雑誌「将棋世界」の2016年1月号の付録「現役プロ棋士データブック2016」が面白いのでご紹介します。
将棋世界はわずか800円の激安将棋雑誌であり、週刊将棋が2016年3月で休刊となる状況におきましては貴重な紙媒体の将棋ニュースソースです。
Amazonのキンドル版や楽天のKobo版といった電子版もあり、この記事で取り上げる「付録」だけを購入することもできます。120円です。
但し2016年1月号の付録は「現役プロ棋士データブック2016」の「上」巻であり、頭文字が「あ」~「た」までの棋士が掲載されています。下巻は「た」~「わ」までの棋士で、同2月号の付録となります。
といっても上下巻あわせてわずか240円。将棋世界ごと購入しても1600円です。
内容
内容は、すべてモノクロではありますが、それぞれの棋士について、まず顔写真、名前、段位、棋士番号、竜王戦と順位戦のクラス、生年月日、星座、出身地、奨励会の入会年月と段級、四段昇段日とその時の年齢、身長、体重、血液型、最近4年の年度別成績が掲載されています。
ここまでなら今年4月に発売された「プロ棋士名鑑」と毎年発行される「将棋年鑑」を持っていれば、分かる情報かもしれません。
データブックが面白いのは、各棋士の最近4年間の「手番別勝率」と「平均手数」と「最長・最短手数」のデータが書かれていること。さすがデータブック。更に面白いのは「プロフィール、エピソード」欄が充実していることです。
平均手数
将棋年鑑2015によれば、プロの対局における一局の平均手数はここ5年間110手~112手で推移。
まずこの手数から大きく外れた棋士を探したくなります。ぱっと思いついたのは、島朗九段。投了が早いことで有名なので。データブックを見てみると。
年度 平均手数
2012 94.3
2013 121.9
2014 106.9
2015 100.4
2013年を除けば平均より短い手数で終わっていますが、私のイメージよりは長かったです。平均90手台は4年のうち1回だけ。2013年は最長246手という外れ値が影響したものと思います。
他に手数の短い棋士を探してみると、田中魁秀九段や泉正樹八段、北島忠雄七段、小林裕士七段、阿部健治郎六段が4年間のうち平均90手台が2回、田村康介七段や上野裕和五段は同3回、木下浩一六段は同2回に加え80手台を1回、田丸昇九段は平均90手台が3回に平均80手台が1回、金沢孝史五段は平均80手台を2回記録しています。
逆に手数が長いのは、糸谷哲郎八段や鈴木大介八段が4年間で平均120手台を3回、佐々木慎六段は同2回に平均130手台を1回記録しています。鈴木八段や佐々木六段は振り飛車党ですね。
後手の勝率
将棋では先手がやや有利で勝率が高いのですが、そんな中後手番に強い棋士は誰なのか。
データブックで探してみると、例えば飯塚祐紀七段は最近4年間すべて後手番の勝率の方が高いです。
年度 先手勝率 後手勝率
2012 0.3333 0.6923
2013 0.3077 0.4375
2014 0.3158 0.3571
2015 0.3750 0.3750
2015年度は、データブック上は同率ですが最新の結果を反映すると後手のほうが勝率が高いはず。
他には糸谷哲郎八段や、金井恒太五段も後手の勝率が高い傾向にあります。
これらを見ておくと、「今日の対局は長くなりそう」とか「応援している棋士が振り駒で後手番になったけどむしろ良かった」とか将棋観戦の楽しみ方が広がりそうです。
エピソード
「プロフィール、エピソード欄」は読み物として面白いです。将棋ファンの中では有名なエピソードも多く書かれていますが、私(管理人)はここ2年ぐらいで将棋ファンになった新参者なので、発見も多いです。例えば島朗九段のエピソード欄の
島研のメンバーたち(羽生善治、佐藤康光、森内俊之)には表参道のショップに連れていきセンスを磨かせた
とか、阿部光瑠六段の
小学生の時に『ヒカルの碁』に夢中になり、囲碁のプロ棋士を目指そうと思ったが、ルールを覚えられなくて将棋にスイッチ
とか、田中寅彦九段の
羽生の「やっててよかった、公文式」に対する田中の「やってりゃよかった、公文式」は名ゼリフ
とかですね。その他の棋士もエピソード満載です。
愛称
このデータブックで最も充実していると思うのが「愛称」に関するデータ。おそらく他の書籍の追随を許さないと思います。
阿部隆八段は「こんなん、こっちが必勝だった」という口癖から「こんなん阿部」、糸谷哲郎八段は「怪物」「ダニー」、浦野真彦八段は「ジャパネット浦野」、加藤一二三九段の「ひふみん」、北浜健介八段の「係長」、久保利明九段の「さばきのアーティスト」からの「粘りのアーティスト」、郷田真隆九段の「プリンス(20代の頃)」、佐藤康光九段の「みっくん」「モテ光」など。長年の将棋ファンにとっては当たり前と感じるかもしれませんが、将棋ファン初心者に優しいです。
上巻だけでも楽しめるのですが、下巻は頭文字が「た」~「わ」の棋士ということで、いよいよ羽生善治名人も登場します。もしかして「鬼畜眼鏡」とか書かれているかもしれません。渡辺明竜王も下巻ですがこちらは「魔太郎」が定番でしょうか。2月号が楽しみです。
データブックには、他にもコラムとして棋士の血液型分布や年度ごとの短手数・長手数の対局が書かれています。
この記事ではデータブックのごくごく一部をご紹介しました。付録の割にはかなり充実していると思いますので、まだご覧になっていない方はぜひ手にとってみてください。
コメント
身長、体重、血液型はプロ棋士名鑑には載っていませんでしたが(^^;
棋士の血液型は、将棋ファン歴11年の私でも、意外と知らない物です。
ただ、直近のトップ棋士で、羽生名人(AB型)以外ほぼO型なのは結構有名です。
現在のA級と名人に関して言えば、(段位・敬称略)
A:広瀬、佐藤天
B:屋敷
O:行方、渡辺明、久保、深浦、郷田、森内、佐藤康
AB:羽生
だったと思います。
今度、その将棋世界、手に取ってみます。
ほー
買ってみようかな
渡辺竜王ファン様:
ご指摘ありがとうございます。申し訳ありません、書き方が悪かったです。プロ棋士名鑑”と”将棋年鑑、両方もっていれば分かる情報だと思います(修正しました)。
身長体重血液型は将棋年鑑に載っているのですが、掲載されていない棋士もいらっしゃいますね。このデータブックでも掲載されている棋士と掲載されていない棋士がいらっしゃいます。
名人とA級はそれであっていると思います。棋士全体で見れば偏りはないですが、タイトルホルダーに限るなどするとなぜか偏っているという。将棋世界、手にとって見てください。
匿名様:
将棋世界ごとでもいいですし、電子版だとさらに安いので、お買い得です。確か一部試し読みもできたかと思います。
皆様コメントありがとうございます。