2015年2月14日に行われた第8回朝日杯将棋オープン戦は、まず準決勝で羽生善治名人が伊藤真吾五段を、渡辺明二冠が豊島将之七段をそれぞれ下しました。
そして昨年と同じ羽生善治名人と渡辺明二冠の決勝となりました。
準決勝、羽生善治名人VS伊藤真吾五段
準決勝、羽生名人VS伊藤五段は、先手の伊藤五段が初手に▲5六歩として中飛車に。その後先手から5筋で歩を交換し、両者とも序盤で時間を使う展開となりました。持ち時間が40分という早指しで、伊藤五段が序盤に時間を使いすぎていることに、解説の山崎隆之八段は少し不満そうにしていました。
詳しい棋譜はこちらからで見ていただくとしまして、中盤から羽生名人が端攻めで伊藤五段の美濃囲いを攻略。決勝に進みました。
一方、渡辺二冠は豊島七段との相矢倉の戦いを制し、決勝に進みました。
決勝、羽生善治名人VS渡辺明二冠
決勝は、羽生名人が先手。
初手から▲7六歩、△8四歩と進んだところでサプライズ。
なんと、羽生名人が三手目に中飛車を目指す▲5六歩。羽生名人の振り飛車、中飛車(しかも先手番で)は相当珍しいはず。
渡辺二冠はこの手に思いっきり驚いたような表情を見せ、宙を見上げるような仕草をしました。
その後は羽生名人が5筋位取りの中飛車に。
解説席の山口恵梨女流初段からは「伊藤五段の意志を継いだ」のではないかという発言も飛び出しました。
伊藤五段が指そうと思っていた形
対局後のインタビューで、羽生名人はこの中飛車について「やってみたいと思っていた」などと話していました。これが伊藤五段に刺激されたものかどうかはわかりません。
ただ、羽生名人と伊藤五段は、準決勝から決勝までの間の休憩中に熱心に準決勝の感想戦をやっていたそうです。しかも、決勝戦の31手目▲4八銀は、決勝の解説席に登場した伊藤五段によれば自身が「指そうと思っていた形」だったそうです。
まさか羽生名人は、伊藤五段が解説席にいるのを見越して、この形を選んだんでしょうか。恐ろしいです。
よく羽生名人を「オールラウンダー」といいますが、決勝の舞台で最強の敵を相手に中飛車を選択するとは、とんでもないオールラウンダーです。
羽生名人が穴熊を攻略
相穴熊となった決勝は、羽生名人が中盤から優勢となりそのまま押し切り勝利。
山口恵梨子女流初段は相変わらず事前準備がよくできており良い聞き手でした。しかも山口女流初段は勝利の決め手となった▲7五香を、解説の山崎八段より早く示しました。
大盤での感想戦では、渡辺二冠が山崎八段の結婚を祝福する場面もありました。羽生名人も釣られて山崎八段を祝福していました。
羽生名人はこれで中原誠十六世名人に並ぶ通算1308勝。この史上3位タイの記録を珍しい中飛車で達成しました。