我らが将棋界のドラゴンキング・糸谷哲郎竜王が、オセロの世界チャンピオンである「オセロキング」こと伊藤純哉さんにオセロ対決を挑みました。
これは2015年6月17日のTBS系「最強文化系コロシアム 天下一文道会!!」で対決の模様が放送されたもの。
伊藤純哉さんは、オセロワールドカップ2013の優勝者でありオセロ七段。番組内では「オセロキング」の他、「キング伊藤」とも呼ばれていました。たしか、この男にはかつて豊川孝弘七段も挑み、敗れていたと思います。
平手戦
竜王の対局の前に、前座として劇団ひとりさんと厚切りジェイソンさんがキング伊藤と対局。お2人は、ハンデ戦で(囲碁でいう置き石のように、初めから黒石を置くハンデ)挑みましたが、あっさりと敗戦。
そこで、糸谷竜王が満を持して登場。キング伊藤は「将棋の竜王とのことなので、平手で」と手合いを提案。竜王は「僭越ながら、ノーハンデで打たせていただくのは光栄ですから。ありがたい事です」と受けました。
どうやら竜王はオセロの本を読んで研究してきたようで、「オセロ・・・もまあ将棋と同じような読み・・・が、効くゲームだと思いますので。どれだけ読めるか試してみようと思います。最強の方なので胸を借りて教えていただいて。まあ、あわよくばということですね」と意気込みを語りました。
定石通りの序盤
先手(黒)は糸谷竜王。
将棋の持ち駒を盤上に打つときのような手つきで、初手を指しました。
そこから数手進んだ以下の局面。
糸谷竜王は少考で以下の手を選択。
本局の解説者によると「竜王は序盤の定石の知識がないはず。それなのに打ったこの手はトッププレーヤーの手」だそうです。
ワン・オブ・ベストの選択
さらに数手進んだ以下の局面。序盤の重要な局面です。
ここで竜王の指した手は以下。
この手に解説者は「お!これは素晴らしいですよ。これはワン・オブ・ベスト(ONE OF BEST)なムーブであると長年の研究でわかっている手」と驚きを隠せない様子。「こういうの簡単にできちゃうって、棋士ってすっごいですね」と竜王を褒めました。
さすが我らが竜王。
しかし、以下の局面で竜王は10分超の長考に沈みました(持ち時間は不明。たぶん時間は制限されていない)。
竜王は「いやー難しいですね。この辺が一番読む手数が増える」と対局中にも関わらず心境を語ってくれました。
オセロでは、盤上で何度も石の白黒が反転するため、将棋より読みにくいらしいです。
竜王が長考の結果指した手は以下。
この手、番組内では解説がありませんでしたが、私(管理人)の手元のソフトによればベストの選択でした。
劣勢に
それからしばらく進んだ局面が以下。
黒が盤面全体を制圧しているかに見える局面ですが、竜王は「いやぁ」と苦悶の表情。よく見れば次に黒が置けるのはD1とF1だけ。
ここで、キング伊藤の持ち技である「伊藤ダンス」(指の動きで先を読むという独特のスタイルの思考方法)が炸裂。
あっというまに以下の局面に。
竜王が石を置けるマスがなくなり、ついにパスを余儀なくされました。
その後もパスを連発させられ、敗勢に。
投了
結局、竜王は最後まで打って「負けました」と投了しました。
豊川七段は確か途中で投了したと思いますが、竜王は悔しくて投げきれなかったのでしょうか。
終局後、糸谷竜王は「負けたのは悔しいですけど、オセロキングの実力が見えた思いです」と感想を述べ、キング伊藤も「序盤・中盤・・・中盤の途中まで互角の凄く緊張した試合でした」と竜王の実力をたたえました。
次なる挑戦者は
このVTRをスタジオで視聴していた東野幸治さんは「竜王が、プライドも立場もある中来ていただいてありがとうございます」とお礼を述べていました。以前東野さんはニコニコ生放送で将棋番組に出演されていたと思うので、それなりに将棋界のことはわかっているはず。
そんな東野さん、「またオセロ対決あるなら、そろそろ羽生さん(羽生善治名人)来ていただけないですかね」とも話していました。
誰がいいのか
忙しい糸谷竜王がどれほど研究して臨んだのかはわかりませんが、中盤での「ワン・オブ・ベスト」な一手をひねり出しただけでも素晴らしい。将棋棋士の能力を示したともいえそうです。
確かに、次回の挑戦者、番組としては羽生名人が盛り上がるでしょうけど、本当は研究時間をたくさんとれる若手棋士の方が勝てる可能性がありそう。
あと、ゲームの複雑さの指標の一つである「可能な着手数」でいうと、将棋は10の226乗なのに対し、オセロは10の60乗と言われ、より単純なので「大局観」より「読み」が重要視されるはず。棋士は若い方がたくさん読むことができる(はず)なので、経験や大局観で勝負する世代よりオセロをする上では有利かと思います。
とにかく、糸谷哲郎竜王、お疲れ様でした。次は誰なのかわかりませんが、期待しています。
オセロ覚えにくい
突然ですが問題です。以下の局面で糸谷竜王が指した次の手はなんでしょう?
答えはこの記事中にあった(記事の上の方をもう一度見て下さい)のですが、将棋と違ってオセロの棋譜の覚えにくいこと。同じボードゲームでもかなり違いますね・・・。
以上、ありがとうございました。
コメント
「10の226乗」も「10の60乗」も、自分の実感としては大して変わらないwww
竜王の和服姿と終局後の表情から、かなり本気モードで臨んでいたと思えたんですが、さすがオセロキングが最後は実力出した感じですかね。
オセロは一手の緩手で即逆転されるのが、厳しいゲームのように感じました。
他の番組企画も楽しかったので、次回は、森内九段とトランプチャンピオンの大富豪決戦なんかが見たいですね。
あなあき様:
コメントありがとうございます。
そのように感じられるのは当然だと思います。
しかし両者には10の166乗倍という圧倒的な差が存在します。この差はチェスの可能な着手数より10の46乗倍ほど多い計算になります。
お分かりになりましたでしょうか。いや、私もよくわかんないです。
観る将リーマン様:
コメントありがとうございます。
和服でしたね。豊川七段の時はスーツだったかなと。竜王はあの体格ですから和服の方が似合いますね。
逆転のゲームということですが、多分ゲームの複雑度からいうと、単純な順にオセロ→チェス→将棋→囲碁だと思うので、単純な分一手の価値というのが大きいのだと思います。しかもオセロの性質からして終盤の方が重要そうですしね。それに、やってみて気付いたんですが、読むの難しいです。1手で何枚も駒が動く(ひっくり返る)ので。
森内九段は大富豪大会に呼ばれるほどの強豪ですから、あるとしたら呼ばれてもおかしくないです。見てみたいなぁと思いますけどNHKの深夜とかでひっそりやってくれてもいいです。
皆様コメントありがとうございます。
昔の記事ですが、いくつか……
「指す」
オセロは、囲碁と同じように「打つ」ものだと思います。
「投了」
オセロでは勝敗の優劣を石数で競うこともあり、将棋や囲碁と違って敗勢でも最後まで打つことが多いようです。
また、糸谷竜王の打ち手が誉められているのは、芸人さんが例えば矢倉を完成させたときに「さすが、すばらしい囲いですね」と言うような、リップサービスの域をでないような表現に感じます。
不快なコメントでしたら申し訳ありません。