2015年7月29日のニコニコ生放送「週刊文春デジタル特別企画! 羽生善治×川上量生 特別対談「将棋の未来、人間とコンピュータの未来」」では、羽生善治名人と電王戦・叡王戦を主催するドワンゴの川上量生会長が、主に人工知能をテーマに対談を行いました。
この対談の内容は8月5日発売の週刊文春8月13・20日夏の特大号に掲載されると告知されていましたが、私(管理人)は最後までニコ生を視聴したので、改めて文春を読む必要はないかなと考えていました。
しかし、機会があったのでいまさらですが読んでみました。
するとそこには、ニコ生では触れられなかった内容も書かれていました。
羽生名人は叡王戦に出場するか
対談の最後に、羽生名人が今期(第1期)エントリーしなかった叡王戦についての話がありました。叡王戦はエントリー制の棋戦で、優勝者はコンピュータとの決戦である「電王戦」に出場します。
ニコニコ生放送で放送された叡王戦に関する対談の内容は、川上会長が
儀礼的に聞きますが、今後、羽生さんは叡王戦に出ていただけるんですか?
と聞いて、羽生名人が
はあ、あのぉ、そうですね、ちょっとまた来年になったら考えます。すみません
と答えただけでした。
しかし、文春を読んでみると、それ以外のことも書かれているじゃないですか!!
電王戦の対局場
文春では、川上会長が、羽生名人が叡王戦に出場して優勝して電王戦を戦うことになった場合、その対局場について
南禅寺と交渉したい
と述べているのです。
ニコ生でそんなこと言ってました?!
今年3、4月に行われた将棋電王戦FINALでは、二条城、高知城、五稜郭、薬師寺といった歴史的な場所で対局が行われています。
羽生名人が出場した際には、南禅寺がふさわしいということでしょうか。
南禅寺の決戦
南禅寺は、京都市左京区にある寺。ホームページによれば、
正応4年(1291年)、亀山法皇が無関普門禅師(大明国師)を開山に迎えて開創
とのことで、Wikipediaの南禅寺のページでは
日本最初の勅願禅寺であり、京都五山および鎌倉五山の上におかれる別格扱いの寺院で、日本の全ての禅寺のなかで最も高い格式をもつ。
と書かれています。
この南禅寺では「南禅寺の決戦」と呼ばれる伝説的な将棋の対局が行われています。
1937年2月5日から11日に行われた木村義雄(十四世名人)vs阪田三吉(贈名人・王将)。
1937年(昭和12年)2月5日から7日間、持ち時間30時間というルールの下で行われた。(中略)この対局は後手となった阪田が2手目に△9四歩と指した(「阪田の端歩突き」)。
関西名人を称していた阪田を破り、東西に分裂していた将棋界を統一した一戦として、当時のマスコミに宣伝された一戦である。近代将棋の第一人者の木村と、関西将棋の第一人者阪田の決戦ということもあり、大評判となった。
詳しくは上記リンク先参照。
羽生名人と川上会長の対談の中では、「南禅寺の決戦」について触れられた場面がありました。
人間は「30時間」という異常に長い持ち時間で力を発揮できるのか、という話題の時です。現在存在する棋戦で最も長い持ち時間は名人戦の9時間なので、30時間という持ち時間は相当異常です。
持ち時間30時間で人間は
人間vsコンピュータ将棋ソフトの対局において、公平なルールとは何なのか。
人間は時間がなくなると焦ってミスが出る。2014年大晦日に行われた森下卓九段vsコンピュータ将棋ソフト「ツツカナ」の対局は、異例の秒読み10分、継盤使用可能というルールで行われた(想定された時間内には決着が付かず、森下九段の判定勝ちとされた)。
電王戦FINAL第5局終了後の記者会見で川上会長は、
人間とコンピュータの公平なルールは存在しない
異種格闘技戦なので、人間とコンピュータが戦うのがおかしい。フェアな戦いというのは元々存在しない
人間と同じルールでやるというのは見せかけのフェアです
と話していました。
将棋電王戦FINAL「ソフト事前貸し出しルール」反対派はソフト開発者5人中1人
では人間が最も力を発揮できる持ち時間は何時間なのか。
南禅寺の決戦では、1人30時間という持ち時間を採用したが「それでパフォーマンスが上がったかと言われたら、たぶん上がっていない」(羽生名人)。
ではソフトが最も力を発揮できる条件は。現在は25分などの短時間が主流であるが、ソフト同士なので「30時間でも50時間でも無制限にやったらどうか。それで1年間ぐらいやった方が公平になるんじゃないか」(羽生名人)。
ただ、公平かどうかと、観ている人が面白いと感じるかどうかは違うので、折り合いを付けないといけない。「それは全ての将棋ファンが理解しているわけじゃないし、説明が難しい」(川上会長)。
第二次南禅寺の決戦
南禅寺の決戦は、東西に分かれていた将棋界が再び一つになったという意味でも歴史的な出来事なのだと思います。
私はこの事情には詳しくないので、トンチンカンだったら申し訳ないのですが、南禅寺の決戦は東西の将棋界の統一の象徴であり、「第二次南禅寺の決戦」が行われるとすれば、人類とコンピュータの共存共栄の象徴である、と川上会長は意図されたのかもしれません。
その時の対局ルールはどうなるのでしょうか?公平性と面白さを突き詰めた結果、持ち時間30時間とか・・・。いやまさか。
この対談が掲載されている週刊文春は8月5日発売。普通であれば、1週間後の12日には新しい号が出て書店からは撤去されますが、この号は特大号(2週間分扱い)なので、書店によってはもう1週間置かれている可能性もあると思います。興味がある方はぜひどうぞ。
以上、ありがとうございました。
コメント
囲碁では、最後の世襲制本因坊である本因坊秀哉の引退碁として、木谷実との
持ち時間40時間の囲碁がありますね。打ち掛け20回で決着しました。
(私の知る限り囲碁将棋通じてこれが一番持ち時間の長い対局かと)
月に1度、朝10時から夕方18時まででそこで封じ手指し掛けを1年で12回やれば
だいたい持ち時間40時間になると思うので、そういう企画があってもいいのかなと思います。
コメントありがとうございます。
へえ!40時間!!打ち掛け20回ですか。凄まじい戦いですね。
2日制の対局でも「1日目で終わってしまうのではないか」という進行があると思いますが、40時間も対局時間があると終わる時間が読めないというか、大変だと思うんですが囲碁はまだ読みやすいんですかね。
ご提案の企画も、1月から始まったとして果たして12月まで続くのか、7月ぐらいでどちらかが投了してしまうのか、という運営上の難しさはあると思います。
思えばタイトル戦は、地元のファンに喜んでもらうということもありますので、こういうのは難しいのかもしれませんが、特別対局ならありかもしれません。
あと、棋士としては負担が大きいのかも。封じ手、1ヶ月も開封されないわけですし。もしかしたら1日一手も指さずおわるとかもあるかもしれません。やっぱり特別対局とか現役を退いた棋士がやるのがよさそうですね。
情報、コメントありがとうございます。