NHK杯、藤原直哉七段と福崎文吾九段の「妙手」が炸裂。一方、清水市代女流は・・・

第65回NHK杯テレビ将棋トーナメント1回戦第8局は、2015年5月24日に放送され、関西のベテラン藤原直哉七段が若手のホープ佐々木勇気五段を破りました。

この対局のキーワードは「妙手」でした。

詳しい棋譜はNHK杯のホームページでご確認ください。

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解説の妙手

この日の解説は福崎文吾九段。

司会の清水市代女流六段とのオープニング・トークではまず福崎九段から妙手が。

清水「最近の調子はいかがでしょうか?」
福崎「はい、けっこう、あのー調子いいですよ!」
清水「どんなところが?」
福崎「体調がね、とりあえず」
清水「そうですか。将棋の方にもいい影響が?」
福崎「そうですね。気分的にもね。清水さんいかがですか?
清水「あはは。(関西弁で)ぼちぼちですね」
福崎「あら」
清水「いかがでしょう?アクセントはあってますか?」
福崎「的確です(?)」

まさかの逆質問。市姫から関西弁を引き出すとはさすがです。いつも緊張気味の清水女流ですが、この日はリラックスしているようにも見えました。

中盤にも福崎九段は「清水さんの将棋は能動的ですからね。初めからじっとしてるのはあまりなかったような気がするんですけどね」と清水女流の棋風を解説するという妙手。清水女流は「そうかもしれない・・・最近は、歳を重ねるごとにゆっくりとしてきましたが」と貴重な自分語りをされておられました。

また、福崎九段はスイス・ジュネーブ生まれの佐々木五段を「貴公子」、一方の藤原七段を「風雪に耐えて30年という感じ」と表現していました。

妙手が出やすい体質

戦型は角換わりに。じっくりとした序盤から、先手の佐々木勇気五段が仕掛けました。

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福崎九段は、藤原七段の棋風について「先ごろ引退された内藤國雄先生に似てらっしゃる。非常に、妙手が出やすい体質といいますかね。煮詰まった局面で非常にいい手が出やすいといいますかね。僕のイメージなんですけどね」と解説していました。この前振り。

佐々木五段の仕掛けは無理があったようで、後手の藤原七段が受けきって入玉含みに。

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一方の佐々木五段も自玉の上部を開拓し、入玉を目指しました。

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迫る放送終了時間

後手は完全に入玉が可能となり、先手も入玉が見える局面。

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福崎九段は「佐々木さんも入玉を考えてますよね。たぶん(持将棋の)点数勝負ですね。ほんとに相入玉ですね。冗談抜きで。持将棋になりそうですけどね」などと解説。

この時点で時刻は11時46分。あと14分で12時となり、NHK杯の放送時間が終了します。もし相入玉だったらあと14分で決着とはとても思えませんが・・・。

視聴者の心配をよそに、藤原七段は△7六歩と打ち捨て、銀で取らせてから敵玉の懐に飛車を打ち込み(△9八飛)勝負に出ます。

kifu20150524-122手

この将棋は佐々木五段の攻めを適切に受けた藤原七段が常に有利でした。そのため、持将棋では悔やまれるということで勝負に出たのだと思いました。

ただ、先手玉の上部は既に開拓が完了。あとは逃げ込むだけの体勢になっていました。ところが。

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△9三銀。この銀打ちは先手玉の入玉を阻止し寄せに行く一手。一見頼りなく孤立しているように見える銀。果たしてこれで入玉を阻止できるのか。

そして放送時間はあと4分。果たして時間通りに終わるのか。前代未聞の来週に持ち越しとなるのか。

佐々木五段は▲8四馬と当てて、打たれた銀を消しにかかります。福崎九段「これ、いい手ですね」。

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この手を指した直後、首を軽くかしげ唇を噛む佐々木五段。藤原七段は頭に手をやりしばし停止。福崎九段「どうしましょう?」。清水女流「どうなってるんですか」。放送時間は残り3分25秒。

その時、藤原七段が竜を滑らせるように7六に捨てました。

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清水女流「ああーー」。福崎九段「あ!すごい手が出ましたね。藤原流の、これは妙手ですね!こういう手がね、体質的にすぐ出る」。

急転直下

この手を見た佐々木五段は潔く投了。放送時間は残り3分。相入玉かと思われましたが、急転直下の決着でした。

先手はこの後、玉で竜を取れば8四の馬を取られて入玉ができなくなり、また▲9五玉とかわしても△9六金と捨て駒を打たれ▲同玉で結局8四の馬を取られ入玉が叶わないと。

福崎九段は「驚きましたね。長年プロやってますけど、こんな見事な『次の一手』は久しぶりに見ましたね。『次の一手(問題)』では出てきますけど、実戦ではなかなかね。最後の最後に、絶妙手が出てしまいましたね。びっくりしました」と解説。

さすが名誉前王座です。前振りが生きた解説もまた妙手でした。

ありがとうございました。

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以下はマニア向けのおまけです。

読みを外した?清水市代女流

大変余計なことかと思いますが、この日の清水市代女流六段の番組冒頭の挨拶パターンは以下でした。

「みなさま・ゴキゲン・司会清水・日曜・選び・読みと技・お楽しみ」

この冒頭挨拶では、「好手妙手の数々を」と述べるパターンもあるのですが、この日は「読みと技の数々」でした。

何のことかわからない方は以下の記事をご覧ください。

NHK杯の清水市代女流の冒頭挨拶はアドリブなのか。セリフをパターン化

さすがの市姫といえど今日の「妙手」炸裂の展開は読めなかったということでしょうか。

なお勝利した藤原直哉七段は二回戦で行方尚史八段と対戦しますので、その時は冒頭で「好手妙手の数々を」の挨拶を期待したいと思います。

以上、ありがとうございました。

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コメント

  1. 観る将リーマン より:

    ボンゴ先生、
    NHK杯だから真面目に解説するのかと思いきや、
    いつもの解説放棄→雑談→漫談コースになってて笑いました。
    さんざん言ってた前フリをしっかり回収させるところに、さすが名誉(将棋漫談)前王座だと思いました。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      見事な伏線回収でしたね。私まだ福崎九段のことあまり知らないのですが、拝見した時はだいたい面白いです。

      最近はNHK杯を観ていると、長い時間の将棋より逆に眠気が・・・ということもある(日曜の午前中ですし)のですが、今回は面白く拝見しました。
      解説が、解説じゃなかった気がするのは私だけじゃなくて良かったです。

      コメントありがとうございます。

  2. ですらー より:

    表題の解説の妙手は、4二と4三の間の金かと思いましたw

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます。

      そういえば!!そういうむちゃくちゃな解説もされていましたね。

      ユニークすぎる。いや他にも確かいろいろ書ききれないぐらいユニークポイントが有りましたよね。
      この回もう一回見たいですね・・・

      コメントありがとうございます。

  3. ojioji より:

    今回の対局の録画を本日視聴。
    福崎九段の楽しいお話しを堪能(^_^)、
    藤原七段の老練?な応手、一旦は快勝に見えたのですが、佐々木五段の上部開拓による逆転の気配、ああ、やはり今回もベテランが息切れするのかとがっかりしかけたところに、
    △9三銀から△7六龍の急転直下。
    おお、身体が震えました。
    テレビの前でひとり、大声で叫び、大拍手。
    本当に良いものを見せてもらいました。
    もったいなくて検索、こちらの記事がいちばんあの感動を共有できましたので、気持ちを伝えたくてコメントしました。
    NHK杯は毎回記事になさっているわけではないのでしょうか。

    • 管理人 管理人 より:

      コメントありがとうございます!

      コメントを読ませていただくと、あの楽しい時のことを思い出します。相入玉模様になって時間が大丈夫なのかと思っていたところの急転直下だったので。
      あれで投了したのも美しかったと思います。

      福崎九段のしゃべりがあの一局を大いに盛り上げてくれました。

      記事を褒めていただきましてありがとうございます!NHK杯は地上波で放送される唯一の棋戦であり重要だとは思っていまして、できれば毎週記事を書きたいところではありますが、自分の棋力(初段です)と相談して、あと私なりに独自性がある記事が書けるかとか、時間があるかとか、色々考えまして、記事にする時としない時があります。

      私の棋力が高ければ色々な視点で記事が書けるのですが(できれば誰かに寄稿してほしいな・・・という気持ちも。いかがですか?こちらご参照ください→お問い合わせ)。

      コメントで感動を共有いただきましてありがとうございます。
      今後とも宜しくお願い致します。

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