プロ編入試験を経て41歳でプロ棋士となった今泉健司四段が、2015年5月13日ついにデビューしました。
舞台は第5期加古川青流戦の開幕戦。
加古川青流戦は、プロ棋士の四段、奨励会三段リーグの上位、アマ3名、女流棋士2名が参加して行われる新人の登竜門のような棋戦です。
初手、▲5六歩
デビュー戦の相手は奨励会三段リーグに在籍する慶田義法三段。詳しい棋譜は日本将棋連盟モバイルでご確認ください。
振り駒で先手となった今泉健司四段の本局の初手、そしてプロとしての初手は▲5六歩。
プロ棋士の初手は普通、角道を開ける▲7六歩か飛車先を突く▲2六歩が一般的であり(この2パターンで95%ぐらいでしょうか)、▲5六歩は珍しい手。
ただ、今泉四段にとっては平常の手。プロ編入試験でも先手となった2局は両方初手▲5六歩でした。
対局後のインタビューで、今泉四段は対局開始時について「ものすごく緊張していた」と語っています。
中飛車に
戦型はもちろん、先手が飛車を中央に振って中飛車に。
美濃囲いにして、角を交換し、相手の飛車先を逆襲する攻めを見せました。
対局後インタビューでは「駒がぶつかってから気持ちが落ち着いた」とのこと。
後手の慶田三段は敵陣に角を打ち込んで対抗。成り込んだ竜を取られる手を無視して桂馬を跳ね、攻めをつなげました。
今泉四段はその攻めを受けきり、自陣がすっきりとなりました。後手に金銀をすべて渡しましたが、それでも後手からは攻めがないとみていた模様。
後手の歩切れをついて反撃。
その後も着実な攻めで後手玉を追い詰めました。
デビューを白星で飾る
109手目▲1三歩成を見て慶田三段が投了。
今泉四段のプロデビュー戦、結果は、勝利となりました。
対局後、今泉四段は「結果が出てよかった。ここがこれから僕の戦場となって、それほど楽しくできるわけもなく色々思いはあった」(日本将棋連盟モバイルの棋譜コメント)と一局を振り返っていました。
二回戦で敗退
なお、この結果により今泉四段は二回戦に進出。
同日に行われた二回戦では、稲葉聡アマ(稲葉陽七段の兄で元奨励会員)と対戦しました。
振り駒で後手となった今泉四段はデビュー戦に続き中飛車を採用。しかし中盤から稲葉アマが押し始め、今泉四段は根性の粘りを見せたものの、191手の熱戦の末に敗戦。
今泉四段は、デビュー戦でのプロ初の白星に続き、1日のうちにプロ初の黒星も喫し、加古川青流戦は二回戦敗退となりました。
コメント
初手▲56歩は今となっては当たり前の1手に含めてもいいぐらいですよ。
先手中飛車にする場合に▲76歩△34歩となると▲56歩と突けませんから
(△88角成~△57角があるため)
コメントありがとうございます。
△8八角成 △5七角ってなんとかならないんでしたっけ。
私は将棋が弱いのでなんとも言えないのがつらいところですが、先入観がないコンピュータさんとかはいろんな手を指しますし、今泉さんが活躍すればもっとこの初手が広がるかもしれませんね。
コメントありがとうございます。
▲76歩△84歩なら▲56歩と突けます。
△88角成~△57角には▲68角で大丈夫です。
(△84歩が邪魔してるため後手は右側に角を成れません)
しかし、先手中飛車が有力とされているために、振り飛車党相手に
2手目△84歩は中飛車にされて面白くないと思う棋士が多いため、
▲76歩には△34歩が主流となっているのです。
そういう意味もあって、先手中飛車をやるつもりなら初手▲56歩が
ある意味「当たり前」になっているのです。
コメント、解説ありがとうございます。
なるほど、先手が中飛車をやるとしたら初手▲5六歩かなり有力だとわかりました。
私がなかなかお目にかかれないのは、そもそも振り飛車党が少ないからかもしれないですね。
居飛車党への転向が相次いでいますが、北浜八段は振り飛車党になりましたし、今泉さんや新四段にも振り飛車する方がいるようですし、これから
お目にかかる機会が増えるかもしれないですね。
重ね重ね、解説有り難うございます。これからもよろしくおねがいします。
今年の朝日オープンの準決勝(伊藤真-羽生) なんかがありますね。
ちなみに伊藤真五段は朝日オープン本線の1回戦 (千日手局)、準々決勝でも
初手▲56歩でした。
詳しくは中継サイトでどうぞ。
再々コメントありがとうございます。
見たはずなのにすっかり忘れていました。
決勝で羽生名人が中飛車を採用したのはインパクトが強かったですね。しかもきっちり勝利。
もう一度見てみます。有り難うございます。