まず、なぞかけを一発。
「谷川浩司九段の将棋とかけて、真の落語家の姿と解く。その心は・・・」
下手くそかもしれませんが、以下でご紹介する桂文枝師匠の言葉を参考に作ってみました。
このなぞかけの答え(・・・の部分)はこの記事の中で出てきます。
谷川浩司会長の紫綬褒章受章パーティーで
2015年4月19日に兵庫県神戸市の「ANAクラウンプラザホテル神戸」で開催された日本将棋連盟会長・谷川浩司九段の紫綬褒章受章記念パーティー(谷川浩司九段の紫綬褒章受章をお祝いする会)には、地元関西を中心に各界から豪華なゲストが集まりました。発起人の一覧だけでもこのような豪華さ。
兵庫県知事 井戸敏三
公益社団法人関西経済連合会 会長 森 詳介
公益社団法人 上方落語協会 会長 桂 文枝
大阪商業大学 学長 谷岡一郎
株式会社杏林堂薬局 取締役会長 渥美雅之
公益社団法人日本将棋連盟棋士会会長 佐藤康光
以下のツイートは田中寅彦九段による現地レポート。
谷川会長の紫綬褒章お祝いする会ナウ pic.twitter.com/vIEYc7pLUF
— 田中寅彦 (@tora_ejison) 2015, 4月 19
以下のツイートは朝日新聞の将棋担当である村瀬信也さんの現地レポート。
谷川浩司九段の紫綬褒章受章記念パーティー、羽生善治名人と囲碁の井山裕太名人とのトークショーがあり、羽生名人は「光速の寄せを間近で一番経験しているのは私だと思う」。竜王戦の「△5七桂」や「△7七桂」が思い浮かびます(誤字を直しました)。 pic.twitter.com/dofMpu9zQu
— 村瀬信也 (@murase_yodan) 2015, 4月 19
多くの棋士も参加したこのパーティーの詳しい様子が、雑誌「将棋世界」の2015年7月号の「関西本部棋士室24時」(文は池田将之さん)に掲載されていますので、少しご紹介します。
豪華なスピーチ
羽生善治名人が「光速の寄せを一番近くで体験しているのは私」とトークショーで語ったり、佐藤康光九段や郷田真隆王将が「谷川先生の対局姿の美しさを感じている」とお祝いを述べたり、森内俊之九段が「谷川先生にあこがれてこの世界に入った。昨年の竜王戦ではハワイでアロハシャツに着替えられ、新しい一面を見させていただいた気持ち」と述べるなど、その挨拶やお祝いのメッセージはどれも素晴らしいのですが、とりわけ面白かったのが落語家の桂文枝師匠のスピーチ。
桂文枝師匠は「新婚さん、いらっしゃーい!」のイメージが強烈なのですが、もちろん本業は落語家で、上方落語協会の会長であり、自らも2006年に紫綬褒章を受章されています。また、このパーティーの開催地である神戸市に、寄席を作る計画を提案したことがあるということで、落語の普及にも熱心な方です。
将棋と落語の共通点
では、桂文枝師匠のスピーチ。まず前振り。
将棋の先生と我々落語家は座布団の上で商売するところはよく似ているが、内容が全然違う。将棋は相手が1人で、勝敗がはっきりしている
そしていよいよ本題へ。
ただ、私と谷川会長が似ているところがひとつあります。
それは『ヨセ』を大事にするところです。
さすが師匠!!
この一手しかありません。
感動的ですらあります。しかしこのあとさらに・・・
兵庫県知事にまさかの陳情
桂文枝師匠は続けて、このスピーチを聞いていたパーティーの発起人の1人、井戸敏三兵庫県知事に対して以下のように呼びかけ。
なんとか谷川さんの『寄せ』のように『光速』で『寄席』を作るご協力をお願いします
すさまじい一手が飛んできました。
前述のとおり、文枝師匠は神戸市に寄席を作る計画を提案しています。ここでこの陳情が飛んでくるとは。
解説
谷川会長といえば、その「光速の寄せ」といわれる終盤力が知られます。「寄せ」とは相手玉を追い詰める指し回しのことであり、「光速」と呼ばれるほど速く敵玉に迫ります。
一方、桂文枝師匠は上方落語協会会長という役職にあって、近年はテレビ出演などの派手な仕事よりも、落語家としての本業である寄席を大事にしているそうです。神戸市に寄席を作るという計画も、落語の魅力を伝えるためだと思います。
そういうわけで、冒頭のなぞかけが成立します。
「谷川浩司九段の将棋とかけて、真の落語家の姿と解く。その心は、ヨセを大事にするでしょう」
寄席を大事にするのが真の落語家の姿なのかは、疑問の余地があるかもしれません(私(管理人)は落語に詳しくないです)。
船江恒平五段、パパになる
ところで、この日は船江恒平五段の奥さんの出産予定日だったらしいです。
船江五段はパーティーの受付係の業務をこなした後、奥さんの元へ。後に無事出産したという一報があったとのこと。第一子で、男の子のようです。
谷川会長も、この出産の一報を聞いて頬を緩ませたとのことです。
おめでとうございます。
なお4月19日は貞升南女流初段と同じ誕生日です。
大人たちの使命
話を戻します。
このパーティーが神戸市で開催されたのは、谷川会長の希望によるものだったそうです。
自身の出身地ということもありますが、今年2015年が「震災(阪神・淡路大震災)から20年になり、その年に生まれた赤ちゃんがなんとか成人して社会に出ようという年月。神戸がお世話になりましたので、今度は東北に向けてできるだけのことをさせていただきたい。東北の震災の年に生まれたお子さんが成人するまでは全国の大人たちが助けることが使命」という理由も、谷川会長から語られたとのこと。
東日本大震災の寄付金を公益財団法人みちのく未来基金へ寄付(日本将棋連盟)
その他、詳しくは、将棋世界7月号をご覧ください。
棋士・谷川浩司
私は将棋ファン歴が浅く、谷川会長の全盛期は存じておりません。それどころか、私の最初の谷川会長の記憶は、A級順位戦でB1陥落の危機に瀕する姿。そして忙しい会長としての業務。「光速の寄せ」はどこに。このパーティーでも谷川会長は「ここ4年ほどは理事・会長としてはそれなりの仕事ができたと思うが、棋士としては成績だけでなく、内容も皆様に顔向けできないような不甲斐ないところがあった」と話しておられました。
そこで、先日発表された日本将棋連盟の新役員体制。
よく見たら谷川浩司会長の担当部署が、これまで「文化芸術振興局」だったのが、今回は空欄、つまり担当なしに。
これはもしや、少しは忙しさが緩和されるのでしょうか。だとすれば・・・。
棋士・谷川浩司、そして「光速の寄せ」の復活を願わずにはいられません。