管理人です。
先日、お問い合せ窓口から「40歳近くで将棋を始めて1年で初段だという管理人の勉強法を記事にして欲しい」とのお問い合わせがありました。しかし、これはこの方の勘違い(たぶんこの寄稿記事を読まれたのだと思います)で、私はこの条件に該当しません。そこで、寄稿を募りまして、少々条件は違いますが応じていただきました。
当サイトでは、今回のような寄稿を受けつけております(お問い合わせの「寄稿」の見出しを参照)。または短文でも「こんな勉強方法が効果あった」とお知らせいただけましたら、私の記事でご紹介しようと思います。よろしくお願いします。
みなさま、楽しく将棋を指していますか。
また寄稿させていただきます。「ひろ(@shogitarou36)」でございます。
今回は、初心者中年男性の棋力向上法についてです。
本当は、「将棋ワンストップ」管理人様に質問メールが来たそうなのですが、たぶんほとんどの初心者中年男性には参考にならないと思います。
なぜなら、
「将棋情報まとめサイトを管理し、毎日自ら記事を書き、おそらく仕事もガンガンできる雰囲気だし、なんか記事に関するやりとりも深夜・昼間問わずレスポンス早いし、一年で初段になったし、あとなんかたぶん超稼いでるわ」
って、そんな人の手法を実践しても、普通の中年男性に同じ効果は現れないでしょうから。
「効果には個人差があります」です。
もっとこう、「最近疲れがとれない。目もピント合わせが遅くなったし、新しいものがスッと頭に入ってきにくくなったぞ?」という、ドロっとした中年の皆さまのために、ドロっとした中年が記事を書くこととなりました。よろしくお願いいたします。
まず私の棋力等について簡単に説明いたしますと、私は現在40歳、ネット将棋1年数か月、対面将棋半年強、将棋教室で4級です。
つまり、弱いです。
まことに華やかなりし将棋普及
さて昨今、世は将棋普及華やかなりし、という具合でさまざまな策がとられています。
初心者女性のみの将棋教室「将棋乙女」、持ち運び便利、工夫沢山の「ねこまど盤」、爪の長い女性のための「ショコラショウギ」。
また、次世代育成を目的とした「青少年棋道奨励基金」の設立などなど……。
一方でもちろん、昔から学校には将棋部というものがあり、子供たちはそこで切磋琢磨しています。
ふむふむ、初心者女性向けや、子供向けの普及策が充実してきていますね……。
中年男性は!?(`;ω;´)
そこで私は言いたいのですよ。
「忘れていませんか?」
と。
「初心者中年男性を、忘れちゃいませんかねえ……」
と。
「立派な将棋部があって、プロを講師に呼んでるような会社に勤めてる中年男性ばかりじゃないんですがねえ……」
と。
「もっとぼくらを助けて!(`;ω;´)」
と!
でも、誰も助けてはくれないのです……。
ちょうどいま検索エンジン「bing」で「男性 将棋 初心者」で検索したら一番上に出てきたのが
「優遇策がたくさん! おすすめ「女子の将棋」 [将棋] All About」
でムキーとなりましたし。
まあ、大人ですから自分でやりましょうか……。
現在の私の将棋勉強法
私は、月に約二回、将棋教室に通っています。一回3時間ほど。
将棋ウォーズは一日三局。(課金がイヤなのではなく、だらしない性格なので制限をかけているだけです)
詰め将棋は、飯野健二先生の「実戦型詰め将棋1・3・5手」と浦野真彦先生の「3手詰めハンドブック2」を気が向いたときに。
同じく気が向いたときに、「将棋世界2015年4月号」の付録、及川先生の「初段 常識の手筋」をペラペラと。
棋譜並べは、やろうと決心して、ならべて、「なにが楽しいんだ!(`;ω;´)」と投げ出しました。
あと、本は総論的なものを何冊か買いました。
特定の戦法の本はほんの数冊です。
結果、一年以上勉強していても4級です。
私はなぜ力を求めるのか……
ここらでひとつ、「勉強が足りないから強くならないんだよ?」という事実から目をそむける(中年男性たるもの、スマートに現実ダメージを回避するのです)意味でも、根本にもどって考えてみましょう。
「私はなぜ強くなりたいのか」と。
私の場合は「将棋が好き」より「棋士のファン」の度合いが強いようです。
したがって強くなるのは「棋士の将棋をより味わうための知識が欲しいから」ということになります。
(もちろん単純に強くなりたいという気持ちもありますが)
そして、さまざまな本などで見た棋士の言葉に「初段から見える世界がちがってくる」というものがあります。ソースはすみません、いろいろです。
なので、結論は「棋士の将棋をより味わうため、初段になりたい」ということになります。
初心者中年男性諸君よ、あなたはなぜ強くなりたいのですか?
一方、このような見解もあります。
@shogitarou36 おっしゃる通りですね。内容をある程度理解するならアマ5級くらいがいいかもしれません。
楽しみかたはいろいろで、「この棋士おもしろい」や、「かっこいい囲いだ」、「王将がひとりで前進してる!」など内容を抜きにして楽しんでいただけるといいな、と思います。
— 西遊棋実行委員会 (@kansaishogi) 2015, 4月 5
これは、私が斎藤慎太郎先生に「将棋観戦をより楽しむために、ファンに求める棋力はどのくらいですか?」とツイッターでした質問へのご返信です。
(質問ツイート自体は「しまった。ファンに求める棋力なんて答えにくいに決まってる。マズい質問をしてしまった」と私が消してしまったのでありません。なのにそのあとでご返信いただいて、大変ありがたく感謝しております)
5級も一つの基準となるようです。
ドロッとした中年の私が4級になれたのですから、おそらく「将棋観戦を楽しむ」ために強くなりたいという中年男性なら、一年ダラダラやってればOKです。
……しかし斎藤先生、
「かっこいい囲いだ」、(中略)など内容を抜きにして楽しんでいただけるといいな、と思います。
……囲いの美しさが解る人は、それもう、ある程度強い人だと思いますよ……。
ともかく、自分がなぜ強くなりたいのか意識するのは重要な気がします。
将棋観戦を楽しむなら五級、初段が基準。
強さを求めるならそれ以上も。
目標によってやることが変わるのは当然です。
よし、初段になろう!
ここまで書いてきて、なんだか私もやる気が出てきました。
よし、初段になるんだ!いままでの気まぐれ練習な自分にサヨナラさ!
必読書「初段になるための将棋勉強法」
世の中には、本当に大変ありがたい本がありまして。
浦野先生が「初段になるための将棋勉強法」という本を出して下さっています。
税込1296円。218ページ。1ページあたり6円弱!安い!
これを実践すればだれでも初段になれる……実践すれば!
私は、たぶん、できない!あくまで参考にするだけ!
ですが、大変な名著です。お手にとって読まれることをお勧めします。
とくに167ページの統計は中年男性にとって心の支えになるでしょう。
統計はこう結論づけています
「毎日勉強して初段になるまでにかかった平均年数は4年」
四年かけていいのです。
さらに言えば、母集団の四分の一は10年以上かかっています。
じゃあ出来そうなことは何だ!?
以前、プロの先生にこんな質問をしました。
「棋譜並べが苦痛です。どうすればいいですか」と。
答えは「苦痛なものは続かないからやらなくてよいです。無理なく続くことをやるといいですよ」とのことでした。
「初段になるための将棋勉強法」も「毎日続ける」ことを強く推奨しています。
(非常に説得力のある解説がありますので、やはりお手に取ることをお勧めします)
どうも、毎日続けることが大事なようです。
ならばまず、毎日できることを見つけましょうか。
効率とか効果とか、そういうのはいったん置いといて、とにかく「毎日出来ること」。
逆に、それがどんな勉強方法であろうと「毎日続ける」に勝る効果はないと考えるべきでしょう。
私ならそうですね、ウォーズ三局と、詰め将棋数分なら毎日無理なくできるでしょう。
毎日出来ることを、効果的に!
「毎日」「ウォーズ三局と」「詰め将棋数分」をやる。
決めました。
……あれ?
決めました、っていうか、えええ……これならもうやってますよ。
もうやってて、そのうえで効果を求めたいわけです。
うーん困ったな…… はっ!(ひらめいた)
……なるほど、ここが出発点でしたか。
どうやら私は、「出発点に到達」したようです……!なんかかっこいい。
「なにを」より「どのように」
強くなるには、「何をする」よりも「どのようにする」が重要なようです。
仕事では当たり前ですが、将棋にもこの考えを応用すべきでした。
中年男性の特性「仕事力」を将棋にも使うべきでした。
中年男性が、がむしゃらに毎日何時間も将棋の勉強をするのは現実的ではありません。
また、記憶力等落ちてきているのに漫然と勉強しても翌朝にはタイムループのSFのようにキレイさっぱり忘れているでしょう。
さて、私は今までどんな勉強をしてきたのでしょう。
「ウォーズで勝った将棋を何度も見直して『この詰み……かっこいいなあ』と悦に入る」
「解けた詰め将棋を鼻で笑い、難しい詰め将棋は答え見て『ふーん』と次に行く」
ふむふむ……。
あかん!(`;ω;´)
……あかん!
文章にしたら、こんなにもはっきりクッキリと……あかん!
「効率」とか「強くなる」とか以前に、なんか……
「こんな人と仕事したくない」という感じなくらいであかん!(`;ω;´)
そのくせ
「もっとぼくらを助けて!(`;ω;´)」
とか言って、正気か!オイ正気か!
私の結論
以上の結果、私の練習法を以下のように決めました。
ウォーズは、負けた将棋をかならず見直す。
勝った将棋は置いておいて、負けた将棋で一つでも「これが相手の良い手」もしくは「これが自分の悪い手」を見つける。せめて見つけようとする。
棋譜が残るネット将棋の利点をきちんと利用します。
五手詰めを、答えから見る。何度も。ノルマは二問。
詰め将棋を答えから見るのは、「初段になるための将棋勉強法」でも推奨されている方法です。
そして、それならば3手詰めよりちょっとハードル上げてみます。
ハードル上がっても問題はありません。なにせ、最初から悩む気ゼロですから。
悩む気ゼロのかわりに、何度も繰り返して頭に叩き込む。
そして、たぶんこれ重要。「次の日も同じ問題をやる」。記憶定着のためです。
つまり、必ず複数問を並行して勉強することになるわけなので、ノルマは二問としました。
あなたの結論は?
里見香奈奨励会三段は、子供のころ高橋和女流に「どうしたらつよくなれますか」と訊いて「毎日詰め将棋を解きなさい」と言われたそうです。
そしてそれは、子供の集中力と吸収力を土台とし、里見少女の怒涛の熱意に乗って彼女を一流に押し上げつつあります。
しかし、我々中年男性は、それはムリです。
我々には彼女とは別の生活があります。
ならば、その生活の中で出来ることをやりましょう。
「できること」を、「大人の頭」によって「高効率できること」に仕上げましょう。
初心者中年男性の棋力向上法
以上をまとめますと、
1、いま、毎日している(もしくは無理なくできる)ことをリストアップ
2、それが効率的になるよう、知恵をしぼる(「初段になるための将棋勉強法」を参考にすると良いです)
3、DO IT!
となります。
さいごに
この寄稿は「4級の中年が、初段になる方法を語る」という、とんでもない内容です。
「ビリギャルが案の定留年したけど、難関大学合格方法を本にした」みたいなものです。
ビレッジ・バンガードで面白ポップつけられそうな内容です。「身の程なんて知らない!」とかポップ付けられます。
ですが、これは私にとってとても意義ある執筆となりました。
「どうすれば初段になれるか考える」という思考作業こそが、ひょっとしたら将棋の本質に近いのかもしれません。単に詰将棋を解くより一層、頭脳戦士たる棋士に近い作業をしたのかもしれない、とそう思うのです。
ぜひ皆さんにも一度、「無理なくできる勉強法」を基礎として、その効率を高めるには?と考えてみることをお勧めして本稿を終わります。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
コメント
「(実力が)三段になるまでネット将棋は一切やらない」
早く上達したい大人(おっさんなら尚更)は、この鉄則を守るべしwww
それはなぜですか?より効果的な方法をご存じでしたら、ぜひ教えていただきたいです!
「かっこいい囲いだ」はダジャレ?
ひろ様
先日は名前被りをして失礼しました。
約50年の観る将、実戦は過去トータル4,5年(負けるのがイヤ)の将棋ファンです。
大変面白く、興味深く読みました。
いつかネット将棋にデビューしてみたくなりました。
やはりどんな分野にも言えますが、上達するために何をすべきなのか、どうすれば効率的なのかを自分で考えられる人は成長が早いですよね。
とにかく対局や詰将棋をひたすらこなす、という単純な答えも間違ってはないんでしょうが、ちょっとスマートさに欠ける気がします。
同じことをやるのでも何を考えているのかで全然違いますからねー。
ツイッターアカウントのテンションで返信コメさせていただくよ!
>あなあきさん
ぬう!それが、あなあきさんの結論なのですね!
DO IT!と応援しますよ!
>あっしーさん
……それはぼくも思ったよ……。
でも、日曜の夜にもんのすごい勢いで質問に返信してる斎藤せんせいに、ツッコミは入れられなかったよ……。
>ひろ2さん
「ひろ」なんてかぶって当然なので、むしろうかつなのはぼくだったよ!
お気をつかわせてしまってごめんなさいだよ!
……み、「観る将50年」……?!
ぜ、ぜひ寄稿について前向きに検討してほしいよ!
くわしくは「お問い合わせ」から、だよ!
>2015年8月2日 11:52 PMさん
まったく同意見だよ!
とくにこの時代「対局を数多くこなす」は、ネット将棋の隆盛によって数をコントロールしにくくなっていると感じているよ!対面対局は、環境によるところが多いし!
そこも含めて考えるのが大事かなって思った次第だよ!
浦野先生の本買いました。サイゼリヤでパラパラ読んで早くも積んどく状態ですが…
小1か小2で覚えて、NHK杯とテレ東の早指し選手権、新聞将棋欄、雑誌立読み(将棋マガジンは買いました)、各種の本、最近はネット中継と、なんだかんだで続いてます。
梅田望夫氏著「羽生善治と現代」を読んでから、観る将熱が高くなりました。
ひろ2さん!
とってもステキだとおもうよ!(`・ω・´)b