週刊少年ジャンプの漫画「ものの歩」がついに20話の節目を迎えました。おめでとうございます。
あっさりと打ち切られるんじゃないかと心配しましたが、粘ってますし、先週は増ページでしたし今週はセンターカラーという待遇です。
前回の話は以下の記事で。
現在は都大会の最中。前回は十歩が敗れました。信歩は準決勝で扇子野郎こと岬真悟(駒江第一)と対戦することに。
前回までのあらすじを簡単にまとめた記事は以下です。
信歩が矢倉しか指さないということで、毎回相手の戦型選びがテーマになっています。
あらすじ
都大会団体戦準決勝で、信歩・竜胆の千賀高校と、岬が率いる駒江第一が激突。
大将戦は信歩vs岬の対戦に。
岬は他の部員から「相手は矢倉しか指さないバカですよ。飛車を振れば楽勝です」と、振り飛車を指すことを進言される。
振り駒によって岬が先手に。対局が始まる。初手は▲7六歩。
信歩は居飛車を宣言する△8四歩。
振り飛車なら▲6六歩、▲6八飛などのところ、岬が選んだのは▲6八銀。
相矢倉への基本的な進行の順である。振り飛車にする可能性はほとんどなくなった。ざわつく会場。
岬は、信歩の矢倉しか指さないという弱みを突いて振り飛車にするのは美しくないと考え、相矢倉で受けて立つことにしたのだ。
相矢倉については以前の記事でも触れているので参考にしてください。以下の記事の「矢倉は将棋の純文学」の部分です。
「ものの歩」第14話。純文学の意味を勘違いして矢倉の鬼になる信歩。彼を奪い合う十歩と竜胆
岬は後世に棋譜が残ることを考え、美しくない戦いを選択できなかった。
岬の戦型選択にざわつく会場。
将棋のことに詳しくないが信歩を応援してる同じクラスのメガネっ子能塚さん(女子)は、ざわついた会場の雰囲気に「なにこの空気 まだ3回ぐらいしか動かしてないよね?」と戸惑いを見せる。
戦型選択という醍醐味
将棋において、初手から数手というのは最初の見どころ。ニコニコ生放送などでタイトル戦を見ていても、まず戦型が決まるまでが緊張感があるところだと思います。予想通りの戦型になったときの安堵感(あるいはマンネリ感とも)、意外な戦型になった時のワクワク感、見たい戦型になった時の幸福感などが、ファンにとってはたまらない瞬間だと思います。
スポーツで言うと、スタメン発表とか先発投手の発表みたいな感じでしょうかね。「おお、こいつが出てきたか」というような。将棋でも、最も得意な戦型のことを「エース」と言ったりします。ただ、エースばかりを登板させていると、攻略法を確立され狙い撃ちされます。
信歩は矢倉という唯一の先発投手を今回も登板させざるを得ない。右投げのピッチャーには対策として左打者を並べると有利という話を聞いたことがありますが、岬はそういうことはせずに、堂々と受けて立ったということですね。例えが下手くそですみませんが。
能塚さんの気持ち
私はまだ将棋ファン歴2年ぐらいですので、戦型選択だけでザワつく会場の人々に戸惑う能塚さんの気持ちがよくわかります。
戦型選択の数手でひと盛り上がりできるようになれば、将棋ファン3級ぐらいでしょうか。例えばNHK杯テレビ将棋トーナメントでも、解説者が対局前に戦型予想をするのが定跡となっています。
今回は、信歩が十歩から助言されて以来、こだわって指してきた矢倉を当然のように選択。その十歩を破ってきた岬も矢倉で受けて立つという展開。
漫画でこうやって将棋ファンの心理的なものが描かれたのは、良かったと思います。とはいえ、まだまだ3手。将棋は最終的に平均110手になります。相矢倉は確定として、そこからどうなるか、私にとってはこの漫画始まって以来の楽しみが訪れました。