2015年3月26・27日に行われた第64期王将戦7番勝負第7局は、振り駒で先手となった郷田真隆九段が、渡辺明王将を下しました。これでこのシリーズのスコアは(王将からみて)3勝4敗に。
この結果、渡辺明王将は防衛に失敗。郷田真隆新王将の誕生となりました。
郷田真隆九段は、2013年に渡辺竜王(当時)に棋王を奪われて以来のタイトル保持。2014年(2013年度)はNHK杯(第64回)も獲得しており、羽生世代と呼ばれる現在40代半ばの世代の中でも、活躍が目立ってきました。
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戦型は相掛かり
戦型はこのシリーズ初めての相掛かりになりました。
これまでの流れから角換わりが予想されましたが、振り駒で先手を引いた郷田真隆九段が用意していた模様。
対する渡辺明王将は5一に金、6二に銀を配する中原囲いに。一手一手に時間がかかる、ゆっくりとした進行となりました。
長考の郷田真隆九段
21手目、角の頭の歩を飛車で交換された直後に、相手の飛車の頭に歩を打つという当たり前に見える手で、郷田九段は1時間近い長考。
序盤でも、当然の手でも長考するのが郷田九段のスタイルともいえますが、今シリーズでは特にその長考が目立ったような気がします。時間の使い方が渡辺明王将や、糸谷哲郎竜王とは対照的。
ただし、本局では郷田九段だけでなはく、封じ手前後から2日目にかけてお互いに長考を繰り返しました。
仕掛けた郷田九段
序盤は自陣近くの6六に角を打つなど、受けに回るかと思われた郷田九段ですが、2日目に入り1筋から仕掛ける展開に。
49手目▲1五歩を突き△同歩と取らせ、その裏に▲1三歩を打ち△同香と取らせ、さらに▲1二歩を打ちと金を作りを目指しました。
△5三角から流れが急に
それを見た渡辺明王将は自陣から敵陣を睨む△5三角(54手目)を打ちました。
しかし郷田九段はそれを無視して▲1一歩成とと金作り。一方の渡辺王将も△8六角と打ったばかりの角を切り攻め合いとなりました。
この辺りが岐路だったようで、この後の急な流れの中で先手が良くなっていった模様です。
後手玉を挟撃
先手の郷田九段は、前述の端からのと金攻めに加え、中央からの攻めを見せ後手玉を挟撃。
後手の渡辺王将も先手玉の左方面から迫りましたが、及びませんでした。ニコニコ生放送での富岡英作八段の解説によれば、後手の88手目の6七馬が敗着となったとのこと。このあたりで控室の検討も打ち切られました。
郷田真隆王将が誕生
先手の99手目を見て渡辺王将が投了。
ここに郷田真隆王将が誕生しました。王将のタイトル獲得は自身初。前述のとおり2013年に失った棋王以来のタイトルとなります。通算タイトル獲得数は5期。
一方、渡辺明棋王は、2期在位した王将を奪われ棋王のみの一冠に後退(今月、羽生善治名人相手に防衛したばかり)。
何年も前から言われている「羽生世代」からの世代交代どころか、今年はNHK杯も森内俊之九段が獲っていますし、朝日杯将棋オープン戦は羽生名人が獲っていますし、いまだこの世代が健在であることが示される結果に。
これにより将棋界の7大タイトルは、羽生善治名人が王位、王座、棋聖をあわせた四冠、その他の3つを糸谷哲郎竜王、渡辺明棋王、郷田真隆王将が分け合う構図となりました。