続・もし電王戦に出場したら?行方尚史八段「トレーナーをつけて訓練する」郷田真隆王将「自分は向いていないが準備はしたい」

以下の記事では「もし電王戦に出場したらどうする?」という質問に対する鈴木大介八段や森内俊之九段の回答をご紹介しました。

もし電王戦に出場したら?鈴木大介八段「勉強せず自分の力で戦う」森内俊之九段「アンチコンピュータ戦略が必要になる」など6棋士回答

鈴木八段、森内九段ともに第1期叡王戦予選を勝ち抜き本戦進出を果たしています。叡王戦で優勝すればコンピュータとの対局である「第1期電王戦」に出場します。

他の棋士の意見も聞きたいなと思っていたところ、重大なことに気付きました。

雑誌「将棋世界」2015年11月号の「イメージと読みの将棋観」のコーナーで、同じような質問が他の叡王戦本戦出場者に対してもされていたのです。

この記事では「イメ読み」の中から、叡王戦本戦出場者の回答をご紹介します。

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郷田真隆王将の場合

イメ読みのコーナーを担当する各棋士に「コンピュータとの対戦はどうする?」という質問がされました。

まずは本戦出場者の中で唯一のタイトルホルダーである郷田真隆王将(九段)の回答。

なんともいえない。米長先生(米長邦雄永世棋聖)は「コンピュータとの対戦は対人間とは全く違う。相手のことを知らないと勝てない」とおっしゃっていましたが、そのとおりだと思う。(中略)自分がコンピュータに向いているかと言われると向いていないと思います。もちろん、対戦することになれば、できるだけ準備はしたいと思います。

また郷田王将は、コンピュータと戦うために修行を積んできたわけではないので、対人間と同じ気持ち(真剣勝負)になれるかと言われればそれは難しい、とも述べています。

行方尚史八段の場合

次に行方尚史八段の電王戦展望。

まず僕らの世代が出ていったら厳しいと思う。(中略)実力をぶつけ合うのではなく、相手の弱点を徹底的に突かなければならない。(中略)万一僕が優勝したら、誰か優秀なトレーナーをつけて訓練します。そういう勝負になってしまったと思う。

行方八段は、コンピュータとの戦いが以前とは変質したと言い、もう少し前にやってみたかったとも答えています。そして2年前に三浦弘行九段が負けたのを見てビックリしたと言い「どこが分水嶺だったんだよ」という思いがある、とも述べています。

行方八段は1973年生まれで現在41歳。羽生善治名人をはじめとする「羽生世代」より数年年下で、三浦九段や鈴木八段と同じぐらいの年代です。この年代では厳しい、という見解は、以下の鈴木八段と同じです。

鈴木大介八段の場合

鈴木八段は前回の記事でもご紹介しましたが、このイメ読みでも電王戦の展望を述べています。

40代の棋士が対応するのは難しいと思う。将棋では負けないでしょうが、コンピュータとの対戦に慣れていないのは大きい。20代の若手でコンピュータとの対戦を当たり前のようにやっている棋士の方が有利です。

当サイトでは以前「コンピュータソフトと3万局指してアンチコンピュータ戦略を極めたアマ棋士の話」をご紹介しました。

鈴木八段の考えによれば、対コンピュータ戦は慣れの問題が大きくて、それは実力とは異なるものである、ということだと思います。鈴木八段の「将棋では負けない」という言葉は、何度か聞いています。

また鈴木八段は、40代でも3、4年取り組めばコンピュータとの対戦をこなせる、最低1年取り組めば現状のコンピュータに勝てると述べています。

山崎隆之八段の場合

山崎隆之八段には電王戦の勝敗予想のみが質問されていて、自分が出場したら? という質問の回答はありませんでした。

勝敗予想こちら。

細かいルールを聞いていないので、簡単には言えませんが、誰が対戦しても大変なことだけは確かでしょう。

やや味気ない答えですが、将棋は独創的なのでコンピュータと対戦したら面白そうではあります。

永瀬拓矢六段、木村一基八段

ちなみに、予選で敗退した永瀬拓矢六段の電王戦の勝敗予想も掲載されています。

(棋士から見て)よくて1勝1敗だと思いますが、先手番ではプロに勝ってほしいです。

永瀬拓矢六段は電王戦FINALでコンピュータソフトSeleneに勝利。その永瀬六段をもってしても「よくて1勝1敗」と厳しくみています。

同じく予選敗退の木村一基八段は「電王戦に出場したらどうするか?」と聞かれて「叡王戦で優勝したら考えます」と述べています。

なお、この記事の内容は「イメ読み」のごく一部です。これより詳しい内容は将棋世界11月号でぜひご覧ください。

もし電王戦に出場したら?

叡王戦本戦には16人が出場(こちらの記事に詳細)。

前回の記事とあわせて、森内九段、郷田王将、行方八段は対コンピュータ戦へ「準備する派」。阿部光瑠五段、青嶋未来四段、村山慈明七段も準備すると思います。豊島将之七段も以前電王戦に出場した時のことを考えれば相当準備して臨むと思います。

宮田敦史六段は「出場が決まってから考える派」。

鈴木大介八段は「勉強しない派」。

新しいテーマに?

面白いのは行方八段の「優秀なトレーナーをつけて訓練する」という言葉。電王戦FINALの時も各棋士に対して講習なり助言なりが行われたはずですが、それを超える準備体制で臨むということでしょうか。

チェスの世界では、各プレイヤーに優秀なコーチがいるのは当たり前らしいです(羽生善治×ガルリ・カスパロフ対談より)。

またコンピュータチェスとの対局に臨む時には研究チームが結成され、その中には技術者(プログラマ)も加わるという話もあります(こちらの記事に少しだけ記載)。

それは従来の将棋とは違う何かなのかもしれませんが、人々が電王戦にみる「人間とコンピュータの共存共栄」を考えた時には、重大なテーマであり、社会的な関心事になるかもしれません。人工知能のセキュリティシステムvs突破を試みる人間の模擬実験、みたいな話として。

さて、第1期叡王戦本戦は10月下旬に開幕、第1期電王戦は来春開催予定です。

この記事によって、皆様がより楽しく叡王戦、電王戦を観戦できましたら幸いです。

以上、ありがとうございました。

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コメント

  1. 長さん より:

    こちらもたいへん参考になりました。
    御紹介。どうもありがとうございました。少なくとも
    一部のプロ棋士が、「40歳代でソフトに気遅れをしている」のには驚かされました。
    ”老いた”というよりは、人間と将棋やりすぎなんでしょうね。単なる不慣れでは?

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      不慣れはあると思いますね。むしろ不慣れがすべてというか。慣れたからといって勝てるかどうかはわかりませんが、少なくとも不慣れなので厳しいということなんじゃないかと思います。

      お役に立ちましたら幸いです。詳細は将棋世界をご覧ください。

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