2015年7月20日にYouTubeで公開された「Juice=Juice」(ハロー!プロジェクトの女性5人組アイドルグループ)の曲「CHOICE & CHANCE」のMVに、将棋が使われているのでご紹介します。
この動画です。
アイドルのMVに将棋を使ってくれるとはありがたいことです。
しかし、将棋ファン的には「ちょっと間違っているのではないかな」と思う箇所があると思います。いや、別に間違っていてもいいんですよ。むしろ間違ってくれたからこそ、こうやってネタになったわけで・・・。
見つけてみてください。
余談ですが、井道千尋女流初段に似ているメンバーがいると思いませんか。サブリーダーの金澤朋子さんという方のようです。二番目に髪が短いメンバー。静止画だとあまり似てないですが、動画だと似ているように感じました。主観ですが可愛いです。
全駒状態
間違い、見つかったでしょうか?
私は細かい性格ですので、気になることがありました。
まず、本局(本曲?)の局面は以下です。手番は手前のJuice=Juice。便宜上、この記事ではJuice=Juice側を先手(▲)、相手を後手(△)と表記します。持ち駒は不明。
動画では2分12秒ぐらいからこの局面が映っています。
私なりにやってきた
と歌っているところです。(この局面の壊滅的状況は「私なり」が過ぎたかもしれません)
お気づきでしょうか。先手は全駒されています。全駒とは、玉以外の全ての駒を取った(先手から見れば取られた)状態のことです。後手はこれだけ攻めているにも関わらず、成駒がひとつもないです。舐められています。まあそれはよしとします。
間違いは詰みにあります。6九にある先手玉が詰んでますね。詰んでるんですが、何か違和感が。
王手放置
先手玉は、後手の6八の金と5九の飛車に王手されています。この状況、将棋で発生し得えるでしょうか。
仮に△6八金がないとしましょう。
この局面でも先手玉は詰んでいます。
一方、仮に△5九飛がないとしましょう。
この局面でも先手玉は詰んでいます。
つまり、MVの局面より前に、既に先手玉は詰んでいたのです。
したがって、MVの局面は先手が「王手を放置した」とか「王手を回避しない手を指した」とかしないと現れないはずです。
一方後手は、先手玉が詰んでいるはずなのに、それを指摘せず対局を継続したことになります。
投了優先の原則
王手放置は反則です。この場合どうなるのでしょうか。
日本将棋連盟の対局規定では、
1. 対局中に反則を犯した対局者は即負けとなる。
2. 両対局者が反則に気がつかずに対局を続行し、終局前に反則行為が確認された場合には、反則が行われた時点に戻して反則負けが成立する。
4. 終局後は反則行為の有無にかかわらず、投了時の勝敗が優先する(投了の優先)。
(以下略)
とされています。4は「投了優先の原則」と呼ばれるもの。つまり反則に気付かれないまま相手が投了すると、Juice=Juiceは勝利することができます。
「間違っているのでは」と書きましたが、反則を指摘されるまでは対局が続行されますので、厳密にはこれは「間違いではない」と思われます。
諦めない
MVの2分22秒付近で、右奥の女性(おそらく植村あかりさん)が「え?これさっきも詰んでたよね?」と指で指摘しているようにも見えます。
その直後、Juice=Juiceは
きっと人生はチャンスの連続さ こんな自分だってできるはず
と歌っています。屈辱的な全駒をされて、自玉の詰みを迎えてもなお、本局を諦めていないのでしょう。
そして2分35秒付近では、植村あかりさんが▲7九玉という、またしても王手を回避しない一手。
歌詞では、以下のように歌われています。
迷った時には新しい道行くしかない
まさに新しい道、王手を回避しないという定跡にはない、いや、将棋にはない道に踏み出す。
先手玉は相変わらず、後手の6八の金と5九の飛車の王手からは逃れておらず、新たに7七の飛車や8八の金や6七の桂馬が直撃しています。
この曲の最後の方には、以下の様な歌詞もあります。
どんな困難も自ら買って出るくらい 山だって谷だって挑みたい
Juice=Juiceの玉の動きは、「困難を買って出たい」というこの歌詞を体現しています。
待った
しかし2分58秒付近では、これはさすがに新し過ぎて困難過ぎる道だと思ったのか、植村あかりさんは「待った」をして再び玉を6九に戻します。「待った」は反則ですが、もちろん「投了優先の原則」は適用されます。
そして3分34秒付近。なんとセンターの女性(たぶん宮本佳林さん)が自玉をひっくり返してしまいます。
▲6九玉成。
通常、玉の裏は何も書かれていないはず。
しかし、本曲で使われている玉の裏には「J」の文字が。
やらぬ後悔より やっちまった後悔がしたい
宮本佳林さんは、自玉、いや「自J」の駒を掴んだかと思いきや、それを盤上で滑らせ敵玉をぶっ飛ばします。
▲5一J!!
4分11秒付近、メンバー一同、カメラ目線で納得の表情。
異次元世界
もう一つの間違いっぽい事象は、将棋盤を縦横逆(90度回転した状態)で使っていることですね。
何かの演出なのでしょうか。
それとも、もはやこれは将棋ではなく、彼女たちはそもそもベクトルの違う異次元にいるという解釈でしょうか。
確かに、歌詞にはそのような示唆が滲んでいます。
かりん
ところで、この曲のセンターで座ったり踊ってたりしているのは、先ほど自Jで敵玉をぶっ飛ばした宮本佳林さん(だと思われる)ですが、「みやもと かりん」さんと読みます。
何かの偶然か、将棋アイドルとして定着してきた乃木坂46の伊藤かりんさんと同じ「かりん」さんですね。
将棋界に、アイドル業界から二人目の「かりん」様降臨です。
もしかしたら、今後コラボ展開とかあるかもしれません。続報がありましたらお伝えしていきたいと思います。
将棋っぽいダンス
CHOICE & CHANCEのMVでは、右手を前に突き出して将棋の手を指す時の動作のようなダンスをする場面もあります。4分15秒付近などです。MVを再掲します。
MVをよく見れば、ダンスの時はメンバーのうち3人が白と黒の服を着ており、これは将棋の先手▲後手△を表すのかもしれません。
さらに、将棋の時の服装はチェック柄。これは将棋の盤面を表すのではないでしょうか。
他にもMVの中に将棋要素はあるかもしれません。探してみるのも面白いと思います。
Juice=Juiceさん、将棋を使って異次元世界を表現した興味深いPVを、ありがとうございました。
コメント
やはり記事になりましたか。
私もMV拝見しました。
通常ありえない盤面からの、まさかの▲5一J突!。
つまりこれが谷川会長の新著『常識外の一手』の宣伝につながるわけですね。わかります。
コメントありがとうございます。
そうですね、当サイトの動画にもあがっていたので、チェックしていました。
よく見たらたしかに5一の地点にJが移動していますね。▲6九玉成からの▲5一J!
この二手は指されてみれば納得、ではない手順ではありますが。記事に追記してみました。
常識外過ぎる一手でしょう。若いからこその手順といえるかもしれません。谷川会長がこの手順を解説される日を楽しみにしています。
コメントありがとうございます。
面白いからもうちょっと考えてみると、3手前の局面は合法であったと考えられますね。3手前は6八金と5九飛が無い(持駒か盤上の他の場所にいた)状態で玉が5八にいて、金か飛車のどちらかで王手をかけられ、合法の4七では無く、反則の6九に引いたということですね。
ちなみに4七に逃げた場合も結局詰んでいた事がわかります。飛車か金が持駒だった場合は、どちらも3七に打って以外詰み(金が持駒の場合は5九飛の王手から逃げてきた事になるので、3七金、5六玉、6六角成以外。飛車が持ち駒の場合は3七飛、5六玉、3六飛成に、玉がどこに逃げても6六角成まで)。金と飛車が両方盤上にあったとすると、3手前の局面はは6八の金が7八に居て、そこで5九飛(打ちまたは不成)で王手した事になりますが、ここで4七に逃げても5八飛成から結構複雑ですが詰んでしまいます(つまり5九飛の王手は無駄な手だった)。何故か盤上・持駒含めてに2枚しか無い2四と4四にある歩も絡む詰みです(5八飛成、同玉、5九桂成、4七玉、6六角成に、3六玉と逃げられない)。
ここまで自身の負けを読み切って、相手を混乱させる為にワザと王手を回避しない6九玉を指したのでしょう。もしかしたら相手は反則に対応できないソフトだったのかも。
コメントありがとうございます。補足ありがとうございます。
私も3手前のことに思いを馳せはしましたが、途中で色々挫折していたところでした。
複雑な方向の詰みを避けてあえて王手を回避しないとは、そこまで分析はしておりませんでした。さすが(?)です。
そして、相手が誰なのか、というのはこれはこれで一つ興味深い研究テーマではありますが、確かにソフトという見方もあると思います。
人間だったら全駒するまで指さないだろうとか、反則の処理に欠陥があるソフトのだろうとか、また、もしかしたら駒を成ることすら知らないソフトなのかもしれません。
盤が縦横逆ということで、「異世界」という風にざっくりと結論付けましたが、もしかしたらこの縦横逆ということがソフトに何らかの影響を与えていたのかもしれませんね。
余談ですが私はこの記事を書くにあたり50回ぐらいMVを見たのですが、たぶんカラオケで歌えるぐらいにはなったと思います。
モーニング娘。の系列なのだと思いますが、初めて見たのですが、なかなか、複雑そうなダンスも一生懸命やっていて良さそうに思いました。異世界の将棋がそう思わせてくれたのかもしれません。
コメントありがとうございます。
たまたまMV見てたら将棋が出てきて、オォと思ったらありえない局面にオォ?
後手が二手連続で指して反則かと思いましたが、王手無視してまた王手は変ですね。
他の考えでは、5対5のリレー将棋で双方にド素人がいる説、
先手側全員がそもそも投了のルールを知らない説、
先手玉ステルスモード説、などいかがでしょうか。
コメントありがとうございます。
こうやって色々な可能性を検討できるのが将棋ファンならではだと思います。
仮説を証明する手がかりはありませんが、私の将棋であって将棋でない異次元将棋説が自分なりには最有力だと考えています。
リレー対局説、ルール知らない説は有力ではあります。かなり真面目な説ですね。私はファンタジーを求めてしまいました。
ステルスモード(?)説は敵に玉が見つからないという説だと思いますが、これはあり得るかもしれません。しかもファンタジー、いやメルヘン的要素もあります。
もう一つ有力なのはチェスで言うステイルメイト説で、将棋としてはルールが整備されていない部分なのかもしれません。
コメントありがとうございます。
Juice=Juiceファンかつ将棋覚えたてです。検索でたどり着きました。
なにせ超初心者なので、あまりに絶望的な局面に驚きつつも、ひっくり返していいゾーンじゃなくない?くらいのつっこみしか思いつきませんでした。Jが出てからは、あ、ルールとか気にせず行けって歌だもんね、と。
将棋に詳しい方のこの局面に至るまでの推察等、とても面白いです。
勉強になりました!
コメントありがとうございます。
この記事で勉強になったのであればよかったです。なるべく、初心者の方にとってもわかりやすい記事をということで作っていますので、このようなコメントをいただきますと、嬉しく思います。
なにか不備があればご指摘いただければと思います。
PVは、いろいろな推察ができるように作ってあるように思います。まだ覚えたてということですが、また理解が進んでからPVを観るとさらに発見があるかもしれません。
今後ともよろしくお願い致します。コメントありがとうございます。