2015年7月4日に行われた第86期棋聖戦5番勝負、羽生善治棋聖VS豊島将之七段の第3局は、後手番の羽生善治棋聖が勝利。
これでシリーズの対戦成績は羽生棋聖からみて2勝1敗となりました。
豊島七段は、先手の勝率が悪いといわれている矢倉で果敢に臨みましたが敗れました。
詳しい棋譜は棋聖戦中継サイトでご覧ください。
矢倉シリーズに
戦型は第1局、第2局に続き本局でも矢倉に。
先手の豊島七段は早囲いで、角をぶつける脇システムを採用しました。
44手目、後手の羽生棋聖は端からの攻めを見せる△9二飛。後手が攻めの主導権を握ります。
48手目、先手の銀が2六に出たのを見て△8四銀と攻めの姿勢を鮮明にします。しかし歩がない後手。攻めはつながるのか。
後手は端で棒銀をさばいて(銀香交換)、桂馬を跳ねる。先手は銀を立って受ける。
ニコニコ生放送で解説をしていた飯島栄治七段が驚いたのが次の一手。
△7四歩。先手から▲7四歩と突いて桂馬を取りたいぐらいなのに、そこにあえて△7四歩。それでも角道を通して攻めをつなげたいということか。この辺りからは感想戦でも長い時間かけて検討されました。詳しくは上に掲載した棋譜の中に後程追記されると思います。
羽生棋聖は飛車を見捨てて先手陣に迫りました。このあたりの局面は後手の攻めが細いとも思われました。
特に次の76手目の△6四香は、飯島栄治七段があげた9つの候補手の中に存在しなかった手(飯島七段の候補手は、△8五銀、△8一香、△6五香、△6四角、△7六銀、△6五銀、△8三香、△8二香、△9七香成)。
普通ではない手を選んだのは、形勢不利とみてのことなのか、それともこれが最善なのか。
9つ全ての候補を外し、罰ゲームとしてノニジュースを飲む飯島七段。聞き手の竹部さゆり女流三段もお付き合い。
9択候補をあげて外した解説陣。ノニジュースを一気飲みで気合の入れなおしです。 pic.twitter.com/xveJ705mHQ
— 日本将棋連盟モバイル (@shogi_mobile) 2015, 7月 4
(終局後、トラウマになる飯島七段)
打ち上げにて。飯島先生『やべぇ、このワインがノニジュースに見えてきた(笑)』 pic.twitter.com/3EEUebttPC
— team遊び駒 (@asobinikitene) 2015, 7月 4
それはさておき、79手目、ついに先手が反撃。しかしその代償に角はタダ取りされる。
86手目、攻めの銀を攻められる先手。銀を引いては攻めの目がなくなり、かといって銀を助けるにはどうすれば。このあたりでは形勢が後手に傾いていたようです。
先手は最後に攻めを見せますが。
後手が冷静に対処し、次の手を見て先手が投了。
これで羽生棋聖は防衛まであと1勝としました。
先手矢倉、不遇の時代
本局は中盤、後手の攻めが細いと見られましたが、終わってみればやっぱり後手が勝利。前述のようにこのシリーズは「矢倉シリーズ」ですが、ここまで後手が3戦全勝しています。
さらに今年に入ってからのタイトル戦では、棋王戦第2局、王将戦第3局、名人戦第1局でも先手の矢倉が敗れています。
今年のタイトル戦で先手の矢倉が唯一勝利したのは名人戦第4局ですが、これは羽生名人が「鬼神」「恐ろしいものを見た」「バケモン」などと言われた大逆転の末の勝利。
先手の矢倉は1勝6敗ですが、実質的には7戦全敗と言ってもいいと思います。それほどまでに後手番の対策が優秀なのでしょうか。
後手も勝率が高い
そんなこともあってか、タイトル戦では最近後手がよく勝っています。
今年の棋王戦、王将戦、名人戦、棋聖戦(ここまで)の後手からみた勝敗は1-2、3-4、4-1、3-0。
特に今年度に入ってから(4月以降)の名人戦、今回の棋聖戦だけをみれば後手の7勝1敗、勝率.875。(なおこの1敗は上記の大逆転)。
今年度に限れば、実質後手の全勝と言ってもよさそう。
それでも矢倉
豊島七段はなぜ分が悪い矢倉を選んだのか。本当は分が悪くないのか。あえてこの困難な冒険に挑んでいるのか。
羽生棋聖はこの状況を見て、次局どの戦型を採用するのか。
(ここまで書いて気付いたのですが、前局でも同じように先手矢倉不利の記事を書いていました。もう3週間ぐらい前のことで、その間に叡王戦も開幕して、ちょっと記憶が・・・。両方の記事を読まれた方、デジャヴではありません。申し訳ございません)
しかしこの先手番の矢倉不利の状況が続けば、次回も同じような記事を書くかもしれません。
そんな注目の第86期棋聖戦第4局は7月15日、新潟県新潟市の高島屋で行われます。
コメント
記事の掲載から、かなり日が経ってしまいましたが、久しぶりに投稿させてもらいます。
途中で先手番の”先後同形”になって、飯島七段が「シュール」と言いながら、青い枠のない
“ヒフミンアイ”の映像で楽しませてくれた時がありました。
この時点で私は、どのように豊島七段が攻めていくのかと期待していて、盤面が映った時に
無意識のうちに右側を凝視していました。
しかし、その後は盤面の映像に切り替わる度に左半分に集中させられることになり、個人的
には予想と期待を裏切られて、この対局も大いに楽しめました。
そういえば、飯島七段がの9つの候補手も、全て6筋より左側でしたね。
因みにノニジュースは、独立行政法人 国立健康・栄養研究所で運営している”「健康食品」
の安全性・有効性情報” というサイトでも調べることができました。
以下のリンクから、記述に辿り着きました。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail184.html
竹部女流の感覚には、絶対ついていけそうにない・・・。
この対局から中2日という日程での王位戦第1局にも勝利した羽生王位には、開いた口が塞が
りません。いつものことですが、・・・。
棋聖戦第4局では、ぜひ先手の羽生棋聖に”矢倉”で楽しませてもらえることを期待してしま
うのは、虫が良すぎるでしょうかねぇ・・・。
コメントありがとうございます。はいお久しぶりです。
そうですね、後手番から動いて、その攻めがつながるのか切れるのかをハラハラとしながら見守る時間が多かったように思います。たしかに、その攻防はほとんど左半分で発生しましたね。
この後の王位戦も後手番が勝利。
今年度は後手番が8勝1敗だったかと思いますが、その1敗も例の羽生名人の逆転勝利なので、実質的には後手番全勝に近いと思うんです。何が起こっているのか。
ノニ・ジュースは、なんとなく有名なものだったと思います。体にいいとはわかっているんですけど、飲むのがしんどいということで、手に取るまでには至りませんよね。しかしそれが竹部女流の魅力です。
一時の反省期間を経て、なにかまたやらかしそうな雰囲気はありますが。竹部女流にはTwitterフォローしてもらっているので下手なことは書けません。
棋聖戦は、こうなったら矢倉が続くのかがひとつ焦点になりそうですね。いやありえると思いますよ、矢倉。先手が望めばなりそうな気がします。ここまで矢倉が続くと解説がすごい重要だと思うんです。これまでとの違いとか解説して欲しいですし。
ただ、次局のニコニコ生放送の解説は鈴木大介八段ということで、まさかの振り飛車とか・・・。
コメントありがとうございます。
解説者に対局が影響されるというのは叡王戦の高橋-田中九段戦の矢倉が連想されますね。
朝塚田九段の顔見てふと普段やらない8四歩選んだって言ってましたね。
正直そこまで叡王戦へ気合い入ってないのかなと思ってしましましたがf^_^;)
飯島7段がさすがに矢倉はもう無いと思う、
異常だと言ってましたし予想手が外れまくっててかわいそうだったので期待を込めて横歩取りか角換わりを予想します。
コメントありがとうございます。
なるほど、その会話は聞き逃していたかもしれないです。
高橋九段はブログで叡王戦について「ありがたい」など好意的に書いていたと思うので、せっかくの中継もあることなので、盛り上げたい意図があったのかもしれないです。
この手の話(解説者にあわせた戦型になるとか)は冗談なのかどうなのかわかりませんが、たまにありますよね。
しかしタイトル戦でやるかはわかりませんが。
ただ、今度は先手が羽生棋聖なので、もう色々可能性がありそうで。序盤から見逃せない戦いになりそうで、楽しみです。
コメントありがとうございます。
羽生さん,王位戦第一局と棋聖戦第四局の間の今週末,新潟でチェスの大会に出場していますね。どうなっているんだ?
ところで,タイトル戦で,羽生さんは立会人の顔を見て戦型を選ぶと言われていますね。棋聖戦第四局の立会人は田中虎彦九段。とすると矢倉か・・・
コメントありがとうございます。
羽生棋聖がチェス大会で勝利を飾ったというのはニュースで読みました。それでニュースになってしまうのが羽生棋聖。意識して予定を詰め込んでいるのでしょうかというぐらいですね。しかも研究とかもしているでしょうから、本当に恐れいります。
ええ、戦型については、羽生棋聖の都市伝説(?)というか、それは聴いたことがあります。だから本当に序盤から目が離せない。
コメントありがとうございます。