週刊少年ジャンプに連載中の漫画「ものの歩」の21話です。
場面は、都大会団体戦の準決勝。信歩と竜胆が所属する千賀高校と、岬が率いる駒江第一の対戦。
大将戦は信歩vs岬、副将戦は竜胆vs士の組み合わせに。竜胆vs士は局面が掲載されていないので省略します。
前回のあらすじは以下の記事で。
「ものの歩」第20話。信歩vs岬、戦型は相矢倉に。ざわつく会場と戸惑う能塚さん
これまでのあらすじを簡単にまとめた記事もありますので参考にしてみてください。
信歩vs岬は相矢倉の戦いになりました。
あらすじ
岬は矢倉専門である信歩よりも研究量で勝っているようで、信歩は序盤からミスできない厳しい戦いが続く。
岬の過去が明かされる。彼は棋譜マニアだった。
棋皇(きおう)vs歌川(雪之丞)七段の相矢倉の棋譜を見て「美しい・・・!! 女神はここにいたのか・・・もう1回並べよう・・・嘗め尽くそう!!」と鼻血を出す岬。
その様子を見た部員の士(つかさ)は勘違いを催し「部室で変態行為に励むのは止めてもらえませんか」と注意。だが変態岬は、彼の美学を強さに昇華させることに成功していた。
岬は、信歩に対してリードを広げていく(?)。
追い詰められる信歩。
(後手の信歩から見た局面となっています。盤面の下が信歩です)
ここで決断の飛車切り。
少し驚く岬。リードは揺らがないが、彼が思い描いていた棋譜はわずかに乱れたようだ。
飛車切り
「切る」は将棋用語で、大駒(飛車、角)を捨てて相手の小駒(金、銀など)と交換すること。
局面図を再掲します。
本局の場合、後手の7二の飛車が相手の8一の馬に追い掛け回される(将棋用語では「いじめられる」とも言う)ような展開になることが予想されるため、それぐらいだったら切ってしまって金を手に入れたほうがマシ、という決断だと思います。ということで、△7八飛成。
これには▲同玉と応じるしかないと思います。
ここで後手はどうするか。相手玉の上部はがら空きなので、脱出される危険性があります。しかも敵陣のと金は孤立し、攻め駒がやや不足してるっぽいので、上部脱出を防ぎつつ、相手の駒を取れるように攻めていくことが求められそうです。
しかし、また元の図を掲載しますが、ここでは飛車を切る必要があったのか疑問で。
6八に歩を一発叩くとかして、王手の連続で持ち駒の銀と桂馬をつかってゴチャゴチャやってから切ったほうが良かったかもしれません。△6八歩 ▲同玉 △7九銀 ▲6九玉で△7八飛成とやったのが以下。
先手は▲同玉とするしかありませんが。
と金が孤立してないので、さっきより良さそうで。しかし上部に脱出されないように抑えていく必要はありそうです。
飛車を切る前、本当に岬がリードしていたのか、疑問が残りました。
棋譜を美しいと感じられるか
岬は、この話の中で棋譜を見て「美しい」と感じ鼻血を流していますが、美しいものを美しいと感じるためにはそれを観る目が必要だと思います。また、美しいものを美しいと感じられる自分が美しいというナルシスト的な感性がある人もいると思います。
棋譜については、美しい棋譜というのは確かに存在するようです。私はまだ棋譜の美しさを「女神だ!」と言うほどには至っておらず、修行の足りなさを痛感しています。
コメント
棋譜とか詰将棋の手順とか、あるいは将棋関係ないですけど
素人には雑音にしか聞こえない現代音楽とか、
大真面目に変なポーズをとっているモダンダンスとか
僕には理解できないですが、ああいうのを「美しい…」
と言っている専門家の方のお話を聞くのは好きです。
世の中には美しいものがたくさんあって、
それを理解できると人生が豊かになるんだろうなー、と思います。
コメントありがとうございます。
まさに! 私も記事の最後に盆栽とか岩とかの例を入れようかと迷ったんですが、ちょっとわかりにくいかなと思ってやめていました。私も美しさの解説は好きですね。とくに中年以降の方の味のある解説。あるいは愛を語るようなことが。
しかし将棋はまだまだ理解できない部分が多いですね。すごいとか、詰将棋だったら「すっきり感がある」ぐらいはわかるのですが。
コメントありがとうございます。
ソフト検討してみましたが、△7八飛車成と切る前は信歩+1184と優勢らしい
△6八歩▲同 玉△7九銀▲6九玉△7八飛車成▲同 玉(局面図に合流)
△8八と▲7七玉△7五金▲6六歩△6四桂▲6七玉△7六金▲5七玉△7八とで勝勢らしい
ここには載ってないこの局面前の局面も信歩は苦戦っぽく描かれたけど+345と有利らしい
局面図と解説がまったく合ってなかったけどソフト検討がアマ6段だからかな~?
将棋には名局と会心譜があると思います
名局は1手指した方が良く見える白熱した対局で会心譜はどちらかが一方的に勝つ対局
岬の美しい棋譜は後者でしょうね
コメントありがとうございます。
いやあ~そうですよね。私も信歩が良さそうに見えました。持ち駒もあるし上から押さえていけば勝てるんかなと思っていました。
まあ漫画ですので細かいことは言いませんけど、局面を見て検討するのも将棋マンガの楽しみ方の一つということで。彼らの実力は正確にはわかりませんが、東京都で高校生トップレベルということでアマ三、四段ぐらいでしょうか。
岬の好みは一方的・・・大きな差はあるわけじゃないけど逆転は不可能、相手に読み勝っている、といったところでしょうね。