竜王戦第2局は糸谷哲郎竜王がおやつ前に投了、1勝1敗に。渡辺明棋王は連敗ストップ

2015年10月29日・30日開催の第28期竜王戦7番勝負第2局(▲糸谷哲郎竜王vs△渡辺明棋王)は、後手の渡辺棋王が勝利。

68手という短手数で、2日目15時のおやつ前という早い時間の決着となりました。

これでこのシリーズの対戦成績は1勝1敗に。

詳しい棋譜は竜王戦中継サイトでご確認ください。

この記事では、本局の流れを簡単にご紹介したいと思います。

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戦型は再び横歩取りに

第1局は、後手の糸谷哲郎竜王が意表の横歩取りを採用。糸谷竜王はその後の王将戦挑決リーグ(vs羽生善治名人戦)でも後手番で横歩取りを採用し勝利しています。

本局は糸谷竜王が先手。そして。

20151030-6手

上記の6手目に渡辺棋王が8分使い、本局も横歩取りになりました。

20151030-18手

本シリーズは両者得意な「角換わり」シリーズになるかと思われていて、専門誌でも村山慈明七段が「角換わりがカギを握るシリーズ」と題する展望記事を書いていました。

しかしまさか2局連続で横歩取りとは。

激しい展開

30手目に後手から飛車をぶつけ、激しい戦いに。

20151030-30手

飛車を交換し、先手は▲8四飛と打つ。

20151030-33手

棋譜コメントによれば、糸谷竜王は類型を指しています。

糸谷は先手で△1四歩と▲3六歩の交換が入っていない形を指している。前期挑戦者決定戦第3局で羽生善治名人が相手だった。この対局に勝ち、糸谷は竜王挑戦を決めた。

しかし何気ない後手の△1四歩が、このあと効いてくることに。

竜王、封じ手前に劣勢に

先手は銀と香車を入手し、馬を作る。

20151030-37手

その代償として後手には飛車が渡りました。

そして次の手が。

20151030-38手

△1三桂。

1四歩の形を活かしてこちらに跳ねる。棋譜コメントによれば、△3三桂ではなく△1三桂と跳ねた意味は。

▲2一馬△4二金と進行したあとに、△3三角と引く手を残しています。角が受けに利いてますね。(村山慈明七段)

糸谷竜王が対局後に誤算だったと述べたのは▲7七桂~▲7五歩の攻め。効きが弱かったようです。

20151030-43手

一方、後手は△1三桂をさらに活かして△2五桂と跳ねる。

20151030-44手

感想戦で、渡辺棋王はこの「△2五桂が通れば指せるんじゃないかと思っていた」と話していました。

この△2五桂は封じ手の直前の手。

糸谷竜王はこの手を見て1時間以上長考し封じ手をしたのですが、感想戦では「ここから良くなる筋が一つも見えなかった」と話していました。

短手数の決着

50手目。

20151030-50手

後手は2五桂を活かして歩を打つ。

このあたりでは検討陣や、コンピュータソフト(ponanza)の評価値も後手の優勢~勝勢を示していました。

後手は二枚の飛車で先手玉に迫る。

20151030-55手

糸谷竜王は得意の入玉を目指しますが、上を抑えられて。

20151030-66手

後手の決め手はこの△4六角。

20151030-68手

先手は、この角を取らなければ△2五銀または△1五銀で詰み。▲同歩と取っても△同飛車成から詰み。

この手で、糸谷竜王が投了しました。

おやつを前に

68手での決着。竜王戦での最短手数にあと2手と迫る短手数での終局でした。

両者、持ち時間を1時間40分ほど残していました。終局時刻は14時52分。

あと8分待てば、両者好きなはずのおやつが来るはずでした。

追記:幻のおやつ

糸谷竜王はマンゴープリン、渡辺棋王はショートケーキを発注済みでしたが、おやつタイムは幻に終わりました。

次戦の戦型は?

渡辺棋王は自身の連敗記録を更新中(6連敗、NHK杯を入れれば7連敗?。これまでの連敗記録は5連敗)だったのですが、本局でストップ。これで流れが変わるか。

本シリーズの対戦は1勝1敗になりました。角換わりシリーズかと思われたところが2局連続で横歩取り。そして本局では両者の好きなおやつを前に終局という、意外な展開の連続。

ますます目が離せない。次こそは角換わりが来るかもしれませんし、糸谷竜王がまた後手番で横歩を採用するかもしれません。もう何が来るかわかりません。

注目の第28期竜王戦7番勝負第3局は、11月5・6日に和歌山県の「別格本山 總持院」で行われます。

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コメント

  1. 渡辺棋王ファン より:

    渡辺棋王の勝利、うれしいですが、あまりにも早い終局に驚きました。
    棋王の連敗記録が止まって良かったです。

    棋王のファンとして棋王戦が楽しみなのですが、羽生名人が残念だったので、誰が挑戦になるか不安です。
    4強以上は敗者復活戦がありますからね。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      早かったですね。午前中から予感があったのですが。でもあの局面に至ってはしょうがないと思います。今年は名人戦でも短手数が出ましたけど、あれはまだまだという感じもしましたが、本局はもうしょうがないですね。

      棋王戦、そうですね。準決勝以降は2敗で敗退のやつですね。棋王戦は近年渡辺棋王が強さを発揮していますよね。冬に強いとかいう噂も。でも楽しみですね。

      コメントありがとうございます。

  2. やまねこ より:

    細かいことで恐縮ですが、後手の最終手は、厳密には「角捨て」ではなく、単に「角を出る」手ですね。解説の屋敷九段も「△4六角と出る手が厳しい」と言っていて、「捨てる」とは言われていません。「捨てる」は、応手が「取る一手」に限られる場合です。しかし、この局面では、▲1六歩と指せなくはないですし(以下、詰みですが)、角を出て3五に効かして逃げ道を封鎖しているのが重要なので、「角を出る」手、あるいは「角の飛び出し」が正確な表現だと思います。

    • 管理人 管理人 より:

      ご指摘ありがとうございます。修正致しました。

      ご指摘の「角捨て」は棋譜中継で使われていた文言を使いました。

      この際なので「捨てる」または「捨て駒」の定義を書籍で調べてみました。

      日本将棋用語事典では「捨て駒」について

      自らすすんで相手にタダで駒を取らせること。駒を捨てた時にそれ以上の得られる時に使う(以下略)

      将棋ガイドブックでは「捨てる」について

      駒を相手に意図的に取らせること(以下略)

      とあります。他2冊の用語集を見ましたが、「捨てる」が「応手が取る一手に限られる」ということでは必ずしもないようです。

      例えば「歩の突き捨て」という表現がありますが、多くの突き捨ては取る一手に限りません。

      ただ、やまねこ様のおっしゃりたいことはわかりました。取る以外に有力な選択肢がある時や、取らせるということが重要ではない時、というようなことだと解釈し修正を行いました。それに将棋ファン歴は私より相当長いと思いますので、その点から言っても修正が妥当だと考えました。

      コメントありがとうございます。今後ともよろしくお願い致します。

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