将棋界からの手紙

皆さん、はじめまして。かっしー(@kash1n0k1_kei)と申します。

プロでもライターでもない、一介の将棋ファンである私が寄稿させていただいても良いものか悩みました。

せっかくの機会ですので、ライトな将棋ファンなりにふんわりと、将棋への想いを書かせていただきます。

将棋は「手紙を書くこと」に似ていると思っています。

誰に書くのか、何を伝えるのか、用紙を選び、封筒を選ぶ。メールかもしれません。相手はどう思っているのか、何を考えているのか。人の事を考えるという点では将棋も手紙も同じです。

万年筆で書かれ、シーリングワックスで封をされた重厚な手紙は矢倉でしょうか。ものすごい勢いでやり取りされるメールは横歩取りでしょうか。授業中に友達とこっそりやりとりした手紙は力戦型かもしれません。

スポンサーリンク

久保利明九段からの招待状

私が将棋ファンになったのは、久保利明九段から「将棋への招待状」が届いたからです。

久保九段は私の在学していた高校の同窓生だったのです。在学中は将棋のルールを知っているくらいで、「将棋=羽生善治名人」というくらいの感覚でした。高校卒業後、母校の30周年記念事業に携わり、久保九段の講演を拝聴する機会に恵まれました。

講演の翌日に1通目の「招待状」が届きます。

JT杯で羽生先生を破り優勝されたという情報が入ってきました。前日に講演をされていた久保九段が、将棋界の神話的存在に勝って優勝したなんて驚きばかりでした。

もし負けていたなら「前日に講演なんかしている暇があるなら研究した方がよかったんじゃないか」と言われてしまうかもしれません。それでも、母校のためにと協力してくださったお人柄に惹かれて、久保九段と将棋への興味が増していきました。

招待状再び

そして2013年9月12日に2通目の「招待状」が久保先生から届きます。

第72期順位戦A級3回戦・深浦康市九段対久保利明九段の一局です。記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれませんが、劣勢だった久保九段がひねり出した一手「1九と」。

20150828-86手

諦めなければ、試合終了ではない。将棋には一手で逆転できる面白さと怖さがある。それが将棋の魅力なんだという内容の手紙を受け取った私はますます将棋にのめり込んでいきました。

美しい絵はがき

将棋を始めて、居飛車党になるか振り飛車党になるかの岐路に立っている時、森内俊之九段から「絵はがき」が届きました。重厚で美しい矢倉の絵が描かれた手紙です。受け取った瞬間に「これだ!こういう矢倉を指したい!」という思いが固まりました。

森内九段と言えば「鉄板の受け」が有名ですが、私はそれだけではないと思います。剣術家とでも言いましょうか。真剣を持ってジリジリと間合いを詰め、一瞬のタイミングを逃さず切るというイメージです。

タイミングを誤れば自分が切られてしまう恐れもあるでしょう。しかし、ここぞという時に思い切って踏み込む、森内先生の攻守のギアチェンジに惹かれました。

もっとも美しかった「絵はがき」は2014年の第26期竜王戦第5局、森内名人と渡辺竜王(当時)の一局で指した99手目▲3三桂打でした。

20150828-99手

この局面に関して、森内先生の自戦解説が『将棋世界』2014年2月号18頁にあります。

私にも素人ながらハッキリと攻守のギアが入れ替わった瞬間だとわかりました。大げさかもしれませんが、本気で全身に電流が走ったような感覚だったことを覚えています。その時から、いつか森内先生のような矢倉を指してみたいと思うようになりました。

叩きつけられた質問状

将棋を始めて数年目。本当に少しずつですが、力をつけてきた私の元に「質問状」が届きます。送り主は長谷川優貴女流二段でした。以前から長谷川さんの大ファンで、初めて指導対局を受けたのも長谷川さんでした。

普段はふんわり可愛らしいのに、対局が始まるとキリッとされるギャップが本当に素敵です。あんなに可愛らしいのに棋風は攻め将棋だなんて反則ですね(笑)

先日、約2年ぶりに長谷川さんの指導を受けることができました。長谷川さんの指し手から質問が飛んできます。

「それで強くなれますか」「その手で森内九段に勝てますか」対局中はずっとその質問についての返事を考えます。

以前、長谷川さんに「今の目標は森内先生に矢倉で挑むことです」という大それた夢を話していたのです。

質問状の意味は

対局は矢倉でずっと受ける展開になってしまいました。ジリジリとした中盤に二択を迫られることになります。

「じっと受ける金引き」か「ガツンと攻め込む歩の突き捨て」か。

攻め合うならここしかないと決断した私は、歩を突いてしまいました。そこは金引きの一手だったのです。切り合うタイミングが一瞬早かったため、その後もずっと難しい局面が続いたものの最後は無念の投了でした。

久保九段から「負けた後は悔しくて眠れなくなる」と聞いていましたが、その日の夜は本当に悔しさのあまり眠れませんでした。
 
「楽しいだけでは将棋は強くなれません。苦しい時も必ず出てきます。それでも、かっしーさんは強くなる覚悟はありますか?森内九段に立ち向かう覚悟はありますか?」という長谷川さんからの質問状だったのかもしれません。

私からの返事

将棋の楽しさを教えてくださった久保九段。矢倉の魅力を見せてくださった森内九段。将棋の厳しさを叩きこんでくださった長谷川女流二段。最後に、今ここで取り急ぎ「お返事」を書きたいと思います。

「私は必ず強くなります。どんなに時間がかかっても、絶対に強くなります。」
 
「そして、森内九段に矢倉で挑みたいです。それが私の最大の目標です。」

宣言してしまったからには、本気で強くならないと恥ずかしいですね(笑)

いつか、正式な「お手紙」を盤上で書きたいと思います。

私のつまらない文章をここまで読んでくださってありがとうございました。こんなファンもいるんだなあということだけでも伝わってくれたら嬉しいです。

スポンサーリンク

将棋ワンストップをご覧いただきありがとうございます。ぜひシェアをお願いします

記事の追記や更新の通知はツイッターで行います。フォローをよろしくお願いします!

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。