「ものの歩」第9話。本作品最大の謎が来た。なぜ角筋を受ける必要があるのか。教えて竜胆、桂司

週刊少年ジャンプの漫画「ものの歩」がもう第9話になりました。

噂によれば、週刊少年ジャンプの漫画って短い場合10話ぐらいで打ち切られるらしいです。そろそろ踏ん張りどころかと思っていましたが、今回は「大人気御礼センターカラー」とのこと。10話打ち切りの危機は脱出した感じでしょうか。

前回のあらすじは以下の記事で。

「ものの歩」第8話。相楽十歩は「友達をなくす手」を指した

主人公の信歩は、大会で高校生プロゲーマー「相楽十歩」と対戦。

相楽の攻めに対し、信歩も攻め合いを選択したところからです。

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あらすじ

あらすじの前に相楽十歩に関する補足情報。

今回センターカラーだったので相楽の髪色がわかりました。明るめのアッシュですね。パーカーの色は緑。相楽は常にフードをかぶっているので、遠くから見たらガチャピンみたいにみえるかも。

さて、あらすじです。

信歩は、相楽が打った5七の歩が「取らないでほしい」と言っているという妄想にとりつかれる。駒が自分に喋りかけてくるのである。そのため、この歩を取らずに攻め合うことを選択した。

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相楽は相楽で、5七の歩を信歩が取らなかったことで「キミはオレと遊んでくれるの?(心の声)」とか「十年早いよ!!!道中のモンスターに過ぎない君が主人公を楽しませる?有り得ないね!!!(同)」と空想をめぐらせる。

数々のゲームを攻略してきた相楽は、将棋が自分のことを楽しませてくれるのではないかという淡い期待を持ったり、「期待しちゃダメだ(心の声)」とそれを否定してみたりと、対局に集中できていない様子。

やがて相楽は自分の人生を振り返る。ゲーマーとして人気になっていったこと、しかし自分はゲームを楽しめていないこと、みんなが自分のことを見てくれているのか不安になったこと、1ヶ月前、テレビで将棋を見て興味をもったこと。

その時、信歩が微かに笑う。

相楽がその理由を問い詰めると、信歩は「あなたの将棋がさっきより楽しそうになったので」と返答。

相楽の心に葛藤が生まれる。信歩は自分のことをわかってくれるのか。自分が求めていた相手なのか。

以下の局面になる。手番は先手の信歩。手が止まる。ネットで対局を見ていた竜胆は「ここは角筋受けるだけだろ 変なトコで時間使うなバカやろ・・・!!」と心の中で思う。

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ここで信歩の一手は▲5三歩。垂れ歩。

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次にと金を目指したり、歩の頭(5二)に別の駒を打ち込む準備をした手。

この手を見た桂司は「悪手だ信歩っ!!!何で角筋を受けなかった!!?」と思わず叫ぶ。

相楽は、信歩が自分を楽しませてくれると期待していたが、悪手を指され落胆して「お終いだ」と心のなかでつぶやく。

この手の意味は何なのか。果たして本当に悪手なのか?

角筋を受ける一手か

この回、いやこの作品の中でも私の中では最大の謎。それは信歩が打った▲5三歩を、竜胆と桂司が否定して「角筋を受けなければならなかった(ならない)」と指摘していること。二人は「角筋を受けるしかないような局面」と見ていたようです。桂司は奨励会員ですし、竜胆もそれよりやや劣ると思いますが相応の実力があります。

角筋とは、角の通り道のこと。この局面の場合は以下です。

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角筋を受けるというのは、相手の角筋による攻撃を守る手を指すことですが、これは別に今すぐに受ける必要性がないような気がして。角筋にある先手の6六の歩は7六の金で守られています。

いや、もしかしたら先を読んで、△4九角と打ち込まれた時の角筋の話なのか。

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確かに先手は、後手の△4九角の打ち込みを常に警戒しなければいけないと思います。7六の金が浮いていますので。しかもほとんど無条件に馬を作られるような感じなのでこれは痛いか。

あらかじめこれを受けて7六の金を取られないようにしておけ、ということなのかもしれません。

あるいは将来的に先手の6八の金を狙われて、△5七角や△3五角と打たれて王手飛車取りがかかるのを受けろということなのか。以下の局面は、仮に後手から△5九銀と打たれた時、先手が誤って▲7八金と避けたら△5七角を打たれてしまったという図。

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あるいは先に△3五角を打たれて(先手は▲3四飛と応じたとして)次に△8八銀を打ち込まれてまずいとか。

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これで▲8八同玉 △6八角成と進めば先手負け。▲8八同玉に代えて▲6九玉なら△1三角上(2二の方の角を1三に移動する)として二枚の角で攻められるのが厳しいか。

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確かに、これはなんかまずそうな気がしますね。先手が▲4六銀と受ければ後手は△5三角。打たれたばかりの歩を払いつつ相手に銀を使わせて後手が良さそう。

こういうのをあらかじめ受けておけということでしょうか。

しかし、せっかく今先手が攻めているようなので、後手から△2三銀とか打たれて攻めを切らされることを警戒しなければならないようにも思います。後手は2二の角を活用するにしても、△3五角~△1三角上より、△2三銀~△1三角の方が良さそうですし。

最初の局面を再掲します。

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△2三銀を警戒するなら、先手は例えば▲3四飛車として、がら空きの8筋方面への飛車の転回を狙うとか、▲3四銀として2三の地点に利く駒を足すとか、または先手から▲2三銀と打ち込んでいくとか。

でも信歩が選んだのは▲5三歩。再掲。

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これはこれで何か意味がありそうな手。何かの時に▲5二銀とか打ち込むとか?後手玉の逃げ道を狭める意味もありそう。仮に後手が△5三同飛車と応じたら後手の6一金や間接的な2一桂へ利きがなくなるという効果を狙っているのか。

それとも相楽が前回打った△5七歩のお返しで、ちょうど反対側の5三に歩を打ってみたのか。

いずれにしましても少なくとも絶対「角筋を受ける」ような局面じゃない気がしたのですが。私が低段だからか・・・。強くなりたい。

心理戦

今回、対局中の二人はお互いに妄想を繰り広げ、お互いが心の中で、さらに実際に声に出して会話しながら対局を進めました。

特に相楽は、信歩の一手を受けて、自分の人生を振り返っています。

将棋においては、心理的な戦いもしばしばあります。そもそも、将棋は相手の手を読まないと勝てないゲームですし、できれば心も読みたい。そのためには相手を知る必要があるし分析する必要がある。

相楽は信歩を心のなかで「モブ」と呼んでいますが、このことは相手の実力を想定し、パターンに当てはめ、行動を読むための下準備をしている行為と見ることができます。

一方で信歩は、相楽を心理的にかき乱すことに成功したと言えそうです。相楽はすっかり対局に集中できない状況に陥っています。将棋では相手の心を読むばかりではなく、場合によっては相手の心をコントロールする戦術も用いられてきました。

信歩の強さは終盤力だと思っていましたが、もしかすると心理的な駆け引きが上手なのかもしれません。対竜胆戦でも、心をかき乱すことに成功しています。自分で意識してやっているかどうかはともかくとして。

今回、信歩は角筋を受けませんでした。次回相楽からどんな攻めがあるのか。

上に示したとおり、自分もあの局面では角筋は気にしないと思うので、自分が相楽に攻められるようで緊張します。もしかしてこれが作者の狙いなのか。読者に「角筋?何言ってんの?」と思わせておいて、角筋を使ったとんでもない攻めが来るとか。

次回が楽しみです。

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コメント

  1. やまねこ より:

    ▲5三歩の現局面では、御指摘のように△3五角の王手飛車の筋が恐いです。しかも、現局面は先手の飛車の適当な引き場所が少ないです。笑われるのを承知で、弱い私も少し考えてみました。

    △8六歩
    間に合うなら入れたい突き捨て。この陣形のまま放置すれば△8七歩成。▲同歩△8八歩▲7七桂△8九歩成▲同玉△3五角。一応、▲2八飛で受かるけれど、△2七歩と止めてから、再度の△8七歩や△5三飛と歩を払って、後手が指しやすいと思います。

    あと、△7八歩や△5七銀(乱暴だな)がどこかで効くのかどうか、ですかね。作者が読者のミスリーディングを誘うのでなければ、何か後手から先手に技がかかりそうな感じはします。さらに先手からの返し技があるのでしょうか。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      いえいえ、私も弱いのに偉そうにこんな記事書いているので、笑われないと思います。

      なるほど8筋方面をいじくられたあとに△3五角ですね。玉と金の連結を切る手段として、私が記事中に示した△8八銀より遅いですが、駒を節約した攻めとなっていますね。どっちにしても後手が良さそう。

      飛車の処置に困るのは同感ですね。▲2八飛は辛いですね。△2七歩で止まってしまいますし、目標にされそうで。

      ご指摘のように、打った▲5七歩を払われる筋(私は角で払われると思いました)も警戒する必要があるので、忙しそうです。後手の技が出そうですね。

      以前のこの漫画の記事に、将棋の初心者と思われる方からコメントをいただきました。やっぱり盤面が出てくると注目する人がいていいですね。今回の盤面はかなり高度な気がしますが。

      コメントありがとうございます。

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