将棋電王戦のテーマは「テクノロジーの進化を加速させ、人の未来へつなぐ」ですが、そのテクノロジーの進化は何も将棋ソフトや「電王手さん」ばかりではありません。
NTTが開発した音声認識システム「VoiceRex」の将棋向けカスタムもそのひとつ。
このシステムは、2014年末の電王戦リベンジマッチで森下卓九段のボヤキをテキスト化して大変好評を博しました。
NTTの担当者によれば、このシステムは元々の「VoiceRex」を電王戦リベンジマッチに向けて将棋向けにカスタム(将棋用語などを認識できるように)し、さらに電王戦FINALに向けて改良を加えたそうです。
藤田綾女流がお試し
2015年3月15日、電王戦FINAL第1局においてこのVoiceRexはニコニコ生放送の中継内で「現地からの声」として使われました。片上大輔理事、先崎学九段、永瀬拓矢六段といった現地の方々が言った「声」の情報をテキストに変換して伝えてくれました。
さらに、現地レポーターの藤田綾女流初段がこの「VoiceRex」を試してみることに。
藤田女流がマイクに向かって「藤田綾です」としゃべると、NTTの担当者が見ているPCのモニターには「これ藤田綾です」「藤田綾です」「藤田やです」などといった変換候補が並びました。そこからこの担当者が適切な候補を選び、「現地からの声」として発信しているとのことでした。
藤田女流の「夕食は何を召し上がられましたか」といった声も正確にテキストに変換し、その性能を見せつけていました。
ダジャレはどうなのか
その様子を見たニコファーレ解説の木村一基八段は「何かダジャレ言ってほしいなぁ」と、豊川孝弘七段が得意とする将棋用語を絡めたダジャレを言うように要求。
藤田女流はNTTの担当者に「対応されていますか?」と聞きましたが、担当者は「えっと、やったっぽいんですが、自信はありませんがちょっとやってみていただけると」と自信なさげに返答。
そして藤田女流は視聴者のコメントの中から「両取りヘップバーン」を採用し、マイクに向かって話しかけました。
両取りヘップバーンが・・・
もちろん、この「両取りヘップバーン」は豊川孝弘七段の持ちネタ。2つの駒を狙う「両取り」の手と、「オードリー・ヘップバーン」をかけた極上のダジャレです。
藤田女流はマイクに「両取りヘップバーン」としゃべったあと、NTT担当者のPC画面を見てなにやら笑い出しました。そして
「両取りヘップバーンって言ったんですけど・・・ねおどりヘップバーンになりました・・・」
と、肩を落としてコメントしました。そしてこれは現地の声としてツイートされました。
藤田綾女流初段:ねおどりヘップバーン #電王戦 #denousen
— 電王戦FINAL現地からの声 (@denou_ntt) 2015, 3月 14
ねおどりヘップバーン
担当者のPC画面をよく見てみると、「ねおどりヘップバーン」の他、以下の候補があったことがわかりました。
「ね踊りヘップバーン」
「おどりヘップバーン」
「でおどりヘップバーン」
「ておどりヘップバーン」
他にもありましたが割愛します。
とにかく、「ねおどりヘップバーン」というなんともいえない語感には衝撃が走りました。
ニコニコユーザーらはこぞって「寝踊りwwwwwww」などとコメントしました。
寝踊りヘップバーン
藤田女流が寝ながら踊っている姿を想像したニコニコ生放送ユーザーが何万人といたはずです。
藤田女流は、この変換結果について
「惜しかったです」
と無念のコメント。木村一基八段は「惜しかった?!!」と、藤田女流のコメントに疑問を呈していました。
これからの課題
NTTの担当者は、この誤変換について「どうしても、人間が普段しゃべる言葉と違って、ダジャレの場合ですとちょっと、普段しゃべっていることとはちょっと違うしゃべり方になってしまいますので。どうしてもちょっと弱くなってしまうというのがまだまだ課題です」と認めていました。
この「課題です」という言葉はいろいろ便利な言葉ですが、真摯そうなNTTの担当者の言葉でしたから、次回は豊川孝弘七段のオヤジギャグレパートリーを搭載した「VoiceRex」を期待してやみません。
なお、上記場面の動画はニコニコ生放送のタイムシフトで御覧ください。開始から8時間16分あたりからです。
以上、ありがとうごいました。