週刊少年ジャンプの漫画「ものの歩」の第15話です。
現在の状況としては、前回の大会が終わり、次の大会を目指すまでの練習をしている時期で、信歩は戦法を「矢倉」に絞って実戦を重ねている感じです。
前回のあらすじは以下の記事で。
「ものの歩」第14話。純文学の意味を勘違いして矢倉の鬼になる信歩。彼を奪い合う十歩と竜胆
今回は練習対局がメインですので、あらすじは簡単にします。
あらすじ
2ヶ月後に迫った都大会の上位を目指すため、信歩は竜胆と練習対局を重ねる。5分~1分将棋という早指しで、とにかく矢倉に絞って実戦を1日何百局も指す。なぜ矢倉を選んだのかは前回の記事に書いてあります。
十歩は、信歩が戦術を絞ることで「選択肢を絞る」ことが棋力向上への近道と考えているようだ。とにかく序盤で多少不利になろうが終盤力で逆転するという戦略である。信歩は十歩の助言を信じて矢倉を指し続ける。
信歩は、大会に向けてクラスメイトのカラオケの誘いも断って将棋に打ち込む。
信歩が「矢倉しか指さない」と知ったシェアハウスのリーダー泰金は、信歩と練習対局をしてあげることに。泰金は奨励会三段。将棋を覚えてから1年で奨励会入りした天才。
その対局で、泰金は飛車を振る(ノーマル四間飛車)。信歩を試している。
対振り飛車には矢倉にし辛いが、それでも信歩は矢倉を選ぶ。
信歩の頑なな態度に、泰金は「本気で信じてるんだね・・・強くなったね(中略)誇って行きなさい キミの将棋を」と激励する。
本気で信じてるんだね
十歩からアドバイスされた通りに、相手が振り飛車だろうが何だろうががむしゃらに矢倉を指し続ける信歩。
そんな信歩に「本気で信じてるんだね」と発言する泰金。その後泰金は「信じた道を行け」という趣旨で信歩を激励するのですが、この一連の泰金のセリフがミステリー好きの私としてはひっかかりました。
前回の記事に書きましたが、十歩は信歩を「勘違いさせて」矢倉に誘導しています。これは、ミステリーであれば十歩の罠である可能性が十分に考えられます。
ただ、少年漫画なので罠である可能性は低いのかもしれません。十歩には動機もありませんし。しかしあらためて泰金に「(十歩のことを)信じてるんだね」とか言われるとドキッとしました。
十歩は前回、すっかり可愛いキャラになりましたが、裏の顔がある可能性も僅かですが残っています。
いよいよ信歩が気になるみなと
シェアハウスの住人の中で唯一女性だと確定しているキャラのみなとは、信歩の努力の凄まじさにいよいよ好きになっていっているようです。
将棋のやりすぎで筋肉痛になった信歩を、優しくマッサージしてあげたりします。
以前には渋谷デートもしていますし。
ただ、信歩のクラスメイトの女子の1人(以前「高良君もカッコよかったわね」と暗に告白した女子。12話参照)も信歩に惚れているようで、作者は「将棋をやったらモテる」ということを伝えたいのかもしれません。
戦法を絞る意味とは
現実に戦法を絞ることで、棋力が向上するのかというと、これは素人の私にはなんともいえません。「振り飛車」や「居飛車」ぐらいの広い範囲であれば問題ないのですが。
詳しくない方への説明ですが、将棋では大きく「居飛車」と「振り飛車」に戦法(戦型)が分かれます。「居飛車」の中でも「相矢倉」「横歩取り」「角換わり」「相掛かり」などの形があり、相手が振り飛車にしてきた場合に対する作戦もいくつかあります。信歩が選んだのはメジャーな戦型「相矢倉」に近いですが、「相矢倉」は自分も相手も矢倉にして向かい合う形であるのに対して、信歩は相手が何をしようがとにかく自分は「矢倉」にしようという、特殊な指し方だと思われます。自分の戦法と相手の戦法の相性とかもあって、それを考えながら作戦を選ぶのも面白いんですが、そこは無視するという。
信歩は死ぬほど(おそらくノート500冊分ぐらい)将棋の勉強をして練習しているはずで、その中には対振り飛車用の作戦もあったんじゃないかと思います。
それでも戦法を絞るということは、将棋ファン的には、少年ジャンプの読者が勘違いするんじゃないかと少し心配しています。漫画やアニメで出てきたシーンややり方を真似るというのは、少年少女の時代には誰しもあったと思いますし、その影響力は大きい。
読者に勘違いされそうなことの一つは、「将棋では戦法を覚えるのに苦労するんじゃないか」と思われること。まあ確かに苦労するかもしれないんですが、「ノート数百冊におよぶ勉強をしても覚えられない」ほどのものではないと思います。
もう一つは単純に「何が何でも戦法を絞ることが棋力向上の近道」と思われること。小学生男子ぐらいだったら、例えば指導をしてくれる先生より漫画の方を信じてしまうとか。得意な形を突き詰めるのはいいと思うんですが、相手がどう来ようが何が何でも自分の道を行く、では難しいような。「棋は対話なり」とも言いますし。
キャプテン翼のスカイラブハリケーンみたいな現実離れした技だったら、小学生も「さすがにこれは漫画の世界のことだろ」と思うはずですが、小学生にとっては一見リアリティがある「ものの歩」ではどうかなと思ったんですね。あるいは青年誌の読者だったら漫画との区別はつくでしょうけど。
でももしかしたら、私が思っていることは間違いで、本当に信歩のように戦法を絞ったら棋力向上するのかも。それにそんなこと心配してたら自由に漫画書けないですね。私は個人的にはちょっと心配はしていますが、作者の方が自由に書いてくださるのが一番です。
ちなみにこの漫画の監修の橋本崇載八段は、居飛車も振り飛車も幅広く指す棋士で信歩とは正反対。そういうストーリーに絡む部分まで監修しているかはわかりませんが、信歩のやり方を咎めるキャラが出てきたりとか、今後の展開で何かあるのかもしれません。
コメント
今回の話、感想戦なしの一分将棋で数だけ増やすとかバカなことをやってるのはさておいて。
最後の泰金との対局、泰金が4手目に飛車振ったところでシノブはすでに7手くらい指してて囲いができてますね。
さすがにひと目で分かるこれはどうなのか。
コメントありがとうございます。
感想戦ですね。一言(中盤の両取りが・・・とか)ぐらいはしているとは思うのですが、1分将棋だけやり続けるというのは上達法としていいのかな思ったのは私も思いました。ハッシーが監修しているのは指導法もしているのかわかりませんが。漫画の話じゃないか、といえばそうなんですが、読んだ人が影響されるかもと思って。あと4手目7手目問題は、あの間の数コマの間に何手か進んだのかなと解釈しました。
コメントありがとうございます。
香月の性別が女の可能性が高いという場面がジャンプ3・4巻の4コマでありました。かやね荘のプレゼント交換で香月が「これぎんがさんのか」と言い、隠していることから、香月は銀河に好意を抱いていることがわかります。
情報ありがとうございます。なるほど確認しました。見逃していました。以前も香月が銀雅に思いを抱いているであろうシーンがありました。服を引っ張って約束したのに!と言っているシーンです。
http://shogi1.com/mononofu-4/
ただこれにもいろいろ反論があっていまだ未決着となっています。
初めまして、毎週ものの歩の感想を楽しく拝見しております。
12/28発売のジャンプNEXT!!(週刊少年ジャンプの定期増刊号です)の袋とじ番外編にて、香月のお風呂シーンが描かれた1ぺージ漫画が載っていました。
香月の性別についてかなり迫った描写があるのですが、結局肝心の性別についてはハッキリとはわかりませんでした。
しかし、漫画の最後に「肝心なことは何一つわからない番外編…おわり」という文言がついています。
これによって、作者が意図的に香月の性別を明かしていないことが決定的になりました。
作者さんは香月の性別を漫画内で明かす気は今のところ無いのでしょう。個人的にはこのまま性別不詳で突っ走って頂きたいです(笑)
しかしこの1ぺージ漫画のために460円を払うのは管理人さんも辛いと思います。何処かで読める機会があったらでいいので是非ご覧になって下さい。(もしかしたらものの歩の単行本に収録されるかもしれません)
初めまして。コメントありがとうございます。
いつもご覧になっていただきましてありがとうございます。
なるほど、番外編がどこかに掲載されるというのは知っていましたが、そういう内容だったとは。情報ありがとうございます。
香月の性別を意図的に明かさないという、表現上の戦略なわけですね。
当サイトでは、この漫画の開始当初に香月性別問題を積極的に扱い、第6話で暫定的な結論に至ったつもりだったのですが、その後も結局性別不明のままになっています。将棋においては男性と女性で制度が違う(女性は奨励会を抜けて四段になる以外に、女流棋士の道もある)ため、性別は重要な要素です。将棋漫画で「しおんの王」という漫画があるのですが実はこれにも女装して女流棋士としてデビューする男性、というのが描かれています。しおんの王は昔の漫画なのでいいのですが、最近はLGBT(性的少数者)の権利についてかなり動きがあり、もしかしたら公益社団法人たる将棋連盟における女流棋士という制度そのものも見方によっては危うい側面があると思います。
いつか香月が性別を明かす時に、どういう話になるのか、まさか上記のような課題に切り込むのか。うまくまとめることができるか注目ですね。460円ですか。機会があれば読みます。
有意義な情報をありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。