2015年6月21日、日本将棋連盟モバイルの中継アプリで「名局探訪」という企画が始まりました。
これが面白かったのでご紹介します。
無料ですので、有料会員でない方にもおすすめです。
名局をコメント、解説付きで
「名局探訪」は、過去の名局の棋譜をいつも将棋連盟モバイルで見ているような棋譜コメント付きで振り返るという趣旨。しかも棋士による解説が付きます。
新企画第1回は1967年12月5日の第7回最強者決定戦記念対局、▲山田道美棋聖VS△大山康晴名人。なんと、ほぼ半世紀前の棋譜。
棋譜コメントは紋蛇さん、解説は石川陽生七段です。
時代背景
将棋ファンの中には、半世紀前には生まれていないとか、物心ついていないという方も多いと思います。当時はどんな時代だったのか。
そもそも「最強者決定戦記念対局」とは何なのか。
棋譜コメントでは、以下のように触れられています。
1967年は第3次中東戦争が起こった年だった。
時の首相は佐藤栄作。
最強者決定戦(主催:共同通信)は1961年から73年にかけて行われた棋戦。
参加資格はB級以上で、優勝者は名人との対局ができた。
最強者決定戦はのちに古豪新鋭戦と統合され、棋王戦へと発展的解消を遂げている。
実際はもっと長い文章で、当時の出来事や流行のお菓子や歌、タイトル保持者や将棋界の事情、この年に生まれた棋士などの紹介があって、それを見ているだけでも楽しい。
佐藤栄作首相とか第3次中東戦争って、今の若い人たちにとってはもう「歴史上」の出来事と言ってもいいと思いますが、そういう時代にどんな将棋が指されていたのか。恐ろしく興味をそそられます。
それに、私(管理人)にとって知らない棋戦名が出てきて、それが現在の棋王戦につながっていると初めて知ったのですが、これも興味深い。
さらに当時の対局場は神奈川県の秦野市の鶴巻温泉の「陣屋」!!
随所に歴史を感じる企画です。
自由な振り飛車
私は、大山康晴名人といえば振り飛車、ぐらいの知識しかありませんが、どんな振り飛車を指したのか。コメント・解説付きで棋譜を見ると、驚くことの連続です。
なんかもう、自由過ぎるんですよね。特に後手の大山名人。そして棋譜コメントや解説を見て、自分の感覚が間違ってなかったと確認する。
(コメント)後手は不思議な駒組みですよね。
(石川七段)驚くのはまだ早いですよ。
戦場に近づく玉
そして。
後手、四間飛車なのに玉を左に!!おもいっきり玉飛接近。むしろ戦場に近づく玉。棋譜コメントはどうなってるか。
(コメント)てっきり△6二玉だと思っていたので驚きました。
(石川七段)こういうあたりは独特ですね。
これが当時のトップ2人の対局だと思うと、不思議な気分になります。当時の人はこの棋譜を見てどう思ったのか。自分の感覚を疑ったりしたのか。この感じ、今の棋譜中継やニコニコ生放送で放送されたら、大騒ぎでしょうね。
棋譜コメントには、
昔は序盤はなにをやっても一局で、中終盤になってからが勝負だと考えられていた
とも書かれていますので、当時としてはまあまああったことなのか。現代との違いが明らかで、面白い。
しかし案の定、後手の玉頭で戦いが勃発。
大山名人ですから
以下の局面、大ピンチにもほどがある。
棋譜コメントの紋蛇さんは、棋士や奨励会員にもこの棋譜を見せて感想をうかがっているようです。頭が下がります。上図の数手後の棋譜コメント。
(コメント)棋士や奨励会員に見せましたが「受けがあるんですか」と驚いていました。
(石川七段)凌いでしまうんです。大山名人ですから。
大山名人ですから!!
逃走、そして反撃
戦いが一段落すると、足早に逃走する後手玉。
いったん左に行ったはずの玉が、見慣れた位置に。
ここから後手が一気に攻めて。
ここで先手が投了。大山名人は受け将棋ということは聞いていましたが、こういうことだったのかと驚きの連続。相手の攻めが切れた一瞬に一気に寄せてしまうのも見られました。
私は、昼ごはんを食べながらこの名局探訪を見ていたのですが、なんとご飯の進まないこと。見入ってしまいました。
次回が楽しみ
この名局探訪第1回、棋譜の素晴らしさもそうですが、コメント、解説も、ともに素晴らしく、早くも次回を楽しみにしてしまっています。
これだけ充実した企画なので、手間暇かかったことが推測できますが、続けてほしいです。
ささやかな要望
私は、以前からある類似の企画「好局振り返り」も、対局者ご本人のインタビューを交えながら振り返っていて面白くて好きです。
ひとつだけ、両方の企画について要望があるとすれば、コメントの欄のスクロール量が多いのがなんとか改善されたら嬉しいです。「名局探訪」にしても「好局振り返り」にしても、インタビューや解説でコメント欄が長くなるしコメント欄の重要性が増しますので、読みやすくなると幸いです(もしかしたらスマホとタブレットでは仕様がちがうのかもしれませんが)。というかこれは中継アプリ自体に対する要望ですか。
かといって、モバイルの小さな画面でどうやってスクロールを少なくするのかは、なにか良いアイディア、将棋で言えば新手が必要のようにも思います。
歴史があることの魅力
しかし、まあこういう細かいことはどうでもよくなるぐらい素晴らしい「名局探訪」だったので、次回もよろしくお願いします。
こういう形で半世紀前を振り返ることができるのも、長年愛されている将棋というゲームの魅力だと感じました。
まだ見られていない方は、無料ですのでぜひ。
以上、ありがとうございました。
コメント
「終盤で、ゴマかして勝つ」www
コメントありがとうございます。
そうなんですよね、私もどちらかというと受け将棋ですので、このゴマカシができるようになりたいと常々思っております。
コメントありがとうございます。
私もあのスクロールしなきゃいけない仕様大嫌いです!
それもモバイル中継が億劫で煩わしくて、見そびれたり、課金もまあいいやって渋りがちな原因です。
名人戦棋譜速報の方はブラウザで見られるしもっと棋譜コメも見やすいのに
(とは言え、スマホから名人戦棋譜速報を見ると煩わしさは同じくあるのですが)
早急の改善して欲しいですよねヽ(`Д´)ノ
コメントありがとうございます。
やっぱり!そうですよね。私は大嫌いとまでは言いませんけど。
特に、コメントを読みながら棋譜を前に進めたり戻ってみたりしていると(よくありますよね)、スクロールが一番上に戻っちゃうのでまた読んでいたところまでスクロールするのが面倒くさいです。
どうやったらモバイルであの長い文章のスクロールをなくせるのか、よいアイディアは浮かびませんが・・・。ニコ生のコメントのように盤にかぶせて表示するとかですかね。見にくそうですけど。単純に、文字のサイズはもう少し小さく設定できてもいいと思いますね。まああといろいろ改善ポイントはあるんですけど、連盟内でアプリ作ってるわけじゃないでしょうから改造するには委託先にめっちゃお金取られそうで可哀想だと思ってしまって。
コメントありがとうございます。