藤井聡太の記憶(9)。初めての上座で10連勝。異例のNHK杯結果公表

2017年3月、藤井聡太さんはデビューからの連勝を「8」に伸ばしていましたが、それはまだわずかな一部の人しか、知りませんでした。

なぜなら、2月下旬に行われたNHK杯の予選の結果が公表されておらず、藤井さんが勝っているのか、負けているのか、わからなかったからです。NHK杯や銀河戦といった収録放送されるテレビ棋戦の結果の公表は、以前から議論になっているところです。

藤井さんの登場によって、いろいろと異例のことが将棋界に起こっていきます。一人の棋士がこれほど将棋界を変えていくとは。しかし彼はまだ中学生。その役割を彼に負わせていいのか、心配でもありました。

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ベテランを寄せ付けず9連勝

藤井さんの公式戦9局目は2017年3月16日。竜王戦6組ランキング戦で所司和晴七段との対局。所司七段がブログに対局の流れや感想を書かれていますが、この対局でも藤井さんの桂や角の特徴的な使い方が見られました。

竜王戦6組3回戦藤井聡太四段戦(所司七段ブログ)

「素早い寄せは、緩急自在でさすがでした」と言わしめています。

3月19日に放送があったAbemaTVの非公式戦「炎の七番勝負」では、永瀬拓矢六段に敗れました。永瀬六段は意表のゴキゲン中飛車を採用。この対局は永瀬六段の完勝だったと思います。

藤井さん、上座に座る

藤井さんの公式戦10局目は3月23日。棋王戦予選で、相手は8局目でも対戦したプロ入り同期の大橋貴洸四段。

大橋四段が先に対局室に入って、下座に着座しました。(前回の対局では、大橋四段が上座だったはずです)

後から対局室に入った藤井さんが、下座にいる大橋四段に上座に移動するように伝えたのですが、大橋四段は下座を譲らず。二人はそのとき「棋士番号」に関する話をしていたようです。

大橋四段は珍しく三間飛車を採用。前回の大逆転負けを取り返す意気込みが感じられました。

【管理人の所感のコーナー(上座・下座問題)】

対局室には上座と下座があり、上位者が上座に、下位者が下座に着座します。では上位者と下位者はどうやって決めるかといえば、主に保持しているタイトルと段位。

1.タイトルにも序列があり、トップに竜王と名人が「同格」で1位(ただし棋戦としての序列は竜王戦が1位で名人戦が2位)。3位以下は叡王、王位、王座、棋王、王将、棋聖。竜王と名人のタイトルを異なる2人がそれぞれ保持している場合は、他のタイトルを保持する数が多いほうが上位。(ただしタイトル戦(番勝負)なら当該タイトルを保持している棋士が上座)

2.お互いタイトルを保持していないなら、段位の高いほうが上位。

3.1でも2でも上位下位が決まらないなら、棋士番号が小さい(つまり先にプロ入りしたほう)が上位。

という感じだったと思います。

藤井さんと大橋四段は、当時新人でまだ後輩棋士がおらず、序列は一番下となっていました。三段リーグの成績で1位だった藤井さんが棋士番号307、2位だった大橋四段が棋士番号308となっています。

ただ、我々一般の社会・会社でもそうであるように、例えば自分がお世話になった大先輩より会社での役職が上になったからといっても、場合によっては自分が下座に座ることもあるでしょう。

あるいは年齢や、その場の状況もありますし、一概に決められるものではありません。

ビジネスマナーの教育では、部長・課長・係長・平社員の4人で車に乗るときそれぞれどこに座るべきかとか、4人がけのソファでの座る位置とか、エレベーター内の位置とか、いろいろ習いますけど結局そういう知識を基本的な考え方としながらも、臨機応変にやりますね。

それと同じように、一応「棋士番号が若いほうが上座」と言われていても、藤井さんとしては「年齢が自分より10も上の大橋四段を、下座に座らせるわけにはいかぬ」ということで、上座への移動を促したのだと思います。

さて、このような上座・下座問題というのは、将棋界ではかつて大問題になってしまったこともあります。詳しくは書きませんが、そうやって問題に発展してしまう可能性のある上座・下座の慣例を、「めんどくさい。ルールでキッチリ決めとけ」と感じる人も多いかもしれません。

ところが将棋ファンの中には、本局であったような棋士同士の「上座の譲り合い」や「どっちが上座に座るか問題」を、「お楽しみ」と感じている人もいるのです。萌える要素があるのでしょうね。

棋士が対局中に食べている食事(将棋メシや勝負メシと言われていますね)がなぜかブームになったりして楽しみにしている人が多いのと同じように、このような盤外の出来事も、ファンは楽しんでるのだと思います。

10連勝、異例の公表

初めての上座での対局となった藤井さんでしたが、大橋四段を破りデビュー10連勝を飾りました。将棋界におけるデビューからの連勝記録に並びました(他には松本圭介六段、近藤正和六段がデビューから10連勝していた)。

対局は午後7時24分に終了。するとすぐに、藤井さんがデビュー10連勝したことがネットのニュースとして報道されました。しかも、その際に「10連勝の中にはNHK杯予選が3局含まれる」と異例のNHK杯予選の結果公表まであったのです。

通常は、当期のNHK杯の決勝戦や女流棋士出場者決定戦が放送された後、次期のトーナメント表の発表をもって我々は予選の結果を知るのですが、このようにネットニュースで知るのは異例のことでした。

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