2015年10月6日に行われた第63期王座戦5番勝負第4局(△羽生善治王座vs▲佐藤天彦八段)は、後手番の羽生善治王座が勝利。
これでシリーズのスコアは2-2となり、決着は最終局に持ち越されました。
詳しい棋譜は王座戦中継サイトでご覧ください。
この記事では簡単に一局の流れをご紹介します。
一手損角換わりに
この一局に勝利すれば初タイトル獲得となる佐藤天彦八段。
初手にお茶を飲み、1分かけて▲7六歩を着手。そこから△3四歩 ▲2六歩、そして△3二金。
珍しい出だし。棋譜コメントによれば、羽生王座が4手目△3二金を指したのは2011年の王位戦以来。
本局の観戦記は強豪コンピュータ将棋ソフトponanzaの開発者・山本一成さんがつとめます。この珍しい形は、羽生王座がコンピュータに研究材料をくれてやろうということなのか、これがコンピュータに読めるかという意気込みなのか。
早繰り銀で、後手が攻める姿勢。
先手も攻めの体制を構築。控室は微妙に先手持ちのよう。
控室では微妙に羽生王座が苦しいのではと言われているます。
ポナちゃんも少し羽生王座が-150点くらいです。 pic.twitter.com/39NwhIQPbn
— 山本 一成@Ponanza (@issei_y) 2015, 10月 6
34手目。後手は居玉のまま仕掛ける。
後手の居玉が解消されたのは、ずっと後の62手目。打ち込まれた銀を取るためにしょうがなく動いた手でした(後手玉が動いたのはその1回だけ)。
激しくなる
先手は桂馬を跳ねて中央突破を図り、後手の歩成を防ぐために金を向かわせる。形勢は互角に。
進行はわりとポナンザの予想してたとおりに進んでます。
計算判断はほぼ互角です。 pic.twitter.com/G1TNCasqwt
— 山本 一成@Ponanza (@issei_y) 2015, 10月 6
後手は意表の位置に角を打つ。
△3九角や△3七角ではなく、金だけを狙う△5九角。
先手も角を切って攻める。
激しくなりました。
思えば羽生王座は、一昨年の中村太地六段、昨年の豊島将之七段を相手に、シリーズ3勝2敗のスコアで競り勝ってきました。
後手が優勢に
58手目、後手が△6九金で王手。
先手がこの金を玉で取れば、△3六角の王手飛車取りがあります。
▲8八玉と入る。このあたりで少し後手が良くなったようです。
先手が攻めを見せるものの、受けられ、攻めの飛車を引かされる。
ここからは後手が一方的に攻める展開に。
おしぼり新手
82手目、羽生王座はおそらく勝利を確信していったん席を立ち、戻ってきて△8七歩成。
そして89手目、後手が飛車で王手。これを見た佐藤天彦八段は・・・。
あぐらから正座に座り直して、おしぼりで手を拭い、さらには20秒間も顔を入念に拭いて、リップクリームを塗り、投了。
初タイトルか、人生半分王座か
佐藤八段は第1局に続くリップクリーム投了。
ちなみに佐藤八段愛用のリップクリームは、ユリアージュ・フレンチバニラの香りだと思います(この記事のコメント欄参照)。
おしぼりは新手と思われます。20秒間も拭うとは。気持ちを切り替える意味もあったのかもしれません。
これでシリーズのスコアは2-2に。王座戦は3期連続で最終局にもつれこみました。
前も書きましたが、王座戦は5時間1日制という持ち時間が絶妙で、ちょうどゴールデンタイムにクライマックスを迎えますので、会社や学校から帰られた方もちょうどいいです。注目度も高いはず。
佐藤天彦八段の初タイトルか。現在45歳の羽生善治王座が防衛し、通算23期目の王座、つまり人生の半分以上の期間王座に座ることになるか。
今期一番の注目の対局となる第63期王座戦5番勝負第5局は、10月26日、山梨県甲府市の常磐ホテルで開催されます。