優秀な成績を残した棋士などが受賞する「将棋大賞」の一部門として「名局賞」があり、毎年発表されていますが、そもそも「名局」の定義は何なのか。
私(管理人)のような、将棋ファン歴1年少し、アマチュア初段程度の棋力、そして主に「観る将」と言う立場にあってはせいぜい、ニコニコ生放送やNHK杯での中継から雰囲気として「最後までどちらが勝つかわからず熱戦だった」というのが、名局かどうかを判断できる要素に過ぎません。
むしろ「名曲」のほうが、選びやすい。恋の名曲とか言われたらパッと出てくる。そう思うのは私だけではないはず。
名局の要素
「将棋世界」の2015年6月号では、そんな「名局」の定義について、観戦記者3人(相崎修司さん、君島俊介さん、小暮克洋さん)の座談会で触れられています。
詳しくは将棋世界をご購入いただければと思いますが、3人それぞれのお言葉を少し引用し、観る将的立場からの意見を書き添えます。
ミスが少ない
まず小暮さんの意見。小暮さんは東大法学部卒でアマ強豪です。
誰がどう見ても熱戦でミスが少なかった対局
やはり「熱戦」という要素は欠かせないようです。そして「ミスが少ない」と。これが難しいところ。スポーツで言うと「積極的なミスは許される」みたいな話がありますが、やはり将棋は、特に高いレベルではミスが許されない厳しさがありそうです。
ネット中継記者「銀杏」として知られる君島さんは以下のように述べています。
片方のわずかなミスで差がついてそのまま決着する将棋。野球でいえば1-0の完全試合
野球でもサッカーでも、点の取り合いを好むファンもいれば、上記のような最小のスコアが好きなファンもいます。どちらかというと1-0を望むのは玄人ですね。やはり将棋の名局というのはミスが少ないというのが大前提なのでしょうか。
ただ小暮さんは以下のようにも述べています。
(第64期王将戦第6局を指して、最後はミスがあったが)「最後にドラマがあったから名局」という人もいる
これは意見が分かれそうなところです。
またスポーツでいうと、例えばサッカーで語り継がれるような名試合、名勝負といえば、ドーハの悲劇とかジョホールバルの歓喜とか、最後の最後で劇的な結末を迎えたものが多いと思います。厳密に言えば両方、相手のミスから得点が生まれたものでした。
対局者
次に、対局者にフォーカスした意見。まず小暮さん。
勝者を指して「○○の名局」と呼ばれるものもある。この場合は負かされた方は好手が少ないので名局扱いにクエスチョンを付ける人もいる
「羽生の名局」とか「藤井の名局」とか言われるものですね。
将棋ライターとしても活動する相崎さんは以下のようにも述べています。
「この人が指しているから」という先入観はどうしても出てくる
「誰が指しているか」。これは観る将的には絶対あることです。むしろ私が選ぶとすればこの要素がかなり大きい。
ただ、実際名局賞を選ぶ人(現役棋士)は公平でなければならないと思うので、人で選ぶというのは(少なくとも受賞理由にするのは)難しく、大変だなと思います。
舞台
相崎さんは以下のようにも述べています。
内容はもちろん、多くの注目、見方を集めるという要素も大きい
実際、2014年度のベスト対局トップ10のうち7局がタイトル戦。残りはA級順位戦が2局とNHK杯準決勝。
「大きな舞台」というのが名局にとって重要なことだとわかります。
定義
話をまとめますと、名局の定義とは、大きな舞台で、ふさわしい対局者が対局し、熱戦でミスが少なく、終盤にドラマがあったもの。
ちなみに、2014年度の名局賞は第62期王座戦5番勝負第5局、羽生善治王座VS豊島将之七段でした。
ほとんど定義とマッチしてる・・・・!
詳しくは上記リンクからご確認いただければと思います。
名局を作るのは・・・
また、上記以外の意見として、相崎さんが面白いことを述べています。
ネット中継などによってファンがリアルタイムで対局を観戦できるようになったこと、SNSが発達しファンが手軽に感想を発信できるようになったことを踏まえて。
(ファンの)反応が多いのもいい将棋なのかなと思います。(第55期王位戦第2局で)羽生さんの飛車が最後に働いて相手玉を詰ませた将棋に『あの飛車が働いて勝つなんて、この人怖いよ』という感想もありました。そういうものを見ていると楽しいです。
この人怖い!!
私もこのような一文が書けるようになりたいものです。名局を作るのは、棋士や棋譜や用意された舞台だけではないのかもしれません。
以上、ありがとうございました。
コメント
「名局」という言葉を使った時点で答えが出ているwww
コメントありがとうございます。
あれ?そうでしたっけ・・・ミスの有り無しとかは議論になるところかなとも思ったんですが・・・・
まあ私は低級なので名局より名曲を選びます。コメントありがとうございます。
名局の定義って難しいですね。
長沼先生が羽生先生にNHK杯で勝利した一局や、甲斐先生が深浦先生に勝利した一局とか今も語り継がれる戦いもドラマがあって好きですが、対局者のドラマより内容の方が重要なんでしょうね。
コメントありがとうございます。
そうですね、何か採点競技のように
棋譜点:5点
熱戦点:4点
ドラマ点:7点
みたいな感じで決められても味気ないですし、選ぶ方も大変ですね。最後は好みで、自分の中の名局、でしょうね。
コメントありがとうございます。
先ほど,王座戦の中継録画を改めて見ました。
名局,名曲,名画,名演奏,,,作品を鑑賞し,堪能するには,作品が誕生するに至るバックグランドに対する理解が不可欠で,理解の深さにより感動の深さが異なるのだと会得しました。
羽生さんの栄光と挫折,豊島さんの棋歴・羽生さんに対する思い。両者の王座戦での戦いぶりを見守ってきたファンの悲鳴,阿鼻叫喚,歓声。。
全てがつまった8二龍。やはり名局です。
コメントありがとうございます。
バックグラウンド、そうですね。これが非常に重要だと思います。特に私のような棋力が低い観る将にとっては。
私はまだ将棋ファン歴が短いのですが、これが長く将棋ファンをしているとさらに感動が深いのでしょうね。
どんなことでもそうですが、長く見続けていると楽しさがどんどん増してきます。実感しています。
そして踏み込んだ▲8二竜。豊島七段は残念でしたが、棋士人生まだまだ先は長いですから。
コメントありがとうございます。今後ともよろしくおねがいします。