現在多くの棋士、女流棋士がツイッターで情報発信をされています。
使い方は様々で、対局のことやイベントの告知、日常にあった出来事など。気軽に使える分、自分の思いを伝えようと思うと140文字という短い文章では、意外と難しいものだと思います。
おことわり:この記事は私(管理人)の偏った見解に基づくものです。
独特のツイートスタイル
そんな中、中村修九段のツイートは独自路線を突っ走っていて、読者を惹きつけるものがあります。そしてその裏側には140文字では表せないメッセージが見えるのです。
中村九段がツイッターを開始したのは2014年の5月。「始めました」ツイートに続く2つ目のツイートがこれ。鳩森神社とは、東京・将棋会館の隣にある神社です。
先日、対局前に鳩森神社でお参りをしたら、歩が5枚出ました.嬉しかった。完敗したけど。
— 中村修 (@aromaosamu) 2014, 5月 19
お参りした結果、振り駒で歩が5枚出て、一瞬、嬉しかった。しかし結果は完敗。
この一言に、人生の教訓めいたものを感じます。
神に頼れば一時的に運気は上がったような気分になるが、現実はそうではない。
あなたは実力でその場所にいるのか、一時的な運なのではないか。運が良くても浮かれてはいけない。そのような自分への戒め、また弟子や若手棋士へのメッセージを感じます。
独特の感想を述べる
次にご紹介するのはこのツイート。
最近、2週続けて渡辺さんの就位式に出席しました。ふと思ったのですが、そこで頂いたものをどのように管理しているのだろうかと。まあ、賞金については、銀行や奥様が管理されると思うので問題はありませんが、賞状やトロフィなどたくさん貰う人はどうするのかと。まあ、余計なお世話ですね。
— 中村修 (@aromaosamu) 2014, 5月 26
よく考えて下さい。
賞状やトロフィの管理といっても、飾りたい人は飾ればいいし、仕舞いたい人は仕舞えばいい。お金の管理に比べれば、それほど重大なことではないように思います。
そう考えると、「賞状やトロフィ」は何か別のことを意味する、なにかを暗示する表現だと考えることができます。
ひとつの解釈として、賞状やトロフィは栄誉の象徴です。若い渡辺明棋王が、この栄誉を生涯背負うことになる、その発言や言動は常に世間から注目される、活躍できなくなればかつての栄光といわれる。
多くの栄誉をどう自分の中で消化していくか。そういうことを暗に述べているのではないでしょうか。
深い、深すぎます。
謎の趣味を告白
次に、中村九段は謎の趣味を告白します。
最近、スーパーのレシートを集めています。777円とか、2222円などゾロ目ものですが。無意識に買い物をしてゾロ目になると、少し嬉しい気持ちになれます。逆に1112円などになると、少し残念かな。そういえば、昨日王位挑戦を決めた木村さんの棋士番号は222番、少し羨ましいですね。
— 中村修 (@aromaosamu) 2014, 5月 27
ゾロ目のレシートを集めている。よく考えて下さい。
小学生ならともかく、50過ぎの男性が、そんなことするはずがありません。
したがって、もちろんこれも、なにかの暗喩です。
「レシート」は将棋で言えば「棋譜」、「ゾロ目」は「何かの法則性によって整理されたもの」の象徴と読めます。
そういえば、中村九段は先日、以下の研究結果を発表しています。羽生善治名人の玉が、盤上で行ったことない地点に関する研究。とても棋力の向上には役に立つとは思えませんが、常識にとらわれないアプローチで、将棋の真理を発見しようという壮大な試みなのかもしれませんね。
羽生善治「王将」が旅したことがない盤上の地点10ヶ所を当てるクイズ
悲鳴をあげられる
そして最高傑作はこれ。
先日、駅で知り合いの女性に声をかけたら悲鳴をあげられてしまいました。
想定外の楽しいことが起こる街、京王線仙川。3月21日に将棋教室を行います。
詳しくは申し訳ありませんが、一つ前のツイートをご覧ください。初級者の方も歓迎いたします。
連絡をお待ちしております。
— 中村修 (@aromaosamu) 2015, 2月 14
これは暗喩ではありません。実際に悲鳴をあげられたのです。
「知り合いの女性」という書き方をしていますが・・・
ただの告知ではすまない
ツイッターではイベントや自分の対局の告知をする棋士、女流棋士の方も多いです。
中村九段は、そんな告知にも工夫を見せます。
四年前の順位戦最終局、途中から集中できなくなってしまった。気がつくと、裸足で外に出ていた。一手指す度にテレビの前にいた。対戦相手は盤上に集中していた。翌年、彼は昇級し私は落ちた。今年同じ日に順位戦最終局を迎える。いろいろな事を考える一日となると思うが、盤上に集中したいと強く思う。
— 中村修 (@aromaosamu) 2015, 3月 4
自分の対局の告知。その思いを、活き活きとした自虐を交えながら語っています。
なお4年前に負けたのは山崎隆之七段(当時)、そしてこの時は杉本昌隆七段に敗れています。
下のツイートはイベントの告知ですが、「磨けば光る」というのは自分自身を鼓舞し、そして中高年の将棋ファンへ向けたメッセージも込めています。
先日、昔頂いた優勝カップを31年ぶりに磨いてみました。当然ホコリだらけでしたが、
磨いているうちに光るようになるんですね。嬉しくなりました。
3月21日の将棋教室まだ募集しています。詳しくはすこし前のツイートをご覧ください。
— 中村修 (@aromaosamu) 2015, 3月 6
悲壮感
下のツイートからは逆に、なにか漂う悲壮感があります。
本日の羽生さんの対談は、勉強になりました。できれば、30年前に聞きたかったですね。
— 中村修 (@aromaosamu) 2015, 3月 21
さらにはこれ。
中村修、最後のお願いにやってまいりました。5月16日13時30分から、京王線仙川駅
徒歩5分、仙川劇場3階にて「将棋教室」を行います。当日受付も可能です。
どうかひとつ、よろしくお願いいたします。
— 中村修 (@aromaosamu) 2015, 5月 11
「最後のお願いにやって参りました」とは、よく選挙活動で耳にするフレーズです。
しかし将棋で「最後のお願い」というと、敗勢の局面で悪いとわかっていながら指す最後の勝負手、局面を紛らわす最後の一手、のような意味があります。
したがって、実に悲壮感あふれるツイートとなっています。タイトル2期の大棋士が、斜陽産業といわれる将棋を案じ、その普及のためにこれほど真剣になられるとは。
読み返したくなる
一つ一つが味わい深く、二度、三度と読みたくなる中村九段のツイート。
皆様も、何かに挫折して落ち込んだ時、人生の転機などに、もう一度読みなおしてみてはいかがでしょうか。
以上、ありがとうございました。