「健全な環境」じゃないと育たないよwww
コメントありがとうございます。
なるほど、これはこれで愛情のある意見ですね。
そのような素人は叩かれてこそ熱心なファンになるということでしょうか。
為末さんとしては、「マニアだけで成立するのは超金持ちの道楽の世界」しかないと見ているので
為末さんの論点としては素人をいかに繋ぎ止めるか、ということなのだと思います。
もちろん「マニアだけで成立するのは・・・」の前提が正しいかは議論があると思います。
コメントありがとうございます。
>「知ったかぶりで一席ぶつ」ような素人
というのは、聞き手側の主観、さらには言っている側の立場にもよりますね。
言っている素人が別の分野で強い立場にあり(例えば上司など)、
間違った知ったかぶりでも聞き手が訂正できないケースもあります。
そういうのは排除されてもおかしくはない。
しかしそういう状況ではなく、客観的に意見を述べている素人に対し、
マニアが狭い見識で叩くのは、むしろマニア側に問題があると思います。
ただ、将棋のように最終的に「勝ち負け」という
ある種の「正解」があるジャンルならまだしも、
芸術や娯楽の中には、感覚的に「いいか悪いか」で判断するものもあり、
そういうマニアが、素人が「これが好き」と言っているのを頭ごなしに否定するのは、
むしろそのマニアも「知ったかぶりで一席ぶつ」に等しい行為ですね。
そういうのまで「健全な環境」と言っているうちは、
そのジャンルは一部のマニアの狭い世界のものにとどまり、
それ以上発展することはないでしょうね。
コメントありがとうございます。
たぶん、2つあるのだと思います。
一つは、為末さんの言われるように、多くの素人に広く普及させることが、その業界の発展につながると。
もう一つは、多くの素人はいらなくて、一握りの強烈なマニア(しつこいファンと表現されていますが)がいればいい、それが業界の発展につながると。
私は、将棋界に関して言えば前者の立場を支持しますが、もしかしたら後者が正解かもしれません。後者が正解である業界もあると思います。為末さんが「超金持ちの道楽の世界」と言ってる世界。例えば・・・よくわかりませんが、超高価な美術品の収集とか、宇宙旅行とかでしょうか。
私は将棋に関してはまだ素人(将棋歴1年半ぐらいです)ですので、知ったかぶりを書いてしまっていることもありますが、それを叩きたいマニアも存在するのは事実だと思いますし、業界のリーダーは、それをマネジメントしていく必要があるということだと感じています。私は叩かれたくないです。
これですね。たぶん、為末さんは、そういうマニアをマネジメントしきれていない状態が問題だと言いたいのだと思います。
でもどうやってマネジメントするんですかね。
マニアでよくあるのが「え?そんなことも知らないの?今さら何言ってんの?」と素人に言って優越感に浸る行為。言われたら嫌になる人もいるでしょうね。私は嫌じゃないですけど、ちょっと時間の無駄に思っちゃう(そういう会話のセレモニーが)こともあります。
話がそれました。コメントありがとうございます。