電王戦FINALに出場する永瀬拓矢六段が、この大一番で千日手に挑戦する可能性が浮上してきました。
これは、2015年3月10日に公開された「電王戦FINALへの道#72 永瀬拓矢最後のインタビュー」で、意味深なことを述べているためです。
勝ち負けではない方法がある
永瀬拓矢六段は、電王戦FINAL第2局でSeleneと対戦します。
このインタビューで「勝算はありますか?」と聞かれた永瀬六段は、「やればやるほどSeleneというソフトが強いとわかってきまして」と、弱気ともとれるコメント。
そして「団体戦で、個人の戦いではなく、絶対に負けられないので、負けないように戦いたいなと思っています」と述べました。
なるほど、「負けないように」ですか。
「負けないように」の意味
さらに永瀬六段は「勝てるかどうかは勝負事ですのでやってみなければわからない」と前置きした上で
「将棋というゲームは勝ち負けではない方法がありますので」
と意味深な笑みを浮かべて発言。そして
「それも視野に入れて、研究しています」
と述べました。
「勝ち負けではない方法」を「視野に入れて研究」。・・・これは!!
千日手、入玉・持将棋の「引き分け」ルールが存在
さてここで電王戦FINALのルールを確認してみましょう。
基本ルールはこのあたり。
5時間(チェスクロック方式)、使い切ると1分将棋。
あと手番とか立会人とかコンピュータのハードや休憩に関するルールも書かれています。
注目はPDFの方に書かれている「千日手」「持将棋」のルール。
16 時までに千日手が成立した場合、30 分休憩を入れた後に先手・後手を入れ換えて指し直し(中略)
16 時以降に成立した場合は引き分けとして、指し直しは行わない。
持将棋が成立した場合、指し直しか否かは、千日手の場合と同様とする。
さらに、「256手規則」というルールもあり、詳細については上記リンクから詳細ルールのPDFを見ていただければよいのですが、簡単に言うと
256 手目が指された時点で、対局は立会人によって止められる。(中略、立会人は)対局続行、引分けまたはどちらかの勝ちを裁定する
とのこと。
これは電王戦リベンジマッチでの判定勝ちの件の影響でしょうか。
つまり、この電王戦FINALには「引き分け」がルールとして存在するのです。
千日手名人の永瀬拓矢六段
永瀬六段といえば、先手番であっても千日手を嫌がらないことで知られ、実際千日手は異常に多く、2011年のNHK杯では千日手が2回が成立し2回指し直しています。これは前代未聞。
公式戦で初優勝した加古川青流戦でも決勝で千日手をしています。
上記の通り、16時以降に千日手が成立すれば引き分け。しかも永瀬拓矢六段は後手番ですから心理的になおさらやりやすい。
一方、コンピュータ(Selene)は先手番だから千日手を避ける、という発想にならないような気がします。単に評価値が高い手を指すだけかと思います。
コンピュータに通用するか
永瀬拓矢六段ならではの新発想。
たぶん最初から千日手を狙うのではなく、「ある局面、またはある手順になったら千日手が成立しやすい」ことをSeleneとの研究で発見し、状況によってはそれを実行するのではないかと思われます。
これは是非試してほしい。千日手になるかどうか対局前からワクワクする対局は初めてです。
3月21日(土曜日)、注目です。