日本将棋連盟モバイルの「コラム」欄では、毎週木曜日、記者が棋士や女流棋士にインタビューをしています。
このインタビューを担当されているのが野辺記者。
そしてこの野辺記者のインタビュー(質問)には定跡があり、毎週、どんな棋士、女流棋士に対してもほとんど同じ質問をしているのが気になりすぎるのでご紹介します。
おことわり:この記事は多少マニアックであり、理解し難い部分があるかもしれません。テーマは「定跡」ですが、盤上の定跡ではありません。
質問定跡
野辺記者の質問は以下の様なものです。もう嫌というほどこの質問を見た人もいると思います。
・ライバル、または目標にしている人物はいますか?
・対談してみたい有名人、または出演してみたいテレビは?
・馴染みの店を教えて下さい
・最近興味のあること、もしくはハマっていることは?
・故郷について教えて下さい
・どうやって将棋が強くなりましたか?
・休日の過ごし方を教えて下さい
・ストレス発散法を教えて下さい
・恋愛(結婚)するなら将棋を知っている人がいい?知らない人がいい?
これを、誰に対してもほとんど同じように質問しています。多少取捨選択があるのですが、特に最初と最後の質問はほぼ毎回。
一番戸惑うのは、最後の恋愛や結婚の質問。野辺記者は、相手が既婚者であるか未婚者であるかにかかわらず、かまわず毎回ぶつけています。
奇妙な違い
これだけ見ると、上記の質問をコピペして毎週使いまわしているのか、と思うかもしれませんが、そうではないのです。
例えば、2015年5月14日の村田顕弘五段に対するインタビューでは、最初の質問が「ライバルはいますか?」になっていますし、5月7日の青嶋未来四段に対するインタビューではいつも前半にあるはずの「出演してみたいテレビは?」が後半にあります。
あと質問の文言もなぜか少しずつ違う時があります。コピペではないのか、それとも「コピペしている感」を出さないための工夫なのか。
阿久津主税八段「人によって変えましょうよ」
そんな「質問定跡」ともいえるパターンを繰り返す野辺記者。この定跡の評価は皆様にお任せしますが、5月28日にはインタビューを受けた阿久津主税がこのように提案(忠告?)しています。インタビューの冒頭に会話が掲載されています。
野辺「連日たくさんインタビューを受けられてる(おそらく電王戦FINAL関連のもの)と思いますが、たまにはゆるいインタビューはいかがですか?」
阿久津「いいっすよ。いつも定型文のあのインタビューですよね。質問って変えないんですか?人によって変えましょうよ」
「阿久津八段!!よく言ってくれた!!」と思った人もいるかもしれません。逆に「変わらないのがいいのに!」と思った人もいるかもしれません。
ただ、この阿久津八段の言葉にも関わらず、その直後には野辺記者から「ライバル、または目標にしている人物はいますか?」という質問がされています。
新鮮な潤記者のインタビュー
これまでは毎週、野辺記者がインタビューを担当していたのですが、2015年6月からは隔週で潤記者(関西の棋士・女流棋士を担当)が担当しています。
阿久津八段のインタビューの翌週(6月4日)は潤記者による初めてのインタビュー。浦野真彦八段へのインタビューでしたが、これが異常なほど新鮮に思えたのは私だけではないはず。
そしてさらにその翌週(6月11日)。再び野辺記者が担当する塚田恵梨花女流2級へのインタビュー。もしかしたら、阿久津八段の提案を受けて、質問内容が変わっているかもしれない。そんな期待もありました。
変わらない質問
塚田恵梨花女流への質問は以下のとおり。
・ライバル、または目標にしている人物はいますか?
・好きな有名人は?
・馴染みの店を教えて下さい
・ストレス発散法を教えて下さい
・恋愛(結婚)するなら将棋を知っている人がいい?知らない人がいい?
・お父さんに一言お願いします
ほとんど変わってない!!阿久津八段に何を言われようが、定跡は健在。
なお、お父さんとは師匠でもある塚田泰明九段です。
変わらない定跡
やはり「変わらない良さ」があるのかも知れません。もし質問を変えてしまったら「なんであの質問しないんだ」と読者からクレームがあるのかも。
しかし「もうさすがに誰にでも同じ質問はやめようよ」と思う方もいるかもしれません。日本将棋連盟モバイルでは、誰にインタビューしてほしいかや、その質問内容について要望をメールで受け付けているようですので、気が向いたら送ってみてはいかがでしょうか。
m-reader@jsamobile.jp
私(管理人)も何か送ってみたいのですが、あの「定跡」を楽しみにしている人がいるかもしれないと思うと、「そろそろ質問を変えませんか」と送るのを躊躇しています。
将棋界は定跡が好き?
この記事を書いていて思い出したのは、NHK杯テレビ将棋トーナメントでの清水市代女流六段の冒頭の挨拶。
あの挨拶も、定跡化されています。
1「みなさまこんにちは」・・・みなさま
2-a「ごきげんいかがでしょうか」・・・ゴキゲン
2-b「いかがお過ごしでしょうか」・・・お過ごし3「司会の清水市代です」・・・司会清水
4「日曜のひととき」・・・日曜
5-a「究極の」・・・究極
5-b「研ぎ澄まされた」・・・研ぎ
5-c「選び抜かれた」・・・選び
5-d「(なし)」・・・(なし)6-a「好手妙手の数々を」・・・好手妙手
6-b「読みと技の数々を」・・・読みと技7「お楽しみ下さい」・・・お楽しみ
NHK杯の清水市代女流の冒頭挨拶はアドリブなのか。意外と少ない「ごきげんいかが」などセリフをパターン化
私が上記の清水女流の記事を書いたのは2015年4月5日の放送を観てから。あれ以来、直近の放送(6月7日)まですべて定跡通りに進行しています。
あと将棋界で有名な定跡といえば森内俊之九段の「カレー定跡」(タイトル戦の2日目の昼はカレーを注文する)。森内九段の著書「覆す力」によれば、自分ではカレー定跡をあまり意識していなかったが、ファンの間ですっかり話題になってしまったことにより、
こうなってしまうと私としてもカレー以外のメニューを選びにくくなる
と、自らカレー縛りをかけていたことを告白しています。
まとめ
こう考えてみますと、野辺記者の質問にしても清水女流の挨拶にしても、森内九段と同じように、定着してしまった以上別のパターンを選びにくくなっている可能性もあります。
果たして今後「新手」は出るのか。
当サイトとしましても、見守っていきたいと思います。
以上、マニアック過ぎて自分でも途中で何書いているかわからなくなってきて、しばらく放置していた記事を、最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメント
棋士個人の「人となり」には全く興味がないので……
コメントありがとうございます。
お気持ちはよくわかります。好きなスポーツ選手、バンド、俳優・女優、お笑い芸人、小説家、芸術家、なんでもそうですが、そのプレーや作品が好きなのであって、その人となりには興味ない場合も多いと思います。私も殆どの場合そうなので。ただ、将棋の場合は私の棋力が低いということもありますが、けっこう人となりも見てしまいます。
コメントありがとうございます。