2015年9月2日の第63期王座戦第1局は、羽生善治王座が挑戦者・佐藤天彦八段に勝利。
今期20勝4敗(.833)の高勝率を誇り絶好調だった佐藤天彦八段でしたが、通算22期王座に座る羽生王座はやはり別格でした。
詳しい棋譜は王座戦中継サイトでご覧ください。
(記事リリース当初、先手と後手が逆になっていた箇所がありました。お詫びいたします。コメント欄を参照下さい)
戦型は横歩取りに
注目された佐藤天彦八段の衣装。(右下。クリックで開きます)。または中継ブログで御覧ください。
王座戦五番勝負が開幕しました。注目の戦型は横歩取り。天彦八段が得意戦法で初陣を飾るか、羽生王座が跳ね返すか、早くもシリーズの流れを決定付ける一番になりそうです。(渡部) pic.twitter.com/LVQyZkU5Da
— 週刊将棋 (@weekly_shogi) 2015, 9月 2
白い和服からにじみ出る貴族感。
振り駒で羽生王座が先手となり、戦型は佐藤天彦八段が得意とする横歩取りに。佐藤八段の後手横歩取りは今期10戦全勝(でも実は羽生王座も横歩取り得意)。
29手目。羽生王座は珍しい▲1七桂。棋譜コメントによると前例はわずか1局。
これは用意の一手だと思います。佐藤八段得意の横歩取りを受けて立つ王座。
しかし意表(?)の一手にも動じず攻めの主導権を握る後手。
佐藤天彦八段はこれが初のタイトル戦。度々記録係に「一手に何分使ったか」を確認。
中継ブログによれば、緊張もあったようです。
受ける先手
後手の攻めに対し、先手が受ける展開に。
馬を作り中央に引きつけ受ける。後手の攻めが細くなる。そして69手目▲5八歩。
これで後手の攻めが切れるか・・・?しかし後手がひねり出す。△7六歩。
取れる駒を取らず、別の駒を足す一手。
ニコニコ生放送での先崎学九段の解説によれば、羽生王座はこの△7六歩を読んでいたかった可能性があるとのこと。これは後手にもチャンスがあるか。
(感想戦で、羽生王座はこの局面について「金で取ろうかと思った」とも話していました。本譜は▲5七歩。少し時間をかけて検討されましたが、最後は「わかんないっすね」ということに)
頭を抱え、水を飲み、リップクリームを取り出す
しかしやはり後手の攻めは細かったようで、先手玉は美濃囲いのような囲いの中に早逃げして安全に。
このあたり以降、先崎九段は先手の優勢~勝勢の形勢判断となっていきました。
97手目、▲2四飛成。後手にとっては辛い合駒請求(先崎九段によると、合駒を角にするか金にするか考える気もしないような局面らしい)。
佐藤天彦八段は、頭を深く深く抱えていました。棋士がタイトル戦であれほど頭を抱えるのは珍しいのでは。トレードマークのミディアムな長さの髪の毛が、遊ぶ。絵になる。
最後は▲6六金。
佐藤天彦八段は、タイトル戦の対局場では見慣れないスティック状のモノ・・・リップクリームを取り出しひと塗り。おそらく夕食休憩以来のリップクリーム。夏のタイトル戦。エアコンの冷風で唇が乾く。終局が近い。記者が来て喋ったとたんに唇が割れたら嫌だ。水も飲んだし、トイレも行った。
残り1分、記録係が50秒を読んだところで投了。
最終盤まで行われた感想戦
終局後すぐに、羽生王座も新たにペットボトル(水)を開け、優雅にコップに注いでいました。勝利の水。
感想戦は23時15分頃まで。最終盤まで行われたので、最後まで難しかったのだと思います。打ち上げは11時半からこの対局場がある横浜ロイヤルパークホテルの70階「レインボー」で・・・。
王座通算22期の羽生王座に、若くて勢いがあって異常な勝率を誇る佐藤天彦八段が挑んだ一戦。しかも両者得意の横歩取り。
衣装もくっきりと色が分かれていましたし、本当に絵になる二人。見応えがありました。これは今後も期待できるシリーズになりそう。
第63期王座戦第2局は、9月17日、ウェスティンホテル大阪で行われます。
コメント
管理人です。
記事リリース当初、一部「先手」と「後手」の表記が逆になっていた箇所がありました。お詫びし、訂正致します。(文脈的には、読者の勘違いをもよおすようなものではなく、明らかに間違いだとわかる箇所でしたが、私の不注意により間違えてしまいました。改めてお詫びし、訂正いたします。)