藤井聡太の記憶(8)。初めての敗勢・・・からの大逆転。劣勢で辛抱できる棋風

デビューから7連勝を飾った藤井聡太さんでしたが、第8戦では初めての大ピンチが訪れます。

2017年3月10日、新人王戦での大橋貴洸四段との一戦。

劣勢を超えて敗勢になりそうでしたが、藤井さんはこれを大逆転して連勝を伸ばします。

人生にもいえることですが、人は劣勢に陥ったときどうするか? というのは大きな課題だと思います。藤井さんとしてはデビュー後初めてはっきり劣勢になったわけで、どのような指し方をするか、注目でした。

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我慢と鬼手

大橋貴洸四段は藤井さんとプロ入り同期、つまり2016年10月に藤井さんと一緒に三段リーグを抜けた棋士です。三段リーグの成績は藤井さんが1位、大橋さんが2位。したがって棋士番号は藤井さんのほうが若く307、大橋四段は308。ただし、大橋四段は藤井さんより10歳年上です。

この対局は大橋四段が先手、藤井さんが後手で、戦型は角換わり。藤井さんが仕掛けて大橋四段が反撃。中盤では大橋四段がうまくやって、藤井さんは劣勢からほとんど敗勢なるほどでした。

そこから藤井さんが常人ではできないような粘りというか我慢というか辛抱を何度も見せたのですが、やっぱり一つあげるとすれば以下の手でしょうか。△2八成銀(82手)。

先手はどこかで▲2七馬と引いて後手の飛車や金を睨みつつ成銀取りにするという強烈な狙いがありましたが、それを消したのが△2八成銀。とはいっても、せっかく成り込んだ成銀を、相手玉とは反対側に向かわせるのは普通の感覚ではないと思います。もうこの成銀、攻めには使えませんからね。

劣勢ながら決め手を与えない。そんな我慢の展開が長く続いた後で出たのが、藤井さんの以下の鬼手△8四角(118手)。相手の香車が効いているところに角を逃げる! という手です。

この手の意味としては、もし先手が角を香車でとれば、後手から△8五桂を打てるということです。

が、この手に対しても先手が正確に対処すればまだ優勢を保っていました。この少し前に先手がやや良くない手を指してしまい、少し差が縮まっていたと思います。そこに藤井さんのこの手が飛んできたので、大橋四段としては少し心の混乱に陥ったのかもしれません。このあと藤井さんが大逆転で勝利することになります。144手で後手の勝ち。

この対局で見られたのは、藤井さんが劣勢に陥ったときの指し回しでした。辛抱して、相手の狙いを消していく。よく言う「粘り」とは何か違う耐え方だったように感じました。

【管理人の所感のコーナー(不利になったら戦線拡大)】

将棋の格言に「不利になったら戦線拡大」というものがあります。局所的に窮地に陥ったときは別の箇所に目を向けて攻めに打って出て、状況を打開しようという考え方です。

これは何も将棋だけの考え方ではありませんね。仕事でも恋愛でも通用しそうな考え方です。ある職種で行き詰まったら、別の職種に視野を広げてみるとか。あの人がダメそうだったら別の人にアプローチするとか。

同じような将棋用語に「暴れる」というのもあります。これも不利になったときの考え方で、多少無茶でもいいから攻めて状況を打開しようというもの。

人間の心理もそう(ソースは私)で、不利になった後もじーっと受けてばっかりでは将来が見えなくなってくるので、どうしても攻めで状況を打開したいと思うものだと思います。

ただ実戦では、逆に自分が有利になったとき、相手に「暴れて」もらうと楽になったりもします。「おお、暴れてきたぞ、勝ちが近い」と思うわけです。たとえは悪いですが、玉砕戦みたいに見えるわけです。一時的には驚異を与えますが、負けを早める行為のような。

むしろ嫌なのは、辛抱強く耐えられることです。こちらの狙いを先回りして消されていく。決め手を放てない。じっと耐え抜く籠城戦のように。

人生もそうですが、うまくいかないことがあると、どうしてもヤケクソになってしまって自暴自棄になって暴れてしまう大人も多い(ソースは私)中で、本局の藤井さんの指し回しは見習いたいところです。

ああ、私も14歳の頃からこんな指し回しができたら。

藤井さんはこれで、デビューから公式戦8連勝となりました。

炎の七番勝負でも勝利

この対局の2日後には、AbemaTVで「炎の七番勝負」の第1局が放送され、藤井さんは増田康宏四段に勝利しました。

覚えている人は覚えていると思いますが、あの藤井さんの凌ぎの▲9七玉が出た対局です。師匠の杉本昌隆七段が藤井さんの動きを見て「すごい勝負手が出る予感がした」と言ってたやつです。(杉本七段ほんとにいい師匠です。もっと本出してほしい)

増田四段は2016年の新人王です。藤井さんがこれまで公式戦で指した相手の誰よりも、藤井さんを負かす可能性が高いと思っていました。この対局の勝利は衝撃的でした。増田四段に勝ったということは、どの棋士と対局しても勝てる可能性がある、思いました。

各地の積雪を調べる藤井さん

それと、割とどうでもいいことかもしれませんが、この頃に話題になっていたのは「炎の七番勝負」のPVですね。

PVでは藤井さんの実家でインタビューがあったのですが、藤井さんが普段の生活においてネットでアメダスを見て、各地の積雪の深さを調べているシーンがありました。なんか味わい深いものがありましたね。

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