内藤國雄九段が相手に長考されると嫌な理由「人生の持ち時間が減るやないか」

2015年3月、75歳で、57年間の現役生活を終えた内藤國雄九段。

引退後はなにか活動されるのかなと思っていたところ、5月20日放送のNHKラジオ第1「午後のまりやーじゅ」にご出演され、1時間ほどお話をされていました。

ヒットした演歌「おゆき」のこと、大山康晴十五世名人の盤外戦術のこと、コンピュータ将棋のことなど、いろいろお話があって面白かったのですが、私(管理人)が特に心に残ったお話、名言と言ってもいい言葉をひとつだけご紹介したいと思います。

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将棋における時間の使い方

番組は、メインパーソナリティの山田まりやさん、水曜パーソナリティの風見しんごさん、内藤九段の3人で進行。中盤で、風見さんから「将棋では長い時間考えることがあるが、あれは何を考えていらっしゃるんですか?」と質問がありました。そこから「将棋と時間」の話に。

内藤九段「1時間以上考えてるのは、迷っている場合が多いんですよ。AかBしかないんだけども、どっちかなと。どっちでも自分が有利というときが困るんですよね。できるだけ早く勝ちたいですからね。で、迷うんですね」

風見「二者択一で一時間以上、ずっーと?」

内藤九段「2、3手選び出しましてね。他の手読まないんで。これかこれかこれ(3通り)しかない、っていう。そっから考える」

なるほど。そういうものなんですね。直感的に2、3手選んで、それを深く読むと。コンピュータ将棋ソフトの全幅探索とは正反対のアプローチで興味深い。

余談ですが内藤九段はこの番組でコンピュータ将棋について「昔は『無駄な手をいっぱい読んでいるから、人間に勝てるわけない』と思っていたけど、ところがなんぼアホな手読んでも1億手も読まれたらたまらんわけですわ。忘れへんでしょ」という話もされていました。

相手の長考はありがたい?

話を戻しまして。

内藤九段「問題は相手が考えている時なんです」

風見「待ってなきゃいけないわけですもんね」

内藤九段「昔は褒められたんですよ。ヘボ将棋の人が『相手が100分も考えているのに、よう盤の前で座っておれますなぁ。そこで感心します』言うんですわ。こちらとしては、褒めてもらいたいところはもっと別にあるんです。座っているだけのことなんで。それがこの歳、引退間際になった時に、あのヘボ将棋の人の言葉が『もっともだな』という気がしてきたんです」

若い頃は、盤の前で座っているだけで褒められた。その頃はそれを褒められても嬉しくなかったが、この歳になってわかるようになったという。

若い頃は大歓迎、しかし・・・

内藤九段「若い頃は相手が1時間、2時間と考えると、相手の持ち時間が減っていくでしょう。自分はそれに便乗して考えられますから。大長考は大歓迎やったんです。若い頃はね。それが70歳超えてきましたら、相手が60分、70分考え出したらね・・・」

そして名言が、出ました。

内藤九段「『相手はどうせ迷ってるだけ。相手の持ち時間は減るけども、自分の人生の残り時間も減るやないか』。そう思ってきたからね、なかなかじっと座ってるのがつらい

この名言に、山田まりやさんは「ふうあああああ!!!」と叫んで大笑い。風見さんも笑いながらも「なるほど」と感心していました。

1日が短くなった

内藤九段は、このラジオ番組で現在の自分について「少年時代の夢がほとんど叶って幸せですよ」とか「歩きながら考えることができなくなって、1日が短くなった」とかもお話されていました。

「歩きながら考えることができなくなった」のは、歩いている最中に考え事をすると、ぶつかったりつまずいたりして危険だからという理由。昔は歩きながら詰将棋を考えていたが、それができなくなったと。

歳をとるということ

歳をとるということは、複数のことを同時にこなすことが難しくなる。同じ時間でも内容が薄くなり、それで1日が短くなるということをお話されていました。

明るい関西弁でお話されていましたが、これは切ない話。

我々も、何十年も人生が残っていると思っていても、歳をとればとるほどに1日が短くなる。人生が短くなる。

「人生の持ち時間が減るやないか」と嘆く気持ちが、わかる気がしました。

内藤九段、いいお話をありがとうございました。

読者の皆様も、貴重な人生の残り時間を使って最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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