2015年3月12・13日に行われた第64期王将戦7番勝負第5局は、先手の渡辺明王将が郷田真隆九段を下し3勝目をあげました。
これで渡辺王将は防衛に王手。郷田九段は窮地に立たされました。
流行の角換わり
戦型は、最近流行というかタイトル戦でも散々指されている角換わりに。ほぼ定跡どおりの展開から、郷田真隆九段が50手目に△6三歩と新手を見せました。
これに対し渡辺王将は1時間以上長考。そのまま1日目は封じ手となりました。
△6三歩の評価は
この△6三歩に対し、立会人の田中寅彦九段は「見かけない筋」「打ちにくい手」、1日目のニコ生解説だった所司和晴七段も「見たことがない」とコメント。
2日目の解説に登場した藤井猛九段は「何が狙いかわからない」「苦心の一手ですよね」「これが指したかったわけじゃないと思う」「難しい手ですね。歩切れになっちゃうんでね」と、あまり評価していない様子でした。
藤井九段は「いろんな解説等を読みますとね、なかなか△6三歩は、評判が良くないですね」とも述べました。
関西将棋会館での大盤解説でも阿部隆八段が疑問を呈していたようです。
もう一つの新手・孫の手
郷田真隆九段の今回の新手は盤上にありましたが、前局では背中に「孫の手」という新手を指しました。
本局でもこの格調高い新手は健在でした。
しかしこの手をたびたび繰り出したにもかかわらず、80手目を超えたあたりから劣勢に。そして先手の97手目を見て投了に至りました。
感想戦で
感想戦では、郷田九段が新手△6三歩を指した理由について、つい先日3月8日の第40期棋王戦第3局(▲渡辺明棋王VS△羽生善治名人、渡辺王将が勝利)で、同じ局面から羽生名人が指した△7五歩に疑問を持っていたと明かされました。
△6三歩の後も形勢は微妙だったようで、実際76手目に郷田九段が△3四同金としたところで△1三玉としておけば、後手が良かったようです。この手を指摘したのは立会人の田中寅彦九段。以下のツイートを参照。
熱戦も終わりもうすぐ打ち上げ。
76手目郷田さんの△34同金の所△13王▲41角成△25馬▲32馬△34馬なら?と感想戦で質問したら▲35歩と渡辺さん、でも△76桂で、と言った所で両者凍り付く。
私の読みが当たっていた。 pic.twitter.com/JxaeVHg44y
— 田中寅彦 (@tora_ejison) 2015, 3月 13
対局者は2人とも、この手が見えていなかったとのこと。郷田九段は「簡単な手が・・・」と悔やんでいました。
過密日程の山場を抜ける
渡辺明王将はすでに、棋王戦の防衛戦では挑戦者・羽生善治名人を退けており、またA級順位戦プレーオフでは敗退したことから過密日程の山場を抜けた感じです。
渡辺王将が防衛に王手をかけてのぞむ第6局は、3月19・20日に静岡で行われます。