2015年12月2日・3日に行われた第28期竜王戦七番勝負第5局は、挑戦者の渡辺明棋王が勝利。
これでシリーズのスコアは挑戦者からみて4-1となり、タイトル奪取となりました。
詳しい棋譜は竜王戦中継サイトでご覧ください。
渡辺竜王は、2013年に失冠して以来の竜王復位。糸谷哲郎八段は1期での竜王失冠。
両者得意な「角換わりシリーズ」になると予想された本シリーズですが、結局角換わりは1局のみに終わりました。
戦型は相掛かりに
第5局の先手は挑戦者の渡辺棋王。
戦型は、またしても角換わりにならず。糸谷竜王が第1局で突如採用し、第2局でも採用された横歩取りにもならず。相掛かりに。
先手は端から、後手は中央の歩を伸ばす構想。珍しい形。
後手は飛車を5筋に転回。玉飛接近型。このシリーズは力戦模様の将棋が多かったです。渡辺棋王が主導して力戦に持ち込んでいるような。
また、本シリーズでは第2局、第4局で、糸谷竜王が中盤までに形勢を悪くしてそのまま敗れていますが、この第5局でも封じ手までに渡辺棋王が有利になっていたようです。
2日目のニコニコ生放送の解説を担当した郷田真隆王将も、上図の封じ手開封段階で「先手持ち」だと発言していました。
やがて渡辺棋王が仕掛ける。
本日の藤田画伯
ここで、対局とは関係ない情報をいくつか。興味が無い方は次の見出し「入玉を目指す」まで飛ばして下さい。
ニコニコ生放送では、聞き手の藤田綾女流初段、またの名を藤田画伯が、「馬」と読売巨人軍のマスコット「ジャビットくん」の絵画を披露しました。
藤田画伯の「馬」と「ジャビットくん」。ジャビットくんは読売巨人軍のマスコットキャラクターです。 pic.twitter.com/6wOKgnb8Qd
— 日本将棋連盟モバイル (@shogi_mobile) 2015, 12月 3
竜王戦のスポンサーである読売新聞(読売巨人軍の親会社)に配慮したのか、いつもより上手なようにも見えます。他の人の絵を手本にして、いつもより大きく書くことを心がけたようです。
郷田王将の笑顔が素敵。
郷田王将、大満足です。 pic.twitter.com/uxNtLkEkOa
— 日本将棋連盟モバイル (@shogi_mobile) 2015, 12月 3
— 日本将棋連盟モバイル (@shogi_mobile) 2015, 12月 3
二人とも巨人ファン。
郷田王将は「いわゆるひとつの」という長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督の口癖を、解説に交えてくれたりしました。
2015/12/6追記:
記事リリース当初書いてあった映画「聖の青春」の一部キャストについて、KADOKAWAの角川歴彦会長から改めて発言がありました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
映画「聖の青春」、村山聖役に松山ケンイチさん。中原誠十六世名人、豊川孝弘七段、山口恵梨子女流も出演?
入玉を目指す
そうこうしているうちに、先手の攻めが決まる。先手の優勢が明らかに。
渡辺棋王は、慎重に敵の攻撃を消しにかかる。
しかしその間に、糸谷竜王は玉の上部を開拓。得意の入玉にかける。
さすが糸谷竜王、上図のあたりでは怪しくなり、郷田王将も「ワンチャンある」と発言。
怪しい粘りを見せる竜王。何回かノータイムで指し、入玉。
渡辺棋王の顔には後悔の色が滲む。後手玉は寄らない形に。
しかし、大駒が4枚とも先手に渡り、後手は相入玉になったとしても点数が足りず持将棋指し直しには持ち込めなさそうに。点数については日本将棋連盟の対局規定第6条「指し直し」を参照。(糸谷竜王の持ち時間が少なくなり、この辺りではミスもあったようです。詳しくは棋譜に追記されると思いますが)
以下の手を見て、糸谷竜王が投了。
糸谷竜王は時間を使いきり、渡辺棋王は13分残していました。
復位
この結果、シリーズのスコアは挑戦者の4勝1敗に。
渡辺新竜王は2013年に失冠して以来の竜王復位。また、今年3月に王将を失冠して以来の2冠復帰となりました。通算タイトル数は16期。竜王は最多記録を伸ばす10期。
一方、糸谷八段はシリーズを通して力を出せずに敗れる将棋が何局かあったように思います(個人の感想です)。それだけ渡辺竜王の作戦がうまくいったということかもしれません。
これで将棋界の7大タイトルは、羽生善治名人が4冠(今期4冠すべて防衛)、渡辺明竜王が2冠(1冠奪取、今期は残り棋王防衛戦を控える)、郷田真隆王将が1冠(防衛戦を控える)となっています。
コメント
渡辺棋王の竜王復位、うれしいです。
渡辺永世竜王が竜王失冠して2年、復位が待ち遠しかったです。
永世竜王は多方面から「竜王戦ばかり頑張る」と言われていますが、それぞれの棋士に得手・不得手の棋戦があると思います。
棋王の防衛戦も勝って欲しいです。個人的には佐藤康九段挑戦がいいかな?
コメントありがとうございます。
復位おめでとうございます。
そういえば渡辺竜王は、将棋フォーカスで竜王戦に強い理由ついて話されていましたね。冗談半分でしょうけど「賞金が・・・」とか。
何のタイトルでもそうでしょうが、主催してもらっているスポンサーに対して、タイトルホルダーあるいは元タイトルホルダーとしてその棋戦・タイトル戦を重要視するのは自然なのだと思いますね。
棋王戦は佐藤九段が挑戦に一番近い位置にいますね。コメントありがとうございます。
将棋は渡辺棋王の完勝、
解説は郷田王将のスポーツ新聞記者以上のスポーツへの深いコメント、
画伯は期待以上のジャビット君と大変楽しめた竜王戦第5局でした。
シリーズを通して、渡辺棋王の序盤戦術が効を奏して糸谷竜王の終盤力を発揮させなかったと思います。
ともかく渡辺竜王、おめでとう。
糸谷君はまた、巻き返しを期待したい。
コメントありがとうございます。
将棋は序中盤で渡辺棋王が有利になって、また早い時間の終局もありえるのかなと思っていましたが、終盤はワンチャンスあるという状況にまでなって、楽しみました。
郷田王将はあまりニコ生出演されないと思うのですが、この日はいろいろお話を聞けて良かったです。幅広い話題に、とても気さくに答えてくれましたし、講座もありましたし、私も大満足でした。画伯のジャビットくんは似ているとは思いませんが進歩を感じさせてくれました。
糸谷竜王は力が出なかった対局が多く少し消化不良だったかもしれません。でも次も期待です。コメントありがとうございます。