竜王戦の昇級者決定戦で5連勝しないと引退が確定するという状況に追い込まれていた熊坂学五段。
熊坂学五段が引退、連盟が公式発表。(追記)ただし竜王戦5連勝で現役続行
そんな全勝が必要条件である5番勝負の初戦が2015年5月7日に行われましたが、熊坂五段は石井健太郎四段に敗れ、この日付での引退が確定しました。
戦型は相居飛車に
引退をかけた一戦、振り駒で熊坂五段は後手番に。
振り飛車か対抗形を好むという熊坂五段ですが、本局の戦型は自身2年4ヶ月ぶりの相居飛車(棋譜コメントによる)で、変則的な相矢倉になりました。この大事な一戦で、研究を持ってきたのでしょうか。
詳細な棋譜は日本将棋連盟モバイルでご確認ください。
長考
お互いに入城し厚く囲って中央で小競り合いをしたあと、先手の石井四段は囲いから金を離れさせ中央に戦力をもっていく一手(63手目)。
この一手に、熊坂五段は胡座になって大長考。
棋譜コメントによれば、熊坂五段と旧知の仲である千葉幸生六段がこの局面で検討室を訪れたようです。
1時間27分の長考(持ち時間は5時間)で指した一手は△2二角でした。
この手について、棋譜コメントによれば検討室の伊藤果七段、および千葉六段は「すぐには意図がわからない」という評価。
24手目でも43分考慮していた熊坂五段は、これにより、残り時間が1時間16分に。
一方、石井四段は3時間50分残しており、苦しさが持ち時間に現れていました。
攻める熊坂五段
その後、熊坂五段は玉頭に垂らされた歩を無視して攻めに出て、馬を作る展開に。
ただ、先手の97手目▲4七桂と攻防手を打たれ、馬の活用が難しくなりました。以下の100手目△7四歩で熊坂学五段の残り時間は10分を切りました。
その後、102手目に△5四金と力強く受けた局面の棋譜コメントには
熊坂の指し手からは震えている様子がまったく感じられない
との言葉。106手目には△6六角と王手飛車取り。
しかし・・・
持ち駒を溜めた石井四段が▲4三角と後手玉に詰めろをかけました。
冒険、終わる
この111手目に、熊坂五段は最後の1分を使って考慮し、投了。
石井四段の消費時間は4時間14分、熊坂五段は4時間59分でした。
2002年のプロデビュー(順位戦C級2組)から、日本将棋連盟の制度における最も短い期間でフリークラス陥落を喫し、しかしその悲運が逆に愛されてきた熊坂五段。
フリークラス10年目という、最終年度の快進撃、そして11年目を迎えてなお可能性を残していましたが、これにて冒険は終わりました。
いち早く、親交がある野月浩貴七段がツイート。
くまくん、お疲れ様でした。
— 野月 浩貴 (@nozuki221) 2015, 5月 7
中継記者の銀杏さん。対局前にも、この一戦の意味(5連勝で現役続行)をツイートされていました。
将棋は厳しい。
— 銀杏 (@ginnan81) 2015, 5月 7
以前の記事にも書きましたが、熊坂五段は昨年、地元仙台で「杜の熊さん将棋教室」を始めており、ブログ、ツイッターでも度々その様子を報告しています。
それにしても、この引退確定日の10日後に、38歳の誕生日を迎えるという若さ。
ありがとうございました
私などが書くのもおこがましいことではありますが、熊坂五段、ありがとうございました。お疲れ様でした。
その後の動きもブログやツイッターでお知らせいただけると、将棋ファンとしてはありがたいと思っています。