2015年5月20日・21日に行われた第73期名人戦7番勝負第4局、▲羽生善治名人VS△行方尚史八段は、先手番の羽生善治名人が大逆転での勝利。
これまで後手番が3連勝と珍しい星取りで迎えた本局でしたが、ここで先手が勝利し、対戦成績は名人からみて3-1に。
防衛まであと1勝となりました。
詳しい棋譜は日本将棋連盟モバイル、または名人戦棋譜速報でご覧ください。
戦型は脇システム
戦型は、矢倉の中でも最近珍しいとされる「脇システム」(▲4六角)を先手の羽生善治名人が採用。名人戦では初登場の戦型。
仕掛けたのは先手の羽生名人。角を交換し、1筋に銀を前進させ攻めかかりました。
しかしこの攻めは無理だったようで、その後1筋に出た銀は撤退することに。
先手は歩、角を敵陣に打ち込み手を作りにかかりますが、これも無理攻めだったよう。
後手は入玉も見えてきて、以下の局面では控室、ニコニコ生放送の解説の渡辺棋王ともに後手優勢の形勢判断。後手番4連勝という名人戦としては66年ぶり(当サイト調べです)の珍事になるかと思われました。
しかし、この後の98手目△2八飛車から▲2五桂 △3五玉 ▲1七銀の手順で、先手は後手玉の入玉を防ぎつつ飛車取りとなり、このあたりで形勢は急接近したようです。
形勢不明で終盤に
羽生名人の方が時間を残して終盤を迎えました。ただでさえ恐ろしい羽生名人の終盤力に、形勢は急接近、時間まで残している。流れは先手に。
そして形勢不明となって迎えた後手の120手目。9筋の歩を成り捨て。
このあたりでは、別の手もあった可能性があるようです。この攻めを受けきった羽生名人が自陣を再構築。
羽生名人の手は何度も震え、この133手目付近で先手の勝利が揺るがなくなりました。
つらい終局
先手の141手目を見て行方尚史八段が投了。
小さく、力なく頷く投了動作。終局直後は、自分の手を目にやり、タオル(ハンカチ?)をとって自分の口や目に押し当て、泣いているようにも見えました。つらい投了でした。
渡辺棋王も「無念さが出ている投了。普通なら羽生さんはすぐに相手に声をかけるが、これは声をかけにくいでしょうね」と解説しました。
行方八段は2分弱うつむき続け、記者が対局室に入ってきそうになると、水をコップにくみ、飲みました。
一方、羽生名人は終局直後に勝利のオレンジジュースを飲んでいました。
恐ろしいものを見た
本局は、羽生名人の大逆転だったと思います。
とあるプロ棋士だと言われているツイッターアカウント、itumonさんは以下のようなツイート。
羽生名人、うまく言えませんがスイッチがはいって鬼神の如く戦われる時があるのですが、今日の終盤は目覚めた感じでしたね
あの谷川浩司九段をも嫉妬せしめた恐るべき終盤力
— itumon (@itumon) 2015, 5月 21
青野九段の以前の仰られようをお借りするなら「羽生さんにはこちらが何を見落としているのか見抜かれているような気がする」
— itumon (@itumon) 2015, 5月 21
大平武洋五段も。
強いでは当たり前。名人を形容するのにいい言葉は何だろう?
— 大平武洋 (@oohira243) 2015, 5月 21
加藤一二三九段、絶句。
羽生さん、、、
— 加藤一二三@今夜アウトデラックス出演 (@hifumikato) 2015, 5月 21
中継記者の松本博文さん。
最後に羽生が勝つゲーム、か。
— mtmt (@mtmtlife) 2015, 5月 21
上野裕和五段。
恐ろしいものを見た。
しかしよく考えると、20年以上前からずっと見続けている。
— 上野裕和 (@hirokazuueno) 2015, 5月 21
20年前から見続けている恐ろしいもの・・・。
勝又教授こと勝又清和六段。
バケモン‥
— 勝又清和 (@katsumata) 2015, 5月 21
防衛に大きく前進
前述のとおり、これでシリーズの対戦成績は羽生名人の3勝1敗に。名人は防衛に大きく前進しました。
行方八段にとってはスケジュールも辛いところで、1週間で気持ちを立て直す必要があります。
羽生名人の防衛決定がかかる名人戦第5局は、5月28・29日に行われます。
コメント
「バケモン」に勝ち越してる人がいるってことを忘れてはいけませんwww
コメントありがとうございます。
渡辺明棋王ですね。ニコ生では「手が震えてるから羽生さんが勝つ」みたいな解説もあって楽しかったです。
いつか名人戦で見てみたいですね。
神がかっていたのか悪魔が降りたのか、なぜあんなことが起こるのか……見ているだけでも恐ろしく感じました。アマチュアなのに。
コメントありがとうございます。
アマチュアでも恐ろしいくらいですから、プロだったらもっと恐ろしい気持ちになるのかも。
一日経ってもいろんな方が「大逆転」という表現をされていますし。
それにしても行方八段の表情が忘れられないですね。