女性のお笑いコンビの「日本エレキテル連合」さんが「セミ将棋」という斬新な将棋を開発したようですので、ご紹介します。
日本エレキテル連合さんは「ダメよ~ダメダメ」で2014年の流行語大賞を受賞した名コンビ。
彼女たちによる「セミ将棋」は、目隠し将棋や軍人将棋的な要素もある、そして虫が苦手な人には不利(閲覧にも注意を要します)という、ある意味で画期的なものです。
閲覧には注意を要します
繰り返します。虫が苦手な人は閲覧を控えたほうが良いかもしれません。
「セミ将棋」ということで、セミの抜け殻を将棋の駒に見立てて使用しています。
どの抜け殻がどの駒なのか一見、見分けはつきません。ただ、個体差があるので分かる人には分かると思います。
また、女性が突然叫ぶ場面があるので、閲覧される場合は音量も注意して下さい。女性の金切り声が苦手な人も注意願います。
この動画です。30分以上あります。対局が行われるのは7分ぐらいから。ただ、先手は初手に長考するので実質8分ぐらいからです。
先手となった左の女性が橋本小雪さん、後手となった右の女性が中野聡子さん。ボケとツッコミの関係ではないそうですが、中野さんがネタ作りをしているそうです。
この動画では、橋本さんは将棋のルールは知っているがセミが苦手、中野さんはセミは得意だが将棋は苦手、という設定のようです。
日本エレキテル連合ファンの方は彼女たちの姿を楽しむ、虫ファンの方はセミの抜け殻を愛でる、そして将棋ファンの方は対局を楽しむという、3者にとってお得な動画です。
解説
ここからは本局の流れを解説します。
見ている人にとっても、セミの抜け殻ばかりだと混乱すると思いますので、解説は普通の駒で行います。
まず注目は初期配置。
後手の中野さんの角のセミが一路ずれて配置されていますが、それに気づかぬまま対局は開始されます。
先手の橋本さんは初手で長考します。セミが苦手なので、なかなか駒に触れないようです。意を決して、初手に飛車先の歩を突く▲2六歩を選択。長考した割には普通の手。
後手の中野さんも飛車先を突く△8四歩。先手はさらに飛車先を突いて、戦型としては、相掛かり模様の序盤戦に。
ここで、トラブルが。
将棋のルールを知らない中野さんが自分の駒の動きを橋本さんに確認したのですが、ルールを知ってるはずの橋本さんが駒の動きを間違えて教えてしまいます(飛車と角を間違えた)。
その結果、中野さんは角の頭の歩を突くという斬新な一手。
しかも前述したようにこの角の配置はそもそも間違っているのです。
しかし対局は続行。
後手が飛車を一つだけ浮くという不可解な動きを見せたところで、先手から開戦。
かと思いきや、さっきの勘違い(飛車と角が逆)が続いていたようで、後手の飛車の動きが不正とみなされ、ここで「待った」となり局面は2手前に戻されました。
後手は角の先だと思っている飛車の先の歩を突く(そろそろわけがわからない)。
先手は飛車を浮き、後手の△8六歩を許しません。
ただし、二人は8二にある後手の駒が角だと思っているので、この先手の飛車浮きはいかにも不可解です。
ですがとにかく、後手が角道を開けたところで、再び先手から開戦。
後手が歩を取って、先手が飛車で取り返す。
ここで二人は、ようやく後手の飛車と角を逆だと認識していたことに気づきます。大丈夫です。まだ間違った動きはしていません。角の初期配置が間違っていることを除けば。
8二の駒が飛車だと知った後手は、とりあえず飛車を浮いてみる。
先手は敵陣に歩のセミを打ち込み攻勢をかける。
ここで、後手から△2三歩と打てば、初期配置で角を一路ずらした効果によって飛車を撃退できそうではありますが、それは無視して飛車を中央に旋回させ、攻め合いを目指します。
先手は堂々と歩のセミを成る。初めての成駒。セミの抜け殻の裏側が露わになる。グロテスク。
一方、後手は敵陣に歩を垂らします。陣形を乱す一手。
しかし、これは二歩という初歩的な反則。だが両者それに気づかない。セミ将棋だと二歩に気づきにくいのだと思います。
なお、たとえ反則であっても指摘を受けないかぎり、その対局は続行されます。日本将棋連盟の対局規定では、
1. 対局中に反則を犯した対局者は即負けとなる。
2. 両対局者が反則に気がつかずに対局を続行し、終局前に反則行為が確認された場合には、反則が行われた時点に戻して反則負けが成立する。
4. 終局後は反則行為の有無にかかわらず、投了時の勝敗が優先する(投了の優先)。
(以下略)
とされています。仮に、二歩を指摘されぬまま先手が投了すれば、後手が勝利となります。
この歩を垂らした効果はなんなのでしょうか。とにかく、先手はあっさりと垂らされた歩を取り去ります。
その後、いろいろあって後手陣は半分ほど壊滅。
後手、やけくそになったか、敵の香車の目の前に飛車を進める△5五飛。
何か罠が潜んでるのか?しかし先手は構わず▲同香。
またいろいろあって、先手から後手玉に王手をかける。
後手は金を移動合して王手を防いだものの、1三にいたはずの先手の竜がいつのまにか2二に移動しており、先手はそれを利用して▲3一竜と再び王手。
後手玉は逃げ、先手は竜を切って追いかける。そして数手後、▲4三桂。
これは先手の疑問手。
後手が逆転模様に。
△5三金と飛車を取るのがわかりやすいか。あるいは△4三角、△5五歩など、敵の攻め駒を取り去れば安全になる。しかし、後手玉は謎の動き。
先手、意を決して二枚目の竜を切る攻撃。
後手はあっさりと玉で取り返す。
この局面で後手の中野さんは、先手の攻めが続かないとみたのか、「参りましたと言って」と先手に投了を促しました。先手の橋本さんは、セミをつかむのがもう嫌になったのか「参りました」と投了。
終始劣勢だった後手の中野さんが逆転勝利を収めました。
感想戦は行われず、中野さんがセミの抜け殻を吹きとばして、なにもかもが終了しました。
先手はまだ優勢だった!
攻めが続かない、セミの抜け殻がもう嫌になった、という2つの要素により投了した先手。
しかし実際は、投了図では先手がまだ優勢のようです。
普通に▲5四香、あるいは▲5一桂成、▲4一銀などで先手優勢。
後手は終盤に一瞬逆転したものの、投了の局面では持駒が飛車2枚だけであり使いにくく、先手陣に打ち込む隙もないですし、敗勢です。
それでも最後は、「セミ将棋」ならではの「セミ耐性」が勝負を分ける結果となりました。
棋力向上になるか
このような将棋に、何の価値があるのでしょうか。
適当なことを言って申し訳ないのですが、もしかしたら、駒をよく観察する癖がつたり、憧れの脳内将棋盤を持つための訓練として良いかもしれません。プロ棋士や、アマでも高段者なら持っていて、盤がなくても将棋ができるという脳内の将棋盤。
それによって、棋力向上が期待できる可能性も、あると思います。
また、虫の抜け殻好きの人にとっては、将棋に興味を持つひとつのきっかけとして優れているかもしれません。
次回に期待・・・
この記事の冒頭、閲覧注意を繰り返しましたが、実は私も虫は苦手です。
記事を書くために動画を20回ぐらい見て、辛くなってきました。
日本エレキテル連合さん、できれば次回はもっと可愛い駒で・・・
そう、例えばブライス人形などでよろしくお願いしたいと思います。
ブライス将棋。
彼女たちのキャラクターにあっていると思います。関係者の方、ぜひ、よろしくお願い致します。
コメント
管理人です。
一部に誤字がありました。お詫びして訂正いたします。
×「東京の局面」→○「投了の局面」
×「角道を止めた」→○「角道を開けた」
通常、△4四歩は(自分の)角道を止める一手なのですが、この将棋の場合、後手の角が一路ずれていたことにより、△4四歩は角道を開ける一手となります。
この角道を開ける一手により後手は△8七角成とできるのですが、その後自分の飛車を5四に旋回させたことにより再び角道を止めてしまっています。
長い解説おつかれさマンモス!
(虫が苦手なのに、20回も動画を見たとはすばらしすぎます)。
>>このような将棋に、何の価値があるのでしょうか。
いやーわかりません(笑)
とりあえず、橋本さんは将棋の仕事もできそうだ ということがわかりました。
橋本八段と一緒に将棋イベントとかできそうじゃないですか?
将棋盤を汚すな
kewpiehoney様:
コメントありがとうございます。
橋本さんもルールを知っている程度なんだと思いますが、どのセミがなんの駒か、ほとんど正確に把握されていたので、素養はあるかもしれません。
いやしかしハッシーと将棋イベントはちょっと辛いかも。でも、同じ芸能界(ハッシーはモデルになりましたし、芸能界では彼女たちのほうが先輩ですか)にいるので接点はあるかもしれませんね。
レンコン様:
コメントありがとうございます。
そうですね、気にされる方は、いらっしゃるかもしれません。
私も最初見た時は、えっ、と思いましたが、それほど粗末に扱っているわけではないのでよいかなと思いました。
そのようなことも含めて、もし彼女たちに理解を促すのであれば、YouTubeにコメントするか、彼女たちのツイッターか事務所にコンタクトを取ってみてはいかがでしょうか。彼女たちは悪気があってやっているようには見えませんでしたので・・・。
皆様、コメントありがとうございます。
将棋の駒をいろいろなモノに置き換えてやってみるのも面白いかもしれませんね。
例えば、囲碁やオセロの石とか。プロ棋士がそれで対局したらどうなるのか見てみたいものです。
あと、将棋盤に実際の自動車を乗せたこともありますから、セミの抜け殻くらい問題ないでしょう(笑)。
コメントありがとうございます。
そうですね、囲碁やオセロの石はおそらく個体差がないでしょうし、半分目隠し将棋みたいな感じなんだと思いますね。
これはいいアイディアというか、見ている人は集中力を切らすわけにはいかない(大盤も石でやれば)ので新しい将棋の見方ができそうです。
怪しいのは持ち駒です。
セミ将棋でも持ち駒が何だったか迷う場面がありましたが・・・流石にプロは持ち駒は迷わないですかね。
コメントありがとうございます。