熊坂学五段をご存知でしょうか。
仙台で「杜の熊さん将棋教室」という教室を開いている37歳の棋士です。
そんな熊坂五段が2015年1月24日朝、以下の様なツイートをしました。
これから杜熊将棋教室です。一月は連敗して、あとがありませんが、最後まで自分らしく指したいと思います。
— 杜の熊さん (@kumasaka244) 2015, 1月 24
あとがありませんが、最後まで自分らしく指したい
最後まで自分らしく・・・?
最後まで、とはどういうことでしょうか。
追記:2015年5月7日、引退が決定しました。
熊坂学五段の引退が決定。現役続行かけた5番勝負の初戦で敗れる
強制引退の大ピンチ
将棋の世界(日本将棋連盟)には、棋士が強制的に引退させられる制度があります。
順位戦・フリークラスの規定によれば、
C級2組の棋士が降級点を3つとるとフリークラスに降級
とあります。フリークラスは、通称フリクラと呼ばれ、簡単にいうとC2から降級した棋士や自ら順位戦参加を放棄した棋士などが在籍。棋力はC2より低い(弱い)との認識が一般的です。
フリークラスへのルートは複数ありますが、このように降級点によりC2から陥落した場合は
10年以内にC級2組に昇級できないと引退
とあります。C2への昇級は、上記の規定に定められていますが、結構複雑で、一例をあげると
良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上
などといった厳しいものです。
熊坂学五段は最短・最年少でフリークラス陥落
C2からフリークラスへの陥落は、降級点(C2順位戦の成績が下位20%になると降級点が1つ付く)が3つ付くと発生します。
新たにプロ棋士になった者は順位戦のC2に参加し、そして順位戦は1年周期で行われますので、プロ棋士になってからフリークラス陥落は最短3年で発生します。
熊坂学五段は、プロ棋士となって初参加した2002年度の順位戦から3年度連続で降級点を喫し、制度上ありうる最短でフリークラスに陥落した棋士として知られます。
しかも、当時27歳という最年少の若さで・・・。
ネット上で愛され「クマー」という愛称がつく
しかしこの悲運が逆に、その愛くるしい容姿とともにネット上で愛され「クマー」という愛称がつくなど、熊坂学五段は徐々に有名棋士に。
そして迎えたフリークラス10年目、2014年度。熊坂五段は快進撃を見せるのです。
森内俊之竜王に勝利
2014年10月22日、棋界の頂点に君臨する森内俊之竜王(当時)に勝利。
この快挙はヤフーニュースがとりあげるなどの事態になりました。これで熊坂五段のことを知った人も多いと思います。
NHK杯で香川愛生女流王将に勝利
地上波で放送される唯一の棋戦であるNHK杯将棋トーナメントに出場。
NHK杯本戦は、フリークラスから参加するには予選を突破する必要(3連勝が必要)があり、熊坂五段はこれまで出場できていませんでした。
2014年8月3日の1回戦・香川愛生女流王将戦では、解説の中村修九段が香川女流王将の師匠であるにもかかわらず、熊坂五段を応援するかのように「熊坂!金を取れ!」などと解説をおこないました。
なお、このトーナメントでは香川女流王将に勝利したものの2回戦で畠山鎮七段に敗れています。
快進撃、止まる
このほか、2014年は6連勝を果たすなどの好成績をおさめていました。もしかしたらC2への昇級がありえるのでは・・・?との状況に。
しかし、2014年の暮れにさしかかると、負けが目立つようになり、C2への昇級が微妙な情勢となってしまっていました。
そして迎えたデビル中田宏樹八段戦
2015年1月に入っても熊坂五段の調子は上がらず。
そして1月23日に行われた中田宏樹八段戦。
デビルの異名をとるベテランに熊坂五段は屈し、冒頭のツイートとなったわけです。
今後の昇級条件は・・・
熊坂五段がC2へ昇級するには、今後4連勝するか、2敗する前に4勝する必要があると言われています(昇級条件が複雑で、しかも対局日程が不明で今年度内に想定通り対局が組まれるかわからないため、正直良くわからないが、本人がいうように「後がない」状況)。
リミットは3月31日
2015年3月31日までに昇級条件を満たさない場合、熊坂学五段は引退となってしまいます。
正直私は上記のNHK杯でしか拝見したことがありませんが、いかにも優しそうな青年で、将棋教室も一生懸命やっているようですし、生き残ってほしいです。
頑張ってください!!