一般に、将棋では先手が少し有利で、後手は少し不利とされています。
近年のプロ棋士の対局データによれば、先手の勝率は52~3%程度。
年によっては後手の勝率が良いこともあり(2008年度)、これは戦法の流行などが関係しているとされます。
このデータによれば、将棋においては先手が有利ではあるものの、その勝率はわずか数%しか差がないと。
これは将棋の特徴の一つだと思います。
ボードゲームの先手有利
例えば、同じ「二人零和有限確定完全情報ゲーム」で、将棋の親戚にあたるチェスでは、先手が相当有利で、トップ同士の対局では後手はまず引き分けを狙うようです。
囲碁では、先手の有利を「コミ」というハンデで調整します。コミは時代によって変わってきており、日本では江戸時代にはコミがなかったのですが、1939年の本因坊戦では4目半、1974年には5目半、2002年には6目半と改正されてきました。
どうぶつしょうぎでは、先後どちらも最善を指せば後手が必勝だと完全解析されていますし、実際の対局でも後手が有利となることが多いようです。
勝率イコール有利度か
これらと比較すると、将棋は先手が高々50%少しの勝率であり決定的に有利とは言えない、という特徴があるとわかります。
ただ、この高々50%少しの勝率というのが、そのまま先手有利の度合いを表すでしょうか。
感覚的には、先手がもっと有利な気がします。
データを疑う
プロ棋士の対局データによる先手の52~3%の勝率をよく考えてみます。私(管理人)は統計は得意じゃないので間違っていたら申し訳ないです。
例えば、1さん、2さん、3さん・・・9さんの、9人によるリーグ戦を考えます。
1さんは圧倒的に強く、他の全員に、(先後に関わらず)絶対勝利します。
2さんは1さんの次に強く、1さんには負けますが他の全員に絶対勝利します。
3さんは2さんの次に強く、1さんと2さんには負けますが他の全員に絶対勝利します。
(中略)
8さんは7さんの次に強く、1~7さんに負けますが、9さんには絶対勝利します。
9さんは誰とやっても絶対負けます。
総当りでリーグ戦を行い、それぞれ4回先手4回後手を持つ。
というリーグ戦をやったら先手の勝率は50%となります。
何が言いたいかというと、実力差がある者同士による勝率のデータというのは、先手の有利度合いを示すものではないんじゃないかということです。
実力差がなければ
それでは実力差がない者同士が対局しているデータだけを抽出して、どれほど先手が有利かを調べればよいのですが、これは難しいです。
「実力差がない」の定義が難解。それに人間だと、調子の良し悪しも関わってきますし。
コンピュータソフトなら
そんな悩みに答えてくれたのが、第25回世界コンピュータ将棋選手権で優勝した現在最強のコンピュータ将棋ソフト、ponanzaの開発者である山本一成さん。以下のツイート。
Ponanza同士で戦うと先手の勝率がどれくらいになるのか気になったのでちょっと実験してみている。
あまり深い探索ではできないけど、深さ6の探索で毎対局ごとに評価関数に乱数入れて同じ展開にならないよう調整してみて10,000試合くらいさせてみる。
— 山本 一成@Ponanza (@issei_y) 2015, 5月 15
おおお!!
同じコンピュータソフト同士なら実力差はないですし、調子の良し悪しもないので良いデータと言えそうです。
これは期待。
そして。
ちょっと終わらなそうだったので、1700試合までさせてみました。
結果はPonanzaの場合は、先手勝率51.82%でした。
案外互角の形勢なものなんですね。
— 山本 一成@Ponanza (@issei_y) 2015, 5月 15
えええ!!約52%!
プロの勝率のデータとあまり変わらない!
私の「実力差があると勝率見ても有利度はわからない」という理論はなんだったのか。打ち砕かれました。
結局やっぱり先手の有利はわずかってことですか。
コンピュータ将棋ソフトひまわりの開発者の山本一将さんも以下のツイート。
@issei_y 昔、芝浦将棋時代に学習の成果を確認するためにbonanza同士の先手の勝率を調べたことがあります。
その時は一手一秒の10万局で52%程度だったと記憶してます。(家に帰れば正確に分かるのですが…)
Ponanzaでどの程度になるか気になるので期待してます!
— 山本一将@ひまわり (@kyamamoto9120) 2015, 5月 15
やっぱり52%!!
結論
現時点の結論から言うと、これまで将棋界で言われてきたとおり、先手が少し有利、後手は少し不利。勝率は52%程度ということになると思います。
厳密にいうと、ponanzaにしても芝浦将棋にしても、もしかしたら先後どちらかが得意なソフトかもしれませんし、得意戦型の相性の問題もあります。それにしてもいずれも52%前後のデータというのが興味深い。
コンピュータ将棋の使い方って
コンピュータ将棋ソフトって、ただ強いだけではなくて、このような使い方ができるのが面白い。学術的には、将棋ソフトは強くなればなるほど意味があることなのでしょうが、私個人的には今回のような使われ方も意味があるのかなと思いました。
せっかく強くなった将棋ソフトの使われ方、練習相手や研究以外にも、いろいろあると思うんですよね。
余計なお世話かもしれませんが、私も考えてみます。
コメント
棋戦は似た実力の者同士が当たることが多いですし、
強い人が弱い人に後手で勝つ場合も、先手で勝つ場合も、対局を重ねるごとに両方が同程度の数に収束していくでしょう。だからこそサンプル数が必要であったり、統計をとる意味があるのですが。それに今までの数多くの集積から先手有利はデータ上においてはもうはっきりしていますよね。もちろん確定的な結論ではないですが。今後後手の作戦の開発により後手有利になるかも知れませんから。
この記事、正直本格的に何をおっしゃっているのかが分からないと感じました。
プロ棋士が何千何万と対局重ねてれば先手後手棋士の実力差も差が無くなるから言い訳だな
囲碁のように勝率に合わせて改定出来ないから屁理屈こねてるとしか映らない