2015年3月16日に行われた第73期名人戦・順位戦A級・挑戦者決定プレーオフ(決勝)は、終局時刻が深夜25時15分をまわるという熱戦の結果、行方尚史八段が久保利明九段を破りました。
これにより、広瀬章人八段、久保利明九段、渡辺明二冠、そして行方尚史八段による23年ぶりの4人プレーオフは、4人のなかで順位が一番高く決勝戦で登場した行方尚史八段が挑戦者となりました。
一方、ここまで2連勝して決勝まで進んできた久保利明九段でしたが、最後に力尽きました。
詳しい棋譜は、名人戦棋譜速報などでご覧ください。
プレーオフ結果
1回戦 △久保利明九段VS▲広瀬章人八段 久保九段の勝ち
2回戦 △渡辺明二冠VS▲久保利明九段 久保九段の勝ち
挑戦者決定戦 △行方尚史八段VS久保利明九段 行方八段の勝ち、名人に挑戦へ
相振り飛車に
挑戦者決定をかけた行方八段と久保九段の一戦は、先手の久保九段の三間飛車に対し、行方八段が向かい飛車を選択。
相振り飛車となりました。
ここまで両者は11勝11敗という対戦成績。そのうち相振り飛車が2回あり、今回で3回目となりました。
囲いは久保九段が金無双、行方八段は美濃囲いに。
久保九段が仕掛ける
仕掛けたのは久保九段。9筋の端を絡めて後手玉に迫りました。後手玉は美濃囲いを脱出し中央へ。
手数でいうと80手目付近。このあたりで先手の攻めが停滞し始めました。
行方八段、反撃へ
100手を過ぎたころから、攻守が逆転しつつありました。そしてついに106手目、△2六歩と先手の金無双を2筋から攻めました。ニコニコ生放送で解説していた高橋道雄九段も「行方八段が今日はじめて攻めの手をやりました」と発言。
そしてすぐに金無双が崩壊するような手順も見えてきました。
包囲される金無双
先手・久保九段の金無双は、上部から後手の2筋の垂れ歩、横からも後手の下段飛車が迫り包囲されました。
130手を過ぎるころには先手が敗色濃厚に。
それでも久保九段は指し続け、結局150手、深夜25時15分の投了となりました。
久保九段にとっては、順位戦最終局で勝っていればそのまま名人に挑戦というチャンスを逸し、それでもプレーオフを2連勝で勝ちあがり、しかしここでまたしてもあと1勝というところで敗退。
来期、B級1組以上唯一の振り飛車党となる久保九段。その戦いには今後も多くの振り飛車党が熱い視線を送るものと思われます。
行方尚史八段の勝因は
ところで、ニコ生解説の高橋道雄九段は行方尚史八段の最近の活躍について「いままでね、すごく才能はあったんですよ。才能あふれる将棋で。若手の時からね。才能あふれる人って時にちょっと安定していない。精神的に安定していない。結婚されて、生活が安定しだしたのか、才能がそのまま出るようになった」と分析していました。
行方八段は2011年末に結婚。それ以来、2012年度の順位戦ではA級復帰を決め(2013年1月)、2013年5月には自身初のタイトル戦である王位戦に登場。同年度はA級順位戦を2位の成績で終え、そして今回の名人挑戦。順調すぎます。
23年前のプレーオフを制した高橋道雄九段は、行方八段について「名人戦でもいい戦いを期待したい」と述べました。
行方尚史八段が羽生善治名人に挑戦する第73期名人戦は、4月8・9日に第1局が行われます。