羽生善治名人がこれまで1817局の公式戦を対局(2015年4月21日時点)した中で、その玉(または王)が行ったことがない盤上の地点はどこか?
(ただし後手の場合は1一を9九と読みます。つまり羽生玉の初期地点は常に5八とします)
誰もが疑問に思うその問いに、中村修九段が答えをくれました。
これは2015年4月22日にニコニコ生放送で中継された第73期名人戦(羽生善治名人VS行方尚史八段)第2局1日目の解説に登場したときに、発表してくれたもの。
答えを知らない方は考えてみてください。
ヒントは、敵陣3段目(◯三)が1ヶ所、2段目(◯二)が3ヶ所、そして1段目(◯一)が6ヶ所で合計10ヶ所です。
羽生王将の旅
この日の対局は非常にゆっくりとした進行。ニコ生解説では過去の棋譜の振り返りなどをして、時間を消化していました。
それでもなかなか対局が進行しないため、解説の中村修九段が「じゃあね、ここでアンケートをしましょう!羽生『王将』の旅!」と言い出しました。
そして、羽生名人の「王将」が盤上、行ったことがない場所を「調べてきた」と述べました。
その研究に、聞き手の山口恵梨子女流初段も「さすがです!先生!」と感動。私(管理人)も感動しました。
そこで冒頭のクイズが出題されました(実際にはもう少し細切れに出題されました)。10ヶ所、どの地点でしょうか?
では、正解発表。
3三玉はない
まず3三玉は旅したことがないそうです。ただし2回、入られたことはあるのだとか。相手は森下卓九段と、木村一基八段。森下九段戦は持将棋に、木村八段の玉は捕まってしまったそうです。
さて、あと9ヶ所は一気に発表してしまいます。
正解発表
こちらです。
3三に加えて、2二、2五、2七、そして1一、1二、1四、1五、1六、1八が行ったことない地点。
羽生名人はオールラウンダーですが、どちらかと言うと居飛車が多いので、盤面左側から入玉するケースが多いのだと思われます。
ありがとう中村修九段
中村九段は、このクイズの途中「こんなことで時間潰していていいのだろうか」とか「すみません、くだらないことに、真面目にアンケートで付き合っていただいてありがとうございます」とかおっしゃっていました。
いやいや、とても面白いクイズです。中村九段は「細かい字でいっぱい書かれた」(山口女流証言)、ノートをご持参されていました。
この研究で羽生名人を攻略できるのでしょうか。とてもそうは思えません。しかしこのような地道な基礎研究は、誰にでもできることではありません。
中村九段、このような有意義な研究を、ありがとうございました。