2015年6月10日発売の週刊少年マガジン6月24日号(28号)の452~456ページには、「第94回新人漫画賞」の入選、佳作、特別奨励賞、奨励賞、あわせて31作品の受賞作が発表されています。
その中で、奨励賞および鈴木央賞(鈴木央さんは「七つの大罪」などが代表作の漫画家)を受賞したのが将棋をテーマにした作品。
しかしこの書評が・・・。
将棋というマイナー競技を
私(管理人)がこれを知ったのは、高橋道雄九段のブログ記事がきっかけ。
高橋九段は、将棋を題材にした作品の受賞を「嬉しい」としながらも、編集者が書いたと思われるその書評について、以下のように苦言を呈しています。
書評が、ちょっとどころか、かなりなー。
(怒)
「将棋というマイナー競技を格好良く、そして分かりやすく描いた良作」だって?
なんで、マイナー競技って決めつけるんだー!!
後に続く文面も、うがった見方をすれば、このような描き方をしないと、将棋は格好良くなく、実に分かり難い、とかとも受け取れる。
そして、担当編集者に「かなりの偏見」がある、将棋がキライなのではないか、一個人が書いても雑誌の総意とみなされるとして、「がっかりだよ、講談社さん」と書いています。連載中の作品には気に入っているものもあったようですが、「読者を失いましたよ。マガジンさん」と、今後の不買を表明しています。
詰みとバツ
この奨励賞受賞作品のタイトルは「詰みとバツ」。
むむむ?何か聞いたことがあると思ったら、戸辺誠六段監修による松本渚さんの作品は「盤上の詰みと罰」です。
「詰みとバツ」は26歳の深谷慶さんという新人漫画家の作品。ググったところ深谷慶さんの別の作品が公開されていましたのでご紹介します(こちらです。2013年12月期MGP佳作作品の野球漫画「DATA BASE」)。
「詰みとバツ」の作品紹介では、主人公と思われる鋭い目つきの男性が右手に炎(オーラ?)を纏いながら将棋を指していると思われるワンシーンが描かれています。
そして、その書評には確かに以下のように書かれています。
画力はまだまだ足りないが、将棋というマイナー競技を格好よく、そして分かりやすく描いた良作。月に照らされる棋士2人のシルエット等、演出にもセンスが光る。
高橋九段が言うように、これはおそらく編集部の方が書かれたもの。指摘は「マイナー競技」を「格好よく、そして分かりやすく描いた」という箇所に対してです。
なお、鈴木央先生の書評は別にあり、そこには
絵はまだ荒削りですが、見せ場もよくできていました。
などと書かれています。
マイナー競技なのか
2014年のレジャー白書によれば、将棋の競技人口は670万人。日本人の20人に1人以上です。以前に比べると減っているらしいですが、最近ではアプリ等で気軽に指せる環境も整ったことにより、思ったより多い印象。たぶん成人男性に限れば10人に1人ぐらいにはなると思います。
ちなみに囲碁は280万人。
一方、スポーツの競技人口のデータ(2012年12月のマイナビニュースを参考)は以下となっています。
1位 ウォーキング 2000万人以上
2位 ボウリング 1900万人
3位 水泳 1300万人
4位 ゴルフ 1200万人
5位 バドミントン 930万人
6位 卓球 900万人
7位 サッカー 750万人
8位 野球 730万人
9位のデータが書かれていないのでわからないですが、10位はバレーボールで650万人、11位はバスケットボールで570万人です。
バレーやバスケより将棋の方が多い!!
なおこれらのデータは「年間で1回でも競技したことがある」人数です。
将棋はメジャーか
ただ、これをもって一概に将棋の方がバレーやバスケよりメジャーかと言われると、そうでもないと思います。これらのスポーツ競技は学生時代には誰もがやったことがあると思いますし、それにバレーは世界大会がゴールデンタイムにテレビ中継されます。将棋はそうではありません。
よく見ると、上位の競技は個人競技ばかり。やはり、団体競技は大人になってからはメンバーが集まらずやりにくいと思いますので、その分、競技人口としては少なく出てしまうのだと思います。
また本記事では競技人口で比較しましたが、他にも、年間の観客動員数(サッカーは約900万人)、協会の会員数(サッカーは約90万人)、ルールを知っているか否か、などで比較すると違った見方ができそうです。
結論としては・・・
話を戻しますと、結局「将棋はマイナー」かということですが、私(管理人)個人的には、人それぞれの主観によるところが大きいのかなと。
グダグダな結論で申し訳ないのですが、例えばクリケットというスポーツは日本では明らかに「マイナー」だと思います。クリケット愛好家の方すみません。日本での競技人口は1500人だそうです。が、世界的に見ればサッカーに次ぐ競技人口、観戦者数なんだそうです(インドで多いのが影響)。これは極端な例ですが、何を言わんとしているかというと、年齢や性別、居住地域、周りの友人関係などによってマイナーかどうかは違うので、やっぱり主観の問題かなと。
そして主観には偏見がつきものだと思います。(私も気をつけなければなりません)
マイナーの意味
もちろん、少年マガジンの編集者の方は「マイナー」という言葉で、将棋を貶す意図はなかったとは思います。よく考えると「マイナー」という言葉も捉えようによってずいぶん印象が違いますね。
いまさらですが、マイナーの言葉の意味としては、goo辞書では以下のように書かれています。
1 小さいこと。少ないこと。あまり重要でないこと。また、そのさま。「―チェンジ」⇔メジャー。
2 あまり知られていないさま。有名でないさま。「―なスポーツ」⇔メジャー。
(以下省略)
何十年もその世界一筋に生きてきた方にとっては、受け入れ難い言葉だったのだと思います。
特に上記にあるように「重要でない」という意味にとらえたとすれば、そのお気持ち、とてもわかります。
この担当者の方が本当に将棋に「かなりの偏見」があって、深谷さんの作品の評価(奨励賞は受賞の中では最も評価が低い賞)にまで影響しているとすれば、大手少年誌の編集者としてはいただけませんが、そんなことはないと思いますし・・・そんなことはないと願っています。
コメント
将棋が「メジャーな競技」だと思ったことなんか一度もないよwww
コメントありがとうございます。
そうですね。どういう捉え方によるかと思いますが、例えばボードゲームの世界ではプロが国内に150人以上存在するというのは、なかなか珍しいです。
ただ、確かに一般の方にとってはほとんど触れることのない世界かもしれませんね。コメントありがとうございます。
マイナーという言葉は「その存在が知られていない」という語感があります。
将棋は一度も指したことがなくとも、将棋駒を見て何に使うかわからない人はかなり少ないのでは。
将棋という存在はマイナーではないが、将棋を指す人はマイノリティというのが私なりの結論です。
コメントありがとうございます。
これがけっこう人によって捉え方が違うのが面白い・・・といってはなんですがトラブルの元かもしれませんね。
「知名度が低い」という意味合いも確かに含まれていそうです。私はどちらかと言えば記事に書いたように、競技人口や観客人数かなと思っていました。「マイナースポーツ」という言葉があります。「オリンピックでメダルを量産するためにマイナースポーツに目をつけて、国策でマイナースポーツの競技者を強化する」とか。そういうイメージでした。
あと野球好きな人ならメジャー、マイナーのというのも思い浮かべるかも。これは明らかに「格下」ということで、印象が悪いかもしれませんね。
少数派という意味では、確かにマイノリティですね。
コメントありがとうございます。
「メジャーではない」というのが「知名度が低い」って意味でも、充分におかしいかと。
文章を書いた編集者は『全く知らなかった(≒「将棋」という言葉すら聞いた事がなかった)』のかもしれませんが。
コメントありがとうございます。
そうですね。知名度というか、将棋のことは知っていても、将棋界や棋士のことは知らないのかもしれません。
いずれにせよこのような言葉一つで熱心な読者を傷つけてしまうのは残念ですね。