週刊少年ジャンプの漫画「ものの歩」、ついに第10話となりました。おめでとうございます。
作者の池沢春人さん、ジャンプ巻末の一言コーナーで以前は「将棋は下手の横好き」と書かれていましたが、今週は「NHK杯、行方先生の終盤に痺れました。8二角からもう原稿中断する事態に!」と書かれていますので、将棋をお楽しみのようで何よりです。
ちなみにこれは11月1日放送の▲行方尚史八段vs△藤原直哉七段戦のことですね。棋譜は公式サイトで公開されています。8二角は111手目。
前回のあらすじはこちらの記事で。
「ものの歩」第9話。本作品最大の謎が来た。なぜ角筋を受ける必要があるのか
この「角筋の謎」、今回解けたのか・・・?
あらすじ
前回に引き続き信歩vs相楽十歩の戦い。
ネット中継で本局を観ていた竜胆は、居ても立ってもいられなくなり「あーバカバカバカだ俺は」と言いながら会場に駆けつける。可愛い。こじらせるのも分かる気がする。
前回のラストで信歩が打った「垂れ歩」。
竜胆や桂司は「角筋を受ける手」が必要だと指摘し、垂れ歩は悪手だとされていた。
信歩がこの垂れ歩を打った理由が明らかになる。それはただ「歩兵が好き」で「役に立たないと思われた歩兵が逆転するという夢を信じてみたんです」。えええ!!できれば私もそういう理由で手を選んでみたい。
しかし、この垂れ歩が生きる展開に。(おそらく)数手後の局面が以下。
この局面をネット中継で見る謎の人物が登場。畳が敷かれた部屋で「初心者同士の対局らしいですよ」と教えられ「へぇ・・・?」とつぶやく。
相楽は、信歩との対局を通じて、普段のプロゲーマーとしての自分、ネットの人たちから色々言われてきた自分を捨て去ったようで、盤上にのめり込んでいく。
相楽はゲーマーながら、ゲームで楽しい思いをしてこなかった。しかし本局は楽しんでいる。途中、信歩に向って涙を流し「やっぱりキミだ。勇者(キミ)をずっと探していた」と空想する場面も。その空想では自分は勇者ではない。自分こそがモンスター。「誰かに振り向いて欲しくて勝つことだけが目的になったモンスター」。信歩はそのモンスターに挑む勇者。
今回最後の一手は前回打った垂れ歩の先に打ち込む▲5二銀(ただし盤面全体は確認できないので詳細不明)。
最終盤に突入した本局。竜胆、香月、みなと、桂司が見守る中、信歩の残り時間は9秒に。(本局は20分切れ負けです)
角筋の謎
前回の局面と今回の局面を再掲します。
これが前回。「角筋を受けなかった」と酷評された垂れ歩。
今回の局面。
後手の相楽からみれば、2二にいる角はそのままで、敵陣の2枚の金を取り、さらに馬ができています。何かすさまじい攻撃があって金を2枚とったものと思われます。その代償として銀を1枚渡しています。
先手玉は上記局面から▲7七桂とと金を取って、このときまだ詰めろではないです。先手にはまだ大きなチャンスがありそうです。
前回の局面から今回の局面までの経過は推測するしかないのですが、おそらく後手はどこかで銀を捨てて(相手に金で取らせて)角で金を取る、みたいな手順があったものと思います。つまり角筋とは2二の角ではなく、打たれる角の筋、ということだったんだと思います。
どこかで△3九角~△5七銀(▲同金)△同角成(▲4六銀)△5八馬みたいな感じでしょうか。
そういえば、門倉啓太四段が将棋監修したアニメ「えとたま」第9話(下記記事参照)では、後で同アニメの展示会で棋譜が公開されていました。
アニメ「えとたま」第9話にみる将棋上達法。にゃ~たん、奥義「猫謝嵐」でピヨたんを破る
将棋漫画の棋譜が公開されるのは定跡なのかどうなのかわかりませんが、公開に耐えうるものであれば公開されたらファンとしては嬉しいですね。
さて今回、相楽は将棋や対局相手である信歩の魅力にハマっていく様子が見られました。
現代の若者(相楽は高校生)がどれほどこういうケースに当てはまるかはわかりません。ただ、心ならずもゲームを極めてしまった彼だからこそ、ということを、NHK杯で痺れた作者の池沢春人さんは伝えたいのかもしれません。
コメント
えとたまの棋譜はえとたま展というイベントで公開されています
“えとたま” ”例の棋譜” でgoogle検索すると撮影された画像が出てきます
コメントありがとうございます。
えとたま展で公開されていましたね。しっかりとした棋譜のようです。
えとたまの記事にも書きましたが、最後の局面はプロの将棋を参考にしたもののようですね。
第10話の盤上の進行は、私の頭の中では
△5九銀 ▲4六銀 △4九角 ▲7七金上 △5八角成 ▲3四銀 △6八銀不成 ▲8八玉 △7七銀成 ▲同金 △7六歩 ▲4三銀成 △7七歩成 ▲同桂 △○○○ ▲5二銀 です。信歩が▲5二銀と打ち込む前に十歩が何を指したのかがマンガに描かれた盤上の駒配置、駒台の持ち駒が正確だと仮定すると推測ができません。十歩が▲同桂の後に歩を指で挟んで持っている描写がありましたので、持ち駒の歩を▲7六歩と桂取り(同時に詰めろ)に打ったと考えるのが自然で、そこに歩を打たないとしたら、▲8七歩(飛車取り)くらいしかない局面だと思いますが、最終見開き2ページの盤上をみると、7六の地点も、8七の地点も駒は無く、十歩の駒台を見ると歩が3枚残っていますので、作画にミスがないと仮定するなら、十歩は歩を持ったものの、着手せず駒台に戻して他の手を指したか、実は、▲7七同桂の後十歩は着手をしていない(即ち、信歩が二手連続指しをやらかした)、という可能性もあるなと思っています。
8七は2三の間違いです。訂正します。
コメントありがとうございます。
△5九銀~▲4三銀成の進行は自然な気がします。さすがです。前回の「角筋」とは△4九角と打たれた時の、ということですね。
問題は▲7七同桂から▲5二銀の間ですが、私はこの間に何手かあると思っていました。
また、十歩が歩を持っている場面については、彼の空想での話だと思っています。前のページでは、スマートフォンを将棋の駒に持ち替えています。あるいはその数ページ前では十歩は宙に浮いているように見えます。これらはすべて空想の中の出来事だと思います。
ただ確かに、十歩が別の手を指した形跡がないんです。
なんともいえませんが、信歩が残り16秒となり「あれだけあった差が一手ずつ詰まっていく」と書かれているコマの盤面を見ると、5二に既に何か打ち込まれているんですよね。駒台は変わっていないように見えますし。なので作画で問題があったのかもしれません。
確かに二手指しの可能性も拭い切れないです。二手指しを誘う十歩のテクニックなのかもしれません。コメントありがとうございます。
11話で、信歩 vs 十歩の対戦の決着がつきました。キャラクターの設定からすると、妥当な決着と思います。このエントリーの最終図から、
▲7七同桂 △7六歩
▲5二銀 △同金
▲同歩成 △同飛
▲同成銀 △同玉
▲5三歩 △同玉
▲6五桂 △4二玉
▲8二飛 △5二歩
▲5三桂成(!!) △同玉 (11話の最初の図)
▲5四飛(!!) △同玉
▲5二飛成(終局図)△6四玉
▲6五銀 △7五玉
▲7四金 △6六玉
▲5六龍 (感想戦の最後の局面)
が作中の盤上で起こったことかと思います。自分の読みが間違っているかもしれませんが、10話の最後の局面では、後手玉に詰みはなかったはずなのですが、11話の手順の中で後手は連続王手に対して受け方を間違えて(5三同玉では4三玉、 4二玉では6二玉なら自分の頭の中では詰みがないのではと思っています。相当際どい変化満載ですが。)頓死筋に入った、というのが自分の解釈です。
コメントありがとうございます。
記事づくりに大いに参考にさせていただきます。11話の記事に書きますのでよろしくお願いします。
確かに受け方を間違えたように思います。△4三玉、△6二玉で助かっているのは確かだと思います。王手は相当長く続きそうですが。頓死のようですね。
コメントありがとうございます。
10話の角筋というのは▲68金がいなくなると△75角の王手飛車になるので△59金から猛攻されるという事だと思います(将棋用語では「準王手飛車ライン」と言って凄く危険とされてます)
棋譜ではそうなのですが、10話の進行は面白く、5級ぐらいの人が検討すると十歩の勝ち筋が2つは見えます
①△7七銀成とせず△6九角成▲7八金△5三飛車▲5五歩△2三歩▲2八飛車△3八歩
▲同飛車△5二歩で以降は安全勝ちです
②△7六歩とはせず△4三金▲2二飛車成△3一金▲5二銀△同 金▲同歩成△同飛車
▲同 龍△同 玉で詰みはなく勝勢です
11話になると▲5三歩△4三歩でも詰みは逃れてますが▲5四金△4二玉▲8二飛車
△3一玉に▲3二飛車成が盲点で以降▲同 玉△4二金▲同 玉△2二飛車成で以降50手ぐらい際どい受けが必要で高段者じゃないと逃げ切れないと思います
▲6五桂△6二玉で詰みはないですね▲5三金△7一玉▲7四飛車△7二銀以降も20手ぐらい王手は続きますが際どい受けでもないので、こちらがお勧めです
あっ、1行目を間違えた、スマン
△5九金=× ▲5九銀=○ です
コメントありがとうございます。
そうですね、王手飛車取りは気をつけなければなりません。前回第9話の記事でそのあたりも記述しています。奨励会員たちが指摘するような、今すぐ受ける必要があるかというとやや疑問で、飛車を引かされるようなことを心配したほうが、と思いました。
解説ありがとうございます。①、自然な流れのように見えます。しかしさすがに5級の人は△3八歩は打てなさそう。いい悪いはよくわからないのですが有段者の手に見えます。
②は、先手は攻めが切れるとわかっていて「間違えてくれ」と祈りながらも突撃した感じでしょうか。これも自然な流れに見えます。
>11話になると▲5三歩△4三歩
おそらく「△4三歩」は「△4三玉」ということだと思います。あと途中から(「盲点で以降」の後)先手(▲)後手(△)表記が逆になっている気がしますが、それはいいとしまして、▲4二金は△同玉とは取ってくれないのかなと思いました(△3三玉と逃げる)。一度▲4三金として△3一玉に▲4二金という感じでしょうかね。
いずれの変化でも私なら頓死間違いなしといったところです。
コメントありがとうございます。
間違ってばかりでスイマセン
11話はもうボロボロだな、10話で記憶と集中力を欠いたみたいで全てご指摘の通りです
でも、11話の▲3二飛車成が見えてたのは凄い
自分は▲8一飛車成△4一歩▲4三桂△同 金▲2二飛車成△同 玉▲8二龍△4二銀の筋しか見えなくって、ソフトで確認して仰天しました
前ページも拝見しました、いろいろ読んでると感心しました
ただ、準王手飛車ラインは普通に間に挟まってる駒を狙われるのが一番きついですね
棋譜のように△5九銀▲4六銀、ここで▲7六金が浮いてるので△4九角と猛攻を受けてしまう
▲53歩では▲3四飛車か▲7八玉が普通かな?
10話の①は手番をもらって後手に銀が入ると△7九銀打で終わりで△1三角の狙いがあり、手順後は▲6七銀か▲7九歩で寄せるのは大変そうだけど、後手が安全だからね
②の手順後は▲5三歩△4一玉▲2三角△4二玉▲8二飛車△3三玉が一例です
少し前の検討なので、また間違ってたらスマン
今後もいろいろ検討して頑張って下さい
再コメントありがとうございます。
いえいえ、なんとなくもう駒をたくさん渡す形なので、詰ますしかないのかなという手順です。実戦の中でできるかは別です。
おそらく作中では信歩はもう攻撃しか考えていないような感じでしたので、自陣に手を入れるようなことは考えてなかったんじゃないかと。なので、▲5三歩のところでは、おっしゃるように▲3四飛か、▲3四銀、あるいは飛車先に打ち込んでいくような手が考えられるんじゃないかと思います。
あと持ち時間の関係で(?)なかなか悠長なことはできなさそうで。①、②ともに自然な感じがしますが、本譜、相手の頓死を誘うという意味では最短手順なんじゃないかと思ってきました。
応援いただきありがとうございます。今後作中で局面が出てくるかわかりませんが、今後とも宜しくおねがいします。