日本将棋連盟公式サイトの英語版のクオリティの改善方法について考える

日本将棋連盟の公式サイトがリニューアルされました。

部分的に好評だったり不評だったりするわけですが、それは今回は置いておきまして、一部で注目を集めている「英語版」のクオリティについて考えてみたいと思います。

まず「英語版」といっても、誰かが翻訳したものが掲載されているわけではなく、Googleの自動翻訳です。

将棋連盟公式サイト右上にあるプルダウンメニューの「言語を選択」から「英語」を選ぶとGoogleさんが自動翻訳して表示してくれます。

リニューアル前からあった

さて、自動翻訳プルダウンメニューで「英語」を選ぶと、「加藤一二三」が「Kato, one hundred twenty-three」になったり、「佐藤天彦」が「Sato Ten彦」だったり、九段が「Kudan」、八段が「8th Dan」、七段が「Seven-stage」と表現がバラついたりして、酷いクオリティだなと思うわけです。自動翻訳なのでしょうがない部分もあります。

ただ、この自動翻訳のプルダウンメニューはリニューアルの前からあったようです。今回のリニューアルによって目立つようになって「発見」されたわけですね。

この英語版のクオリティという「課題」についての解決方法を私なりに考えてみました。

手動翻訳だと?

まず、英語版を自動翻訳ではなく、日本将棋連盟の職員か外注業者、またはボランティアを募集して、彼らに翻訳してもらう、という解決方法が思い浮かびました。これを「手動翻訳」と呼ぶことにします。手動翻訳であれば、少なくとも「Kato, one hundred twenty-three」とはならないはずで、翻訳クオリティが現在より良くなることは明らかです。

しかし手動翻訳には問題点が。

棋士のデータベースのページや、将棋教室の紹介ページなど、頻繁に変更されないページは手動翻訳で良いのですが、例えば将棋のニュース、棋戦の経過や結果など、頻繁に更新されるページはその都度翻訳する必要があります。大変です。リニューアルに伴って「コラム」も始まりました。これも手動翻訳するのは大変そうです。英語ができるコラムニストを雇用する必要があるかもしれません。

それに、将来的に「日本将棋連盟の公式サイト」だけではなく、例えば「棋戦中継ブログ」やネット棋譜中継なんかも英語化しようと思ったら(すべきだと思うのですが)、膨大な手間がかかります。場合によっては英語も将棋もできる中継記者を雇用する必要があるかもしれません。

手動翻訳だと、日本語の記事を増やせば増やすほど翻訳コストがかかってしまいます。

別の解決方法

そこで、頻繁に更新されるニュースやコラム、将来的に中継ブログや棋譜中継にも応用できる、別の解決方法が必要だと思いました。

即効性のある解決方法ではありませんが、私は以下の2つを考えました。

自動翻訳に耐える日本語にする

日本語を書くうえで、外国人にとってわかりやすい文章とそうでない文章というのがあるように、自動翻訳さんが仕事をしやすい文章とそうでない文章というのがあると思います。これは将棋の世界に限りません。本当のグローバル企業だと、社内文書はすべて英語で、なんていうところもありますが、そこまでいかなくても「翻訳しやすい日本語で」という企業もあると思います。

以下に例を示します。棋譜コメント風の日本語の文章と、それをGoogle翻訳にかけた文章。

「この手は味がいいという検討陣の評判だ」
→ This hand is a reputation of the investigation team that is good taste.

「検討陣はこの手を味がいいと評価している」
→ Study team is evaluating the hand and good taste.

「検討陣はこの指し手を「味良し」と評価した」
→ Investigation team was assessed this move as a “taste good”.

「検討陣はこの指し手を「なかなか良い」と評価」
→ Study team evaluated the move as “quite good”.

主語を何にするのか、「評価」なのか「評判」なのか、評価「している」なのか「した」のか、細かいところですが自動翻訳された後の文章はけっこう変わります。

あと専門的な表現、「手」とか「味が良い」をどうするか。「手」は「hand」になってしまいます。「指し手」にしてみたら「move」になってくれました。

「味が良い」は日本人でも将棋を知らないと分からない表現ですが、「なかなか良い」にしてしまうと本来の意味とはやや違いますし、味気ない気がします。

また、棋譜コメントの文章は将棋ファンがつい真似したくなるような美しくて楽しい文章、「棋譜コメ文学」とも言えるものなので、それを自動翻訳のために表現を変えてしまうというのも、面白く無いかもしれません。

しかし例えば国際的に注目される棋戦だけとか、中継ブログだけとか、できるところは自動翻訳に耐える日本語にするのもいいのではないかと思います。

Google翻訳の改善のコミュニティに参加し、協力する

Googleには、「Google 翻訳の改善に協力する」というサイトがあります。翻訳のクオリティを向上させるためのサイトです。あと、自動翻訳されたページの文章にカーソルをしばらく置くと、「翻訳を改善する」というリンクが出てきます。

これらを活用する手があると思います。

私もよく知らないのですが、Google翻訳の改善のサイトでは「新しい単語やフレーズを翻訳する」「既存の翻訳を評価する」「既存の翻訳を検証する」といったことができるようです。コミュニティになっていて、これらの活動によってGoogleの翻訳品質の向上が望めるはずです。

例えば将棋用語を「新しい単語やフレーズ」として登録してみるとか。

Googleさんは賢いので、将棋関係者が翻訳品質の改善に協力することによって、将来的には将棋関連のサイトで人名の後に「九段」と書いてあれば、地名の「九段」と区別してくれて「9-dan」と翻訳してくれるはずです。人名も登録できるかもしれません。「Kato, one hundred twenty-three」の悲劇が回避できる可能性があります。

あまり即効性のある改善は期待できないかもしれませんが、でもとにかく将棋界から、将棋連盟の人か委託スタッフかボランティアか、誰かが翻訳改善のコミュニティに参加して改善を進めていかないと、Google翻訳はずっと「Kato, one hundred twenty-three」と出し続けると思います。

Google翻訳の品質を改善することは、将棋連盟だけの利益ではなく、将棋サイトや将棋ブログを運営している多くの方々にとっても「外国の方にも読んでもらえる」可能性が広まりますし、将棋界全体の利益になると思います。

まとめ

簡単にまとめると、以下の手法を程よく組み合わせて取り組んでいくといいんじゃないかなと思います。

・手動翻訳
・自動翻訳に耐える日本語の文章
・Google自動翻訳の改善に協力

私はライトな将棋ファンですが、将棋がもっと世界に広まることを願ってやみませんので、このようなことを書いてみました。

あと、当サイトにも自動翻訳のプルダウンメニューを設置してみました。PCでご覧の方はページの右上に、スマホでご覧の方は記事下のシェアボタンの下ぐらいに設置されているので試してみてください。私も今後は、自動翻訳に耐える文章を書こうと思います。

以上、最後までありがとうございました。

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コメント

  1. 匿名 より:

    棋聖のタイトルが「Jowa」って訳されてて何かと思ったら
    本因坊丈和のことなんでしょうねw
    せめてSohoと訳せばいいのに、なんでそんなところだけ中途半端な知識があるのか

    ネットの掲示板では「面白いところ探し」がいろいろ行われていますが、
    棋士一覧以外にも面白いところはたくさんあるのでおススメです

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      自動翻訳で色んな言葉が面白おかしく翻訳されるというのは、ネットでの古典的な楽しみですよね。

      我々が楽しむのはそれはそれでいいんですが、将棋を世界にと標榜する連盟や、今回のリニューアルに関わった人たちにはしっかりしてほしいと、そう思いました。

  2. 匿名 より:

    この話題を見てから、自分も連盟の英語表示でポップアップから「翻訳を改善する」で訂正を入力したりしてました。
    たぶん他にも同じ事しているひとは結構いると思いますが、すぐに変わるもんでもないようですね。
    また、効果がどれだけあるかは謎ですね。

    いずれにしても、現状の機械翻訳では特に専門分野的なところはキビシイので、やはり英語表示の、お知らせなどの動的な部分は「自動翻訳に耐える日本語」の方針で記載し、それ以外の固定的なところは人の手による質の高い翻訳でページをページを構成して欲しいですね。
    HPリニューアルをされた会社さんは将棋自体にそれほど深い造詣を持つわけではないとおもうので、やはり将棋連盟にがんばってもらいたいところですね。
    (リニューアルページができあがったことで、どこに手を掛けて行けば良いかもはっきりしてきたと思いますし)

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。
      翻訳の改善は、すぐに反映されるものでもないようですが、人名など、数年前の翻訳に比べて改善した実績もあるようです。効果がどの程度あるかは謎です。例えばTwitterの公式認証も将棋棋士の方は誰ひとりとして取れていない(Twitterの基準になっていない)とか、このようなことは地道にやるというより連盟がGoogleなりTwitterなりにアプローチしたほうが早いかもしれません。

      HPをリニューアルされた会社(シンクロ)の社長さんが、Facebookでこの英語翻訳問題を茶化すようなコメントをされており、これがネット上で広まり、将棋ファンの間ではシンクロ社の信用は失墜しているように思います。連盟にがんばってもらいたいのは同意です。

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