2002年のプロデビューから、日本将棋連盟の制度上ありえる最も短い期間で順位戦C級2組からフリークラスに陥落し、その悲運が逆にネット上で愛されていた熊坂学五段が、フリークラス10年目の今期もC級2組への昇級(復帰)規定に届かず引退となったことがわかりました。
2015年4月1日、日本将棋連盟のホームページで発表されました。
熊坂学五段、およびフリークラス規定、引退規定については以下の記事を御覧ください。
10年目の快進撃、実らず
上記の記事にもありますが、10年目の前年度(2014年度)は快進撃を見せ、フリークラス脱出が見えてきたと思われました。
しかし2014年末から失速。
その後は結果が公表されないNHK杯テレビ将棋トーナメント予選などを戦っており、一般の方からは熊坂五段が勝ったか負けたかわからない、またC2に復帰できたのかどうかわからない、という状態が続きました。
そして先日のNHK杯の予選結果発表。
1勝1敗でこの予選を終えたことがわかりC2への復帰は絶望的に。
竜王戦6組、増田康宏四段戦
前年度最後の対局となったのは、3月21日の竜王戦6組、増田康宏新四段戦。
増田四段はこれまで橋本崇載八段を破るなど好成績をあげたものの、先日は加藤一二三九段に敗れており、調子がいいのか悪いのかわからない状態でした。
結果は、この新四段が熊坂学五段に勝利。
順当といえば順当なのですが、この結果により熊坂五段の現役引退が決定的となりました。
引退日付・最終対局日は未定
熊坂学五段は、2014年に地元仙台で「杜の熊さん将棋教室」を始めました。今後、おそらく当分はこの教室の運営に従事するものと思われます。
ただし、まだ竜王戦6組昇級者決定戦を戦っており、引退日付および最終対局日は未定。
5連勝で現役続行
産経ニュースの記事では、昇級者決定戦で5連勝することでC2復帰となるとされています。が・・・。この場合、引退は撤回されるのかもしれません・・・。それともただの産経ニュースの誤報でしょうか。
追記:
竜王戦を主催する読売新聞の2015年4月2日の将棋欄では、内藤九段らの引退者が紹介された上、熊坂五段について以下のように記されています。
ただし熊坂は竜王戦で5連勝すればフリークラス返上、現役続行となる
これで産経、読売、2つのニュース・ソースからの情報があったということで、「5連勝で現役続行」は本当なのだと思います。しかも竜王戦主催の読売新聞ということで、確実な情報だと思います。(ちなみに、この日の読売新聞には第28期竜王戦1組3回戦(三浦弘行九段VS屋敷伸之九段)の第6譜が掲載されているのですが、電王戦出場経験がある2人で、解説も電王戦FINAL出場の阿久津主税八段ということで、3人の電王戦への思いも少し載っていますので興味がある方は読んでみてください)
一縷の望みがあります。
プロフィール
宮城県仙台市の出身。37歳。
中原誠十六世名人門下。
1991年に6級で奨励会に入会、2002年に四段プロデビュー。
2005年度から順位戦フリークラス。
2011年にフリークラス規定による五段昇段。
2015年3月31日時点では竜王戦6組、順位戦はフリークラス。
2015年4月1日フリークラス規定により引退が発表される。引退日付・最終対局日は未定。
上記にもあるように、もしかしたら現役復帰の可能性もあります。当サイトでは今後も熊坂五段に何か動きがありましたら、記事にしたい所存です。
コメント
5組に昇級したら後2年竜王戦に参加できる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%8B%E5%A3%AB_(%E5%B0%86%E6%A3%8B)
コメントありがとうございます!
そうなると引退日や最終対局はずいぶん先のことになりますね。5連勝の先ですが・・・。
私や、ここを訪れる方にとって有益な情報をありがとうございます。今後とも宜しくお願いします。
厳密に考えると、こういう状況では?
> 2015年4月1日フリークラス規定により引退が発表される
フリークラスの資格を失ったので、「フリークラスからC級2組への昇級規定」は適用できない。
仮に昇級しても、引退棋士は順位戦や他機戦には参加できない。
http://www.shogi.or.jp/kisen/junni/kitei.html
> 引退日付・最終対局日は未定。
数年延長する可能性はなくはない。
http://www.shogi.or.jp/topics/news/2010/07/post_307.html
http://tamarunoboru.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-dae9.html
コメントありがとうございます!
有益な情報をありがとうございます。
ご指摘いただいた解釈で間違いないと思います。
ただ、この記事に書きましたように、産経ニュースには、以下のように書いてあるのです。
5連勝が必要、つまり、5連勝でC2復帰、と読めるので、普通に規定を解釈した場合と産経ニュースの記事では矛盾していると思いました。
産経の誤報なのですかね・・・記事に追記しましたが、読売新聞も同様に5連勝で現役続行としています。
「フリークラス返上」の解釈が難しいですが、この場合はフリークラスの身分を失う、即ちプレイヤーとしては引退(ただし竜王戦には継続参加の可能性あり)、という意味合いではないでしょうか。
少なくとも将棋連盟から引退が発表された以上、順位戦への復帰が実現することは考えにくいように思います。
また、これは個人的な印象でしかないかもしれませんが、「フリクラ」という略称はネット上では時に揶揄する言葉として使われることが多い気がします。なのでニュース記事として書くのであれば(タイトルであっても)「フリークラス」と略さずに書いて頂けると有難く思います。
コメントありがとうございます!
2点のご指摘ありがとうございます。
1点目ですが、なるほど、他の解釈がありましたか。
「返上」とは確かに奇妙な書き方ですよね。
いずれにしても5連勝の向こう側にある希望ですが・・・。もう少し、推移を見守りたいと思います。
2点目、そうでしたか。まったく意識せずに単なる略称として使用していました。
私自身でも調べてみます。以後、記事にする際には気をつけたいと思います。
貴重なご指摘をありがとうございました。
熊坂五段は残念ながら引退決定となりましたが、今回のC2復帰報道は誤報、あるいは
読売新聞の盤外戦術という見方が出来ます。
引退規定を読めば、1から4の条件を10年以内に満たさない場合は引退となるが
正しく、10年経過後にいかなる成績をあげても条件は満たさないわけです。
http://www.shogi.or.jp/kisen/junni/kitei.html
ある観戦記者はツイッターで「年度をまたぐ」が記載されていないのはおかしい、と言ってますが、そもそも棋戦優勝と良い所どりは年間対局数と年間勝星と違い1年以内に達成する性質のものではないため、「年度をまたぐ」云々と記載する必要がないのです。https://twitter.com/ginnan81/status/579822653659160578
基本的な国語力のない者が記者をやっているのは甚だ如何ですが、まあ仕方ありません。
他方、読売新聞は竜王戦を主催し、過去に順位戦の引退規定で他棋戦に参加できなく
なることに異議をとなえ、引退決定後も一定条件の元他棋戦に参加可能であると
連盟の規定が変更された経緯があります。
http://www.shogi.or.jp/topics/2010/07/post-307.html
http://tamarunoboru.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-dae9.html
今回、4月1日時点で連盟が引退を発表し直後の2日に読売が「5連勝でC2復帰可能」と記事を出したのは、もし熊坂五段が5連勝しても竜王戦のみ参加継続可能であるのは不当であると、追加記事を出す狙いがあったと読めます。
コメントありがとうございます!
詳細な記述をありがとうございます。参考になるご意見だと思います。
熊坂五段引退が決まってしまったので、私もちょっと、無責任ながら自分の見解を書いてみます。
将棋連盟は会員200人ぐらいの組織だと思いますが、(私の経験上ですが)これよりよほど大きな組織でも、
本件のような細かい規定はきっちりと決まっていないことがあると思います。一般の会社でいうと退職の規定にあたりますが、
その時々に応じて柔軟に運用されると思います。
また、これも私の経験上ですが、規定というのは組織の法律ですから、本来もっとゴチャゴチャと複雑に書かれているはず。
ホームページ上に掲載されているのは、本来の(組織内部だけに示されている)規定の要約のような文章、組織外向けへの説明文かと思います。
ホームページ上のようなこざっぱりとした書き方は、本来の規定の書き方としてはありえないのかなと思います。
したがってホームページ上の文章は、個人的にはそれほど重要視していません。
そういう意味では、連盟の引退発表のしかたにもうちょっと、一工夫あってもいいかと思いました。
ただし、連盟モバイルの棋譜中継では5連勝で現役続行と書かれていましたので、これを一応、準公式な見解とみなしている、
というのが私の考えです。
上記で書いた「柔軟な運用」または「内部文書には書かれていること」のどちらかによりそうなったと思います。
貴重なコメントをいただきましてありがとうございます。
ご返信ありがとうございます。
内部文書と公開文書に違いがあるという「一般的な話」はそのとおりだと思います。しかし、今回のC2復帰可能という見解に難があるのは、
1.引退規定の変遷が、3月31日付引退→残りの対局最終消化日→条件付きで該当する棋戦のみ続行可能(反対解釈すれば順位戦含む他の棋戦は不可)と詳細に公開されているにもかかわらず、10年超えの順位戦復帰が可能という、現在公開されている規定と完全に矛盾する新たな規定が存在するなら公開されてしかるべきである。
2.10年間の猶予があったにもかかわらず、10年を超えて条件を達成した場合にC2復帰を認めるという「柔軟だが甘い運用」をすることに合理性がない。一般事業会社の退職規定と違い、棋士は対局という勝負で競う以上、そういった例外的運用は他の棋士から批判されるのではないか。
3.モバイル棋譜中継の記事について、将棋連盟の公式見解かどうか確認できない。先程述べた事と同様一記者の誤解の可能性がある。
できれば将棋連盟の理事の方から公的な見解を伺いたいのですが、私のような部外者では中々難しいと思います。
再コメントありがとうございます。
1は、なるほど、それはわかりやすい形で公開されたほうがよかったですね。
2は、これは難しいところですが、一般の会社でもありえそうな気がします。
表向きは誰も言わないでしょうが「え?あの人、定年過ぎたのに何でまだ会社にいるの?それでなんで私より給料もらってるの」というような話はあります。
コンプライアンスに厳しく、株主の監視が厳しい上場会社でもあります。合理性はないですが、その組織なりの何かがあるということかと。
3これは私も自信ないです。もし、どうしてもということであればメールかお手紙するしかないと思います。
立ち話で話すようなことでもないと思いますし。担当理事は総務部の中川八段でしょうかね。
ただ、今後も滅多にない(二度とないかも)ことなので、今となっては・・・というのが私の気持ちです。
コメント補足いただきありがとうございます。