振り飛車の代表的な囲いである「美濃囲い」。
この美濃囲いはとても発展性のある囲いで、お手軽な「片美濃囲い」から「本美濃囲い」、上部を厚くした「高美濃囲い」と、戦いの状況に応じて囲いを変化させることができます。
その美濃囲いのバリエーションの1つとして、「大山美濃」や「ちょんまげ美濃」と呼ばれる形があります。「ちょんまげ美濃」は2015年11月19・20日の第28期竜王戦第4局でも出てきた形。
この記事では、「大山美濃」「ちょんまげ美濃」について説明した後、もう一つの「大山美濃」についてもご説明したいと思います。
大山美濃
まず基本的な片美濃囲いの形は以下。
3八銀と4九金が連結していて、お手軽に囲えてそこそこ堅い。
次に大山美濃について。あまりメジャーな囲いではなく、一部でしか言われていないようですが、以下の様な形を言うようです。
上図は、戸辺誠六段のブログ記事(対小林(裕)六段戦)を参考にさせていただきました。
3七に銀がいるのが特徴。大山美濃の「大山」とは、もちろん大山康晴十五世名人のこと。大山名人が得意とされていたそうです。
これが普通の「大山美濃」です。
ちょんまげ美濃
次に「ちょんまげ美濃」の形を説明します。以下です。
2六の歩が突いてあるのがポイント。この歩が、玉の頭の上のちょんまげのような形に見えます。陽動振り飛車(居飛車と見せかけておいて、振り飛車にすること)などで出てくる形のようです。
歩が2六にあることは、守りとしてはまったく機能していないどころか、むしろ弱点になってしまっています。
第28期竜王戦第4局(▲糸谷哲郎竜王vs△渡辺明棋王)では、序盤から力戦模様となり、先手の糸谷竜王が結果的にちょんまげ美濃の形になりました。
しかし、やはりこのちょんまげの隙を突かれる形に。
ちょんまげが仇となり、糸谷竜王は98手で敗れました。詳しい棋譜は竜王戦中継サイトで御覧ください。
この記事の本題はこれからです。
もう一つの大山美濃
これまで、大山美濃、ちょんまげ美濃についてご説明しました。ところで、もう一つの「大山美濃」があるのをご存知でしょうか。
竜王戦第4局のニコニコ生放送で、解説の森下卓九段が教えてくれました。聞き手は貞升南女流初段です。局面を再掲します。
森下九段「この歩(2六歩)が突いてあるのが、私がアマチュアの頃に読んだ本にあったんですけど、ちょんまげ美濃っていうらしいです」
貞升女流「へー! ちょんまげ美濃! 初めて聞きました」
森下九段「これ(2六の歩)がちょんまげ。あまりメジャーじゃない将棋の本だったと思いますけど、それに書いてありました」
貞升女流「あっ、そうですか」
森下九段「それで、米長先生(米長邦雄永世棋聖)に、そのちょんまげ美濃の話をしましたら、『おお、そうか。じゃあ君は大山美濃って知っているか?』って言われたんですよ」
貞升女流「はい」
森下九段「『大山美濃? なんですかそれは?』って言ったら、あの、この(2六の)歩がないことなんだそうです」
貞升女流「あは、あは、あははははは、あはは(笑)」
森下九段「米長先生がおっしゃってました。25年ぐらい前、もっと前かもしれないですけどね。私も笑いをこらえるのに必死でした。米長先生、天才ですね」
貞升女流「はい、いろいろ、センスが、面白いですね」
森下九段「まだ大山先生もご存命の時だったですからね」
この「大山美濃」の意味がわからない方は、「大山康晴」で画像検索してみてください。晩年の画像の方がいいかもしれません。それでもわからない方は、お手数ですがお問い合わせ下さい。
コメント
木村美濃まだかなー?
木村美濃はあるようですね。3八金、4七銀の形をいうようです。木村義雄十四世名人が由来です。