2015年10月26日の第63期王座戦5番勝負(羽生善治王座vs佐藤天彦八段)第5局は、羽生王座が勝利。
これでシリーズの成績が王座からみて3勝2敗となり、防衛が決定しました。
羽生王座は4期連続、通算23期目の王座。
現在45歳の羽生王座。人生の半分以上が王座ということになりました。
詳しい棋譜は王座戦中継サイトでご確認ください。この記事では第5局の流れを簡単に振り返ります。
三たび横歩取りに
振り駒によって羽生王座が先手になりました。戦型は、佐藤天彦八段が得意とする横歩取りに。
第1局、第3局に続く佐藤八段の後手番横歩。相手の得意戦型をこれでもかと受けて立つ羽生王座。
以下の▲7七角が珍しい手で、羽生王座が用意してきたものと思われます。
棋譜コメントには、
22手目の局面で1000局を超えていた前例が▲7七角で20局ほどに激減した。データベース上の1号局は昭和60年代に指されている。一時は公式戦から姿を消したが2年前に復活し、年に数局のペースで再び指されるようになった。
と書かれています。
後手から攻める
後手が端から攻め、先手が受ける展開に。
以下の▲8六歩は、「すごい手」と現地の森下卓九段が驚いた手。
後手に、香車を取れと催促した手。催促しなくても△9七桂成が考えられます。先手はそれだけ桂馬が欲しかったということか。
(確かに、先手が入手した桂馬はこの後攻めの要となり、9七に残った桂馬も終盤で役割を果たすこととなります。詳しくは棋譜で)
ただ、これ以降は後手がやや有利との評判が続きました。
逆転模様に
後手有利の評判がひっくり返ったのが、この△2六香。
ニコニコ生放送で解説していた永瀬拓矢六段は、ここで△2六角を指摘していました。いずれも先手の飛車を封鎖する手ですが、後手は角を打ったほうが攻めにも使えてよかったのではないかとのこと。
なお、この△2六香が指されたのは夕休明けの数手後のことでした。(いわゆる魔の時間帯?)
記事の最後に棋士(および棋士並に将棋が強い人)3人の本局の感想を載せておきますが、3人共に逆転だったと指摘しています。
先手が勝勢に
先手は飛車を切って入手した銀で後手玉に迫る。
このあたりでは羽生王座の手が震えることもあり、優位を意識していた(決してご本人は口にしないと思いますが)と思われます。
先手が着実に後手玉に迫り、勝勢に。佐藤天彦八段は以下の手を指して、リップクリーム。
この手は佐藤八段らしく粘るでもなく、ニコニコ生放送の解説をしていた永瀬六段も意外そうに「しかしそんなことをするかなと。詰めろじゃないが、何かあるんじゃないでしょうか。不気味ではある」と発言。佐藤八段は、この香車を打ったことを後悔したのかも。
羽生王座が▲同金としたところで、佐藤八段が投了。
羽生王座は今期四冠を防衛
タイトル初挑戦だった佐藤天彦八段は、第1局、第4局に続き最終局でも投了前にリップクリームを投入。
和服の着こなしが注目されるなど話題を振りまいてくれましたが、届きませんでした。ただ佐藤八段は、今期から参戦しているA級順位戦で4連勝中であり、名人戦で再び羽生名人に挑戦する可能性もあります。
一方、羽生王座は冒頭書きましたとおり、通算23期目の王座、人生の半分以上が王座。
これで羽生王座は王座戦で、前々期から中村太地六段、豊島将之七段、そして今期の佐藤八段と、20代の若手トップ棋士達の挑戦を受け、すべて3勝2敗で防衛したことになります。
今期は、棋聖戦で豊島七段、王位戦で広瀬章人八段と、こちらも20代の若手棋士達を相手に防衛。名人戦では行方尚史八段の挑戦を受け防衛しており、保持する四冠すべての防衛を果たしています。
通算タイトル獲得数は94期に。
さらに今期は王将戦、棋王戦で挑戦の可能性も残しており、相変わらず異次元の存在感を見せつけています。
羽生王座は神?
そんな羽生王座に、二年前に挑戦した中村太地六段は。
羽生王座が防衛。シリーズを通して王座が苦しい場面が多かったように思うのですが(本局も夕休あたりは天彦さんのペースにみえた)、結果は羽生防衛。流石としか言いようがないですが、流石という言葉では片付けられない凄さを感じます。(中村太)
— 東竜門〜関東若手棋士〜 (@wakate_shogi) 2015, 10月 26
トップ棋士並に将棋が強いツイッターアカウントitumonさん。
佐藤天彦八段は今、人類でベスト10に間違いなく入る将棋の強い人なのですが、その人をも間違えさせるからやっぱり強いんですね
— itumon (@itumon) 2015, 10月 26
また、大平武洋五段はブログで羽生王座を「神」と表現しています。
昼間は後手乗りかなと思いましたが
終わって見れば、しっかり勝ち切る。
絶対王者だし、神ですね。
以上、ありがとうございました。
コメント
凄いの一言
タイトル94期は立派ですね。
王将戦は、リーグ3連勝の久保九段か、2連勝の糸谷竜王が勝ち続ければ挑戦だと思います。
深浦九段は1勝0敗、羽生四冠と森内九段は1勝1敗、渡辺棋王と佐藤康九段は3連敗です。
何よりタイトル100期獲った羽生先生が見てみたいです。
匿名様:
コメントありがとうございます。すごいという他ないですね。
渡辺棋王ファン様:
94期というのは言い表せないぐらい偉大ですね。100期・・・現実的になってきました。
王将リーグは久保九段が好調ですね。前期はもつれたので何があるかわかりません。渡辺棋王はやや負けていますが、ブログでは立て直すと書かれていました。今週の竜王戦も楽しみです。
皆様コメントありがとうございます。
佐藤天彦さんの第1局前までの勝率は0.833。しかも記事にあるとおりA級順位戦無敗。それでも勝てないとは。
コメントありがとうございます。誰だったら勝てるんだというかんじですね。豊島七段、広瀬八段、佐藤八段と若手を撃破し続けるの凄まじいです。
本当に。大山康晴を調べてみた。勝ちっぷりも同じくらいでした。加藤、山田、内藤などを寄せ付けず、米長、大内などの有力若手もまかしていた。
はい。大山先生もとんでもない勝ちっぷりだったという話は聞いたことがあります。実際タイトル獲得も80期A級(以上)44期で歳をとってからも勝っていた、10年間ぐらいすべてのタイトル戦に登場し続けていたということで、伝説級ですね。